日本皮膚科学会がニキビ治療に推奨する抗生物質は次の3種類です。
- ミノマイシン(ミノサイクリン)
- ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
- ルリッド(ロキシスロマイシン)
そして、2016年ニキビのガイドラインが更新され、ファロムという抗生物質がBランク(推奨する)になり、推奨薬は4種類になりました。
今回解説するファロムは抗生物質の新薬ではありません。ニキビに効果があることは知られ、皮膚科を中心にニキビ治療に使われてきた抗生物質です。
ニキビに抗生物質を使う理由
赤ニキビと黄ニキビの治療は、ダラシンT、アクアチム、ゼビアックスなどの抗生物質の塗り薬が有名ですが、抗生物質の飲み薬も使うときもあります。
赤ニキビと黄ニキビの治療が遅れるとニキビ痕が残ることがあるため、素早く炎症や化膿を取り除く必要があるからです。
『ヒルドイドはニキビやニキビ痕に効く!? それは本当なの?』
ニキビは放置すると、白ニキビ→黒ニキビ→赤ニキビ(丘疹:きゅうしん)→黄ニキビ(膿疱:のうほう)の順番に悪化していきます。
画像:大塚製薬HP
白ニキビと黒ニキビは、炎症や化膿をのない面皰(めんぽう)と呼ばれ、皮脂が詰まっている状態です。
一方、赤ニキビと黄ニキビは、炎症や化膿のある炎症性皮疹(えんしょうせいひしん)と呼ばれています。
ファロムは知名度が低いニキビ薬?
左:ファロム150mg
右:ファロム200mg
ファロムは日本で開発された世界初のペネム系抗生物質で、主成分はファロペネムです。
クラビットやフロモックスは聞き覚えがあっても、ファロムはあまり聞いたことがないかもしれませんね。
しかし、ファロムは1997年に発売された歴史のある抗生物質です。
ファロムのニキビへの効果
皮膚科では、ファロムは殺菌的作用も持つニキビによく効く抗生物質として知られています。
臨床試験によると、ファロムのニキビへの効果は95.5%です。
抗生物質ミノマイシン、ビブラマイシンにはニキビの直接的な保険適応がありませんが、ファロムはニキビの保険適応があります。
『ミノマイシンとビブラマイシン 皮膚科ニキビ薬No.1はどっち?』
ファロムはニキビに強い効果
抗生物質には殺菌的作用を持つモノと、静菌的作用を持つモノの2種類があります。
それぞれの抗生物質をイメージするとこうです。
- 殺菌的作用→オフェンス型抗生物質
直接細菌を殺菌する作用がある - 静菌的作用→ディフェンス型抗生物質
細菌の増殖を抑える作用があり、菌が死滅するのを待つ
ファロムは静菌的作用のみのミノマイシン、ビブラマイシン、ルリッドより比較的短期間でニキビの原因菌であるアクネ菌や黄色ブドウ球菌などに効果が期待できます。
殺菌的抗生物質 | |||
---|---|---|---|
ペニシリン系 | セフェム系 | ペネム系 | ニューキノロン系 |
ワイドシリン | フロモックス | ファロム | クラビット |
サワシリン | メイアクト | – | オゼックス |
静菌的抗生物質 | |
---|---|
テトラサイクリン系 | マクロライド系 |
ミノマイシン | ルリッド |
ビブラマイシン | クラリス |
ファロムの飲み方
ファロムは1回150㎎~200㎎を1日3回(毎食後)飲むのが標準です。
ファロムは短期間飲むだけでニキビに強い効果が期待できるため、長期服用することはほとんどなく、1回の処方の服用期間の多くは1週間以内です。
(ただし、ニキビの赤みが完全に取れるわけではないので、期待しすぎないこと)
『ニキビがピタっと治まる アクアチムクリーム/ローションの塗り方・使い方』
ファロムは下痢の副作用に注意
ファロムの主な副作用は下痢や軟便という胃腸系の副作用がほとんどです。
(臨床試験での副作用発現率は全体で5.8%)
副作用 | 頻度 |
---|---|
下痢 | 2.5% |
腹痛 | 0.9% |
軟便 | 0.7% |
発疹 | 0.6% |
ファロムで下痢などの副作用が出る場合は、ビオフェルミンR、ラックビーRなどの整腸剤を併用すれば、下痢の副作用の発現率を下げることができます。
『ラックビーとビオフェルミンの違い 併用したら効果はどうなる?』
ファロムはミノマイシンやビブラマイシンのように、歯の色素沈着などの重大な副作用がなく、ニキビに使いやすいのもポイントです。
『ミノマイシンはめまいと歯の副作用に注意 本当はニキビに使いにくい』
まとめ
- ファロムは皮膚科を中心にニキビに効果があることは知られていた
- 2016年版の皮膚科学会のガイドラインではBランクに推奨されている
- ニキビ治療は塗り薬がメインであるが、化膿や炎症を素早く取るため抗生物質の飲み薬も使うこともある
- ファロムは短期間飲むだけでニキビに強い効果が期待できる
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