賃貸アパート・マンションに入居するとき、次のような費用を前払いします。
- 仲介手数料(家賃の1カ月分が上限)
- 礼金(0円~家賃の2カ月分が相場)
- 敷金(0円~家賃の1カ月分が相場)
- 火災保険料(1.5~2万円程度/2年)
敷金の代わりに保証金を受け取って、あらかじめ敷き引きする額(退去時に清算する金額)を決めていおく慣習が残っているエリア(関西の一部)もあります。
6万円くらいの家賃の賃貸アパート・マンションに入居費用の相場は10万円~30万円程度でしょうか。
昔と比べると入居費用はかなり下がりましたが、数十万円することには変わりありません。
さらに、退去時、賃貸アパート・マンションの使い方によっては、入居費用に匹敵するくらいの退去費用がかかるケースもあります。
- 原状回復にかかる退去者負担分
最近はとんでもない原状回復費用を請求する大家(管理会社)は減ってきましたが、それでもまだ「取れるならば取ってしまえ」という悪しき慣習が消えたとは言い切れません。
退去経験6回ありのマンションの大家が、賃貸アパート・マンション原状回復費用と特約の考え方を解説します。
賃貸アパート・マンションの原状回復とは
賃貸アパート・マンションの原状回復は、次のように定義されています。
賃借人(入居者)の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他、通常の使用を超えるような使用による損耗(そんもう)・毀損(きそん)を復旧すること
国土交通省
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
原状回復とは「賃貸アパート・マンションを借りたときの元の姿(現状)に戻すこと」と説明する大家や管理会社もいますが、
それは古い考え方で、今は一般的でありません。
原状回復費用に相場はあるのか?
礼金、敷金はエリアによって相場がありますが、ワンルーム・ファミリーの賃貸アパート・マンションには原状回復費用には相場はありません。
なぜなら、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が遵守されるようになり、
通常の使用を超えるような使用や、故意・過失、善管注意義務違反がなければ、原状回復費用は大家の負担になるからです。
賃貸アパート・マンションの大家と退去者の原状回復費用の負担の仕方を見ていきましょう。
原状回復費用負担(大家)
退去する時は、賃貸アパート・マンションの入居前と同じ状態に戻す必要があります。
そうしないと、次の入居者が決まりません。
- 壁紙の軽度な汚れ
- フローリングの軽度な傷
- 押しピン跡
- 冷蔵庫焼けなど
これらは、賃貸アパート・マンションの使用において通常起こることで、自然劣化(経年劣化)といわれています。
賃貸アパート・マンションの通常の使用で起こった軽度の傷や消耗の原状回復費用は、家賃に含まれているとされ、退去者にその原状回復費用を負担させないというのが基本的な考え方です。
原則、これらの原状回復費用は大家の負担です。
ただし、後述の特約を結ぶことで、退去者に一定の費用負担をお願いできます。
原状回復費用負担(退去者)
- 壁紙の落書き、明らかな汚れ
- フローリングの明らかな傷
- クギ跡、シール跡
- 冷蔵庫下のサビ跡など
これらは、先ほどの自然劣化の例とは反対の傷や汚れになり、通常の賃貸アパート・マンションの使用では起こりえない内容です。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でいう通常の使用を超えるような使用による損耗(そんもう)・毀損(きそん)に該当します。
これらの原状回復費用は退去者が負います。
ただ、明らかな汚れがあるからといって、壁紙交換費用の全額が退去者の負担となるわけではありません。
タバコ関係の原状回復費用
タバコを吸う方はわからないかもしれませんが、部屋に入った瞬間、タバコの臭いや壁紙などのタバコヤニから喫煙者、禁煙者はすぐにわかります。
タバコによる臭いとタバコヤニは「壁紙の落書き、明らかな汚れ」と同様の扱いです。
特に、ヘビースモーカーのタバコの臭いとヤニは、染み付いて通常のクリーニングの範囲内では取れません。
壁紙のクロスの貼替費用の一定額が退去者負担となる可能性があります。
禁煙者と比べると、喫煙者は賃貸アパート・マンションの原状回復費用の負担は重いです。
賃貸アパート・マンションの特約とは
特約とは、特別な契約を指します。
賃貸アパート・マンションの特約は、一般的な原状回復を超えた一定の費用負担の義務であることが多いです。
特約が認められる範囲
特約に記載があれば、すべてが有効となるとは限りません。
「汚損の理由や程度を問わず、壁紙、フローリング、その他の設備の交換費用(原状回復費用)は入居者負担とする」
このような記載があれば、怖くて契約できませんよね。
このような暴利的な特約は無効です。
特約は必要性と客観的で合理的理由があり、入居者が了承しない場合は契約が成立しないからです。
最近では、クリーニングの記載がほとんどです。鍵交換も増えてきました。
クリーニングの相場
その費用として入居者は2万5000円を負担する
クリーニング特約がある場合、このような記載が契約書にあります。
クリーニングの相場は2万円~2.5万円程度(ワンルームタイプ)で、家賃の半額以下が妥当と考えられています。
実際、クリーニング業者に2万円~2.5万円も支払えば、部屋全体の通常の汚れは落ちます。
鍵交換の相場
鍵交換の費用として、入居者は、1万2000円(消費税別)を負担する。
鍵交換特約がある場合、このような記載があれば契約書にあります。
鍵の交換費用の実費は1万円以下ですが、鍵交換の相場は1万円~1.5万円程度です。
差額は、大家のふところに入っているわけではありません。善良な入居者に入居していただくための募集費用になります。
鍵が交換されていない?
嫌ですよね?
まとめ
- 原状回復費用に相場はない。使い方が全て
- 退去時、賃貸アパート・マンションの使い方によっては、入居時の費用に匹敵するくらいの退去費用がかかるケースがある
- そのケースとは、賃貸アパート・マンションの通常の使用を超える使用
- その例は、壁紙の明らかな汚れ、フローリングの明らかな傷、タバコ跡など
- 賃貸アパート・マンションの通常の使用で起こった軽度の傷や消耗の原状回復費用は、家賃に含まれている。
退去者にその原状回復費用を負担させないのが基本的な考え方 - 特約とは、一般的な原状回復を超えた一定の負担費用を入居者にお願いする事項
- ただし、暴利的な特約は無効
- クリーニング・鍵交換特約にかかる相場はある
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