「貧血」と聞くと大人の女性特有の病気の印象があるかもしれません。
しかしながら、赤ちゃん~子供(新生児~幼児)も同じくらい、もしくはそれ以上貧血体質であり、貧血には注意しなくてはなりません。
なぜなら、生後の環境の変化や急な発達のため多く鉄分が必要で、鉄欠乏性貧血を起こすことが多いからです。
そして、子供の鉄欠乏性貧血が3カ月以上続くと、精神的発達、運動発達、自律神経の発達が遅れることが分かっています。
このような貧血症状を改善する鉄剤がインクレミンシロップです。
鉄欠乏性貧血薬インクレミンシロップ
貧血とは、血液中の赤血球の数やヘモグロビン量が少ないが続き、酸素が不足した状態をいいます。
赤血球に含まれるヘモグロビンは、肺で酸素を取り込んで全身へ送っています。
ヘモグロビンを作るのに必要な栄養素には鉄、ビタミンB12、葉酸などがあります。これらの栄養素が不足するとヘモグロビンが作れなくなるため貧血を起こします。
- ビタミン12不足→悪性貧血
- 葉酸不足→葉酸欠乏性貧血
『フォリアミンは妊婦の葉酸サプリの代わりになる?いつからいつまで?』
そして、鉄不足によって起こる貧血が鉄欠乏性貧血で、赤ちゃんから子供によく使われる鉄欠乏性貧血薬がインクレミンシロップです。
鉄イオンは2価と3価がありますが吸収されやすいのは2価の鉄イオンですので、吸収効率で考えればインクレミンシロップは効率が悪いです。
- 2価の鉄イオン(Fe2+)
フェロミア、フェログラデュメット - 3価の鉄イオン(Fe3+)
インクレミンシロップ
しかし、赤ちゃんや子供が飲みやすいシロップ製剤はインクレミンシロップしかありません。
血清鉄と貯蔵鉄
鉄分の一時的な鉄不足を補うために、血中に余った鉄分は肝臓などに貯蔵鉄として一定量ストックされています。
鉄分が不足してくると、貯蔵鉄が減っていき貧血ではない鉄欠乏状態となります。
貯蔵鉄を使い果たして、さらに血中の鉄分(血清鉄)が減ると、少しずつ鉄欠乏性貧血の症状が表れます。
インクレミンシロップの効果
インクレミンシロップはヘモグロビン量と貯蔵鉄量を増やして、鉄欠乏性貧血状態を改善します。
臨床試験によると、インクレミンシロップの鉄欠乏性貧血に対する有効率(効果)は77.9%で、年齢別効果は次の通りです。
- 1歳未満:74.4%
- 1~5歳:82.4%
- 6~15歳:81.3%
ただし、この効果はインクレミンシロップがしっかり飲めていたことを前提にしています。
というのも、インクレミンシロップはにおいと味が特徴的で、飲むのに苦戦する子供もいるからです。
『まるで鉄の味?インクレミンシロップの飲み方飲ませ方はこう!』
赤ちゃん(新生児~乳児)の貧血
新生児から乳児までは体が急成長(体重約3kg→10kg)します。この時期は鉄分の需要が多く貧血を起こしやすい時期です。
乳児:生後1年までの赤ちゃん
乳児の鉄欠乏製貧血
妊娠後期は(胎盤を介して)お母さんから赤ちゃんへ鉄分の移行が盛んになり、赤ちゃんは約6カ月分の貯蔵鉄を蓄えて生まれてくるといわれています。
しかし、生後の環境の変化や急発達のため多くの貯蔵鉄を使い、1年以内に貧血を起こすことが意外と多いです。
新生児の鉄欠乏性貧血
お母さんから赤ちゃんへの鉄分移行が十分でなかった場合、例えば早産児・低出生体重児はどうでしょう?
生まれてまもなく鉄分が不足して、生後4週~8週で鉄欠乏性貧血を起こす頻度が高まります。
低出生体重児:2500g以下で生まれた赤ちゃん
子供(幼児)の鉄欠乏性貧血
幼児期(1歳~小学校入学まで)になると、食事から十分な鉄分を摂れるようになります。
しかし、次のような条件が重なると鉄欠乏性貧血になる場合があります。
- 離乳が進まない
- 食べ物の量が少ない
- 好き嫌いがある(偏食)
- 食材の鉄分量が少ない
- 激しい運動を行っている(鉄需要が高まる)
赤ちゃんと子供の鉄欠乏性貧血の何が怖いか
- ヘモグロビンの合成に鉄分が必要である。
- ヘモグロビンは全身に酸素を送っている。
- 鉄欠乏性貧血は、鉄分不足が原因で全身に酸素が十分にいきわたらない状態である。
このことは先に解説したとおりです。
子供の鉄欠乏性貧血が3カ月以上続くと、精神的発達、運動発達、自律神経の発達が遅れることが分かっています。
そして、これらの発達が遅れに気付いて鉄剤を飲んで貧血症状を改善しても、乳幼児期に必要だった発達は取り戻せないといわれています。(←不明な点も多い)
では、赤ちゃんや子供が貧血になると、どのようなサインがあるのでしょうか?
赤ちゃん~子供(幼児)の貧血症状
- まぶたが薄い(白っぽい)
- 唇の赤みが薄い
- 顔色が青白い(悪い)
- 爪がスプーンのように反っている
- 疲れやすい
赤ちゃん~子供の貧血症状はいろいろありますが、この時期の貧血は親でも気が付かないものです。ほとんどが乳幼児健診で指摘されます。
これにプラスしてほとんどの市町村では3~4カ月児健診が実施されています。
9~10カ月児健診、6~7カ月児健診を行う市町村もあります。
「赤ちゃんと子供の貧血状態の危険さ」は分かったと思います。インクレミンシロップはいつまで飲み続ける必要があるのでしょうか。
インクレミンシロップはいつまで飲む?(治療期間)
インクレミンシロップは一度飲み始めると長期服用することが多いです。
なぜなら、血清鉄の正常化はもちろん、鉄分のストックである貯蔵鉄も正常化する必要があるからです。
- 血清鉄正常化の目安:1~2カ月
- 貯蔵鉄正常化の目安:約6カ月
貯蔵鉄も満タンにしておかないと、鉄欠乏性貧血は再発します。
ですので、吐き気、便秘、下痢などの副作用が出ない限りは、自己判断で止めないようにしましょう。
『インクレミンシロップで便と歯が真っ黒!副作用じゃないから止めないで』
まとめ
- 貧血とは、血液中の赤血球の数やヘモグロビン量が少ないが続き、酸素が不足した状態をいう
- 鉄不足によって起こる貧血が鉄欠乏性貧血
- インクレミンシロップは赤ちゃんから子供(まれに大人)まで幅広く使われている鉄欠乏性貧血薬
- インクレミンシロップは一度飲み始めると長期服用することが多い
- インクレミンシロップを飲み始めてから貯蔵鉄が回復するまでの期間の目安は約6カ月
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