おねしょ(夜尿症)は「甘やかしている」とか「だらしがない」とか言われ
「自然に治るから、まあいいか」と考えられてきました。
現在は、おねしょ(夜尿症)の原因が生理学的に解明され、治療法も確立されつつあります。
「夜尿外来」もあり、相談にのってくれる病院も増えてきています。
夜尿症は「自然に治る病気」と言う意味では真実ですが、いつ治るのか予想が付きにくい病気でもあります。
最近では「夜尿症は早めに治療してしまおう」という考え方に変わってきています。
夜尿アラームと夜尿症薬ミニリンメルトが治療の2大柱です。
そのひとつミニリンメルトOD錠を解説をします。
「おねしょ」 = 「夜尿症」 ではありませんが、
本記事では「おねしょ」と「夜尿症」は同義語として取り扱います。
夜尿症点鼻薬: デスモプレシンスプレー
ミニリンメルトが発売される前までは、夜尿症薬はスプレー式の点鼻薬しかありませんでした。
花粉症などで使うあの点鼻薬です。
デスモプレシンスプレーは、1日1回寝る前に1プッシュ~2プッシュして眠るという使い方をします。
デスモプレシンスプレーは、次のような理由で積極的に夜尿症には使われていませんでした。
- 点鼻薬というスタイル
- デスモプレシンスプレー発売当時(2003年)は、夜尿症を治療するという考え方が浸透していなかった
夜尿症薬ミニリンメルト
2012年にミニリンメルトというデスモプレシン錠剤(OD錠)が発売されました。
ミニリンメルトは飲み薬の夜尿症薬で、従来のデスモプレシンスプレーより投薬の勝手がいいです。
現在は、子供の夜尿症薬といえばミニリンメルトというくらい有名です。
ミニリンメルトの作用機序 (デスモプレシンとバソプレシン)
ミニリンメルトの主成分デスモプレシンは、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の代わりとして働き、尿の再吸収をうながし尿を濃縮します。
腎臓に働きかけて水分の再吸収を増やし、作られる尿量を抑制するホルモンです。
バソプレシン(抗利尿ホルモン)は日中の分泌量は少なく、夜間から朝にかけて分泌量が多くなるため、睡眠中はトイレに行かなくてすみます。
ミニリンメルトが、不足しているバソプレシンを補い、健常人のバソプレシン分泌量に近づける夜尿症薬です。
デスモプレシンの作用のおかげで睡眠中の尿量が減少し、おねしょする回数が減ります。
夜尿症薬ミニリンメルトの飲み方
ミニリンメルトは水で飲んではいけません。独特の飲み方をします。
ミニリンメルトは水で飲むと効かない
ミニリンメルトは錠剤の形をしていますが、口の中に入れると瞬間的に溶けます。
水分を含んだ指で触ると溶けてしまいます。
(ミニリンメルトの正式名はミニリンメルトOD錠)
そして、ミニリンメルトは特殊な飲み方をします。
(ミニリンメルトは口の粘膜からも吸収される)
ミニリンメルトは狭心症で使われるニトロペン舌下錠と同じ飲み方です。
ミニリンメルトは、舌下で溶かさずに水で飲み込むと効きません。
個人差はありますが、ミニリンメルトは効果発現には少し時間がかかります。
寝てすぐにおねしょしてしまうときは、寝る30分~1時間前くらいにミニリンメルトを服用した方がいいかもしれません
(ただし、食事と寝る時間が近い場合は除く)
ミニリンメルトの食後服用も効かない
ミニリンメルトは食事の影響を受けます。
出典:ミニリンメルトインタビューフォーム(一部改変)
ミニリンメルトを食後に服用した場合、空腹時に服用したときとより60~70%効果が減弱し、夜尿症に効かないと考えられます。
食事とミニリンメルトは、2時間以上あけるのが望ましいです(空腹時投与)。
食直後投与では目的とする有効性が得られない可能性があるため、食直後の投与は避けることが望ましい。
ミニリンメルトインタビューフォームより
ミニリンメルトはチャイルドロック付シート
出典:ミニリンメルトODを使用される皆様とご家族の方へ
ミニリンメルトは子供が勝手に飲まないようにチャイルドロック付きのシートです。
- 指から水気を取ります
(濡れた手で触ると、ミニリンメルトが溶けます) - 初めてのシートを使用するときは、耳の部分を切り取ります
- 1錠分切り離します
- 「あける」の部分からフィルムをめくります
- シートの下からゆっくりとミニリンメルトを押し出します
ミニリンメルトを押し出すときに、錠剤が崩れてしまった場合は、崩れた分は捨てずに全て使います。
ミニリンメルトは水中毒の副作用に注意
水中毒の副作用
水中毒とは、体内に過剰に水分が蓄積することです。
水中毒の副作用は、ミニリンメルトの用量が多かったときや、飲む前の水分量が多かったときに起こりやすいです。
(ミニリンメルトを飲み初めてから1~2週間以内が特に注意!)
水中毒とは怖い言葉ですが、医師の指示通りにミニリンメルトを服用している限り、問題ありません。
ただし、ミニリンメルトを飲み出してからは、倦怠感、頭痛、悪心、嘔吐などがひどいときは、水中毒の副作用も疑わなくてはなりません。
ミニリンメルト服用の2~3時間前(夕食後)から翌朝までの水分量は、できればコップ1杯(200ml)程度に制限します。
水を飲みすぎたときは、その日のミニリンメルトの服用は中止します。
ミニリンメルトのその他の副作用
ミニリンメルトと主成分が同じデスモプレシン点鼻薬で、腹痛、倦怠感、頭痛、喉の渇き、嘔吐、腹痛、発熱等の副作用が確認されています。
倦怠感、頭痛、悪心、嘔吐などの副作用は、水中毒の前触れの可能性もあるため、注意が必要です。
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ミニリンメルトと併用薬(飲み合わせ)
ミニリンメルトと飲み合わせの悪い薬は少数存在します。
- 三環系抗うつ薬
(トフラニール、アナフラニール、トリプタノール) - NSAIDs
(インドメタシン、ロキソニンなど) - ロペミン
これらの薬を服用すると、水中毒が現れやすくなったり、ミニリンメルトの効果発現のスピードが遅くなる場合があります。
ミニリンメルト服用の2~3時間前(夕食後)から翌朝までの水分量制限をうけるため、夕食後から寝る前にかけての薬の併用は難しいです。
特に、風邪や胃腸炎を起こしてしまったときは、水分補給が特に必要です。
そのときは、ミニリンメルトを中止せざるをえなくなります
夜尿症薬でおねしょバイバイ!
夜尿症薬メニリンメルトでおねしょ治療を始めても、最初は全然効かないかもしれません。
しかし、おねしょの回数が、毎日から、2日に1回…とだんだん減っていくのが目に見えてきたら、それは夜尿症薬が効いている証拠です。
夜尿症薬を飲む回数を2日に1回、3日に1回と減らすこともできます。
医師とご相談ください。
最終的に、夜尿症薬に頼ることなく、おねしょをしなくなったときが、おねしょにバイバイした記念すべき日です。
6カ月続いたならば、夜尿症薬でのおねしょ治療は成功と言えます。
まとめ
- おねしょ(夜尿症)は治療できる
- 国際尿禁制学会と日本夜尿症学会の推奨はミニリンメルト
- ミニリンメルトはデスモプレシンを主成分とする夜尿症薬
- デスモプレシンは不足したバソプレシンの働きを補う
- ミニリンメルトのシートはチャイルとロック式の特殊シート
- ミニリンメルトの飲み方は舌下(水で飲み込むと効かない)
- ミニリンメルトは食後に飲むと効かない
- ミニリンメルトを飲むときは、摂取水分量に注意
(水中毒の副作用) - 風邪や胃腸炎を起こしてしまったときは、水分補給が特に必要となるためミニリンメルトを中止せざるをえない
- ミニリンメルトは最初は効かない(効いた気がしない)
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