腰痛・肩こりは労災認定できる?労災保険の認定基準と事例 

労災保険
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業務災害とは、業務が原因で起こったケガ、病気、死のことをいいます。

仕事にしている状態であれば、すべてそれが業務災害と認められるわけではなく、業務遂行性(ぎょうむすいこうせい)と業務起因性(ぎょうむきいんせい)があるとき、業務災害として認められます。

業務遂行性と業務起因性があるときとは、一体どのような状況のことなのでしょうか。

労災保険の業務遂行性とは

労災保険で言う業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいて、事業主の支配下にある状態のことをいいます。

業務遂行性があるがどうかを判断する3つのパターン

  1. 事業主の支配、管理下で業務に従事している場合
    (通常業務、仕事の準備中、仕事の後始末中、仕事の待機中)
  2. 事業主の支配、管理下にあるが、業務に従事していない場合
    (休憩中、トイレ中)
  3. 事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
    (出張中)

労災保険の業務起因性とは

労災保険で言う業務起因性とは、業務が原因となって、労働者にケガ、病気、死が生じたことをいいます。

労災保険で言う業務とは

本来行っている仕事のみが業務ではなく、以下の行為も業務として認められています。

  1. 本来の業務に付随する行為(仕事の準備、仕事の後始末)
  2. 本来の業務から予想される緊急行為
  3. 生理的行為、反射的行為

業務起因性を否定する行為

業務遂行性があれば、業務起因性があるものです。業務起因性を否定する行為(業務が原因ではない)を例示します。

  • 離脱行為
    「業務中にジュース、タバコを買いに外出する」
  • 私的、恣意的(しいてき)行為
    「出張中に過度に飲み歩く、泥酔する」
  • 自然現象
    地震、台風などの天災地変(ただし、天災地変の被害を受けやすい業務の事情があるときは、例外とされる)

事例を見た方が理解しやすいため、よくある事例をみていきましょう。

労災保険の事例5選

事例1 業務中にトイレに行こうとして転びケガをした

「労災として認められる」

  • トイレに行く
  • 茶を飲む

という行為は「生理的行為」になります。

最低限の生理的行為は、業務を離れた私的行為中の災害であっても労災として認められることがあります

喫煙行為も、就業規則等で勤務中の喫煙を禁止している等の理由がない場合は、生理的行為の一部と考えられているようです。

個人的には全ての人がタバコを吸うわけではないため、喫煙行為はグレーゾーンのように思います。

喫煙をする人の中には、タバコを吸いに頻繁に休憩を取る人がいますが、あれは仕事中といえるのでしょうか?

事例2 営業担当者が取引先の手伝い中に転びケガをした

「労災として認められる」

営業担当者が、取引先の仕事の手伝う行為は、本来であれば通常の業務ではありません。

しかし、この行為がなければ、本来の業務の遂行に影響が出る可能性があります。このような場合は、「本来の業務に付随する行為」として認められます

 

(事例2-2)
営業担当者が、全くの他方の手伝いをした場合はどうなるのでしょうか?

「労災として認められない」

親切が否定されるようですが、営業担当者と他人との間に業務関係が認められません。業務の遂行に影響が出るとは考えられないからです。

 

(事例2-3)
営業担当者が、運転中にたまたま交通事故に遭遇し、その救助中に後方車両に追突されば場合はどうでしょうか?

「労災として認められる」

営業担当者が運転中に事故に遭遇することは、当然予見されることですので、「本来の業務から予想される緊急行為」に当たるためです。

事例3 会社で開かれた懇親会の帰りに事故にあい、ケガをした

労災として認められるかは「状況による」

懇親会という行事は、一般的によく行われていることだと思います。

業務として認められそうですが、条件により労災として認められたり、認められなかったりします。下記は絶対条件ではありませんが、「業務遂行性」「業務起因性」の判断材料となると思います。

  1. 懇親会は、強制参加(業務命令)であるのかどうか(事業主の支配下にあるか)
  2. 懇親会会費は、会社の負担で有るのかどうか(事業主の支配下にかるか)
  3. 懇親会の席で、業務と関係のある話(打ち合わせ等)があるのか(業務性があるか)

事例4 業務中、従業員同士で喧嘩が発生し、一方がケガをした

労災として認められるかは「状況による」

原則として、他人からの暴行を受けた場合は、それが業務中であっても業務と暴行の因果関係を考えなくてはなりません。

今回の場合、従業員同士が同僚であれば、お互いを指導監督する立場でないため、故意によるものと考えられます。つまり「労災として認められないでしょう」

指導監督をする立場にある上司が、部下を指導したことによる逆上暴行が原因で、一方的に暴行されたのであれば、その指導行為には「業務遂行性」と「業務起因性」が認められますので、「労災として認められる」ことでしょう。

ただし、なぐり合いの喧嘩に発展すれば、喧嘩は私的な恨みと解釈されるため、労災として認められるかどうかはわからなくなります。

事例5 出張中、会社指定のホテルの食事が原因で腹をこわした

「労災として認められる」

出張は事業主の命令で行われるものですので、「本来の業務に付随する行為」となります

今回は、会社指定のホテルでの被災ですので、業務災害となりますが、出張中のすべての行為が業務災害となるわけではありません。

次のような行為はは私的行為であり、この間に発生した事故は、「業務遂行性」がないため、業務災害にはなりません。

  • 指定外のホテルに無断宿泊
  • たまたま実家の近くだったので無断宿泊
  • 仕事後、近くのバーで飲食
  • 仕事後の観光等

腰痛は労災認定できるか

次のような業務を行っている労働者は、腰痛を発症しやすいです。

  • 重いものを持つことが多い
  • かがむことが多い
  • 長時間のドライビング

しかし、労災の適応条件を考えれば、腰痛の認定を受けるのは、なかなか難しいと思います腰痛と業務との因果関係の証明が難しいからです。

なぜなら、腰痛はそのような業務を行う者以外(私も肩こり、腰痛持ち)でも、通常の仕事をしていれば発症します。

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労働災害では腰痛にも、2つの腰痛があり、それぞれに認定要件が設けられています。

  1. 重いものを持って立ちあがったため、筋肉等の組織を痛めたなど、突発的なできごとが原因で起こる災害性腰痛
  2. 腰部に負荷かかる業務に短期間、もしくは長期的に従事した結果起こる非災害性腰痛

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まとめ

労災の認定は、場合によっては複雑なため、一般人が行うには難しいところです。

今回紹介したパターンは、通常働いていれば起こりえることばかりですので、頭の片隅に置いておけば、似たパターンが発生した時の初期対応に役立つと思います。

一般的な肩こり、腰痛で労災が認められるようであれば、日本は労災天国になってしまいます。

肩こりと腰痛は、仕事との因果関係を証明することが難しく、通常の仕事内容であれば、労災認定は取れない。というのが現状です。

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