インフルエンザ予防の基本はワクチンによる予防接種です。
インフルエンザ薬であるタミフルとイナビルは、ワクチンによるインフルエンザ予防に変わるわけではありませんが、緊急的、一時的にインフルエンザ予防薬として使われることがあり、予防投与の効果も認められています。
インフルエンザ予防薬タミフルとイナビルを予防投与したときの効果、タミフルの飲み方、イナビルの使い方を中心に解説します。
※テーマがインフルエンザ予防薬のため、タミフル、イナビルをインフルエンザ予防薬と記載しますが、本来タミフル、イナビルはインフルエンザの治療を目的とした薬です。
インフルエンザ予防薬タミフルとイナビルの予防投与は自費
インフルエンザ予防薬タミフルとイナビルの予防投与は、健康保険を使うことができません。
タミフルとイナビルのインフルエンザ予防投与は、原則としてインフルエンザウイルスを発症している患者の同居家族、または共同生活者である次のような方が対象です。
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
- 代謝性疾患患者(糖尿病等)
- 腎機能障害患者
しかし、タミフルとイナビルのインフルエンザ予防投与は自費ですので、希望すれば上記の方に限定せず、タミフルとイナビルを予防投与してくれる医療機関もあるようです。
インフルエンザ予防薬タミフルの予防投与
タミフルの飲み方、使い方
インフルエンザ治療投与
37.5kg以上の子供、大人のタミフルの標準的な飲み方は、1回1カプセルを1日2回、5日間服用です。
インフルエンザ予防投与
37.5kg以上の子供のタミフルの標準的な飲み方は、1回1カプセルを1日1回、10日間服用です。
大人のタミフルの標準的な飲み方は、1回1カプセルを1日1回、7日間~10日間服用です。
ただ、実際大人にタミフルを予防投与で使う場合は、10日間が多いです。
タミフルの治療投与と予防投与(まとめ)
– | 治療投与 | 予防投与 | |
---|---|---|---|
対象 | 37.5kg以上の子供、大人 | 37.5kg以上の子供 | 大人 |
用法用量 | 1回1カプセル、1日2回 | 1回1カプセル、1日1回 | |
投与期間 | 5日間 | 10日間 | 7~10日間 |
タミフル予防投与は、インフルエンザ接触後2日(48時間)以内
タミフルは、インフルエンザ患者に接触後2日(48時間)以内に服用を開始する必要があります。
タミフルには、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果がありますが、直接殺ウイルスする効果はありません。
インフルエンザウイルスは短時間に莫大な数に増殖した場合、タミフルの効果は期待できないからです。
(インフルエンザ患者接触2日(48時間)経過後に、タミフルを開始した場合の効果のデータはありません)
タフルのインフルエンザ予防期間
タミフルのインフルエンザに対する予防期間は、タミフルを連続して服用している期間持続します。最大10日間です。
タミフル予防投与のインフルエンザへの効果
日本とアメリカで、タミフルの予防投与の効果についての試験が行われています。
(対象大人)
タミフルとプラセボを、1日1回42日間連続※で服用した結果は次のとおりです。
(※日本でのタミフル予防投与の連続服用期間は、最大10日間です)
インフルエンザ発症割合
– | タミフル服用 | プラセボ服用 |
---|---|---|
日本 | 1.3% | 8.5% |
アメリカ | 1.2% | 4.8% |
タミフル予防投与の効果
(効果=プラセボ / タミフル)
インフルエンザの患者に接触してから、2日(48時間)以内にタミフルの予防投与ができれば、インフルエンザの発症率を抑える効果が証明されています。
『インフルエンザ薬タミフル、リレンザ、イナビルの違いと耐性ウイルス』
インフルエンザ予防薬イナビルの予防投与
イナビルの使い方(吸入方法)
イナビルをインフルエンザの予防に使う場合、10歳以上の子供と大人は、イナビル1本を1日1回、2日間単回吸入します。
さらに、2016年-2017年シーズンから、イナビル2本を1日1回、1日間単回吸入する予防投与法も選択できるようになりました。
(イナビルの治療投与と同じ)
おそらく、これからは後者の予防投与法にシフトしていくでしょう。
また、2015年-2016年シーズンまで、10歳未満の子供はイナビル予防投与できませんでしたが、2016年-2017年シーズンから、10歳未満の子供もイナビル予防投与ができるようになりました。
イナビル1本を1日1回、1日間単回吸入します。
単回吸入:容器内の薬を吸いきる
出典:第一三共HP
【イナビルの治療投与と予防投与】
– | 治療投与/予防投与 | 予防投与 | |
---|---|---|---|
対象 | 10歳以上の子供 大人 |
10歳未満の子供 | 10歳以上の子供 大人 |
用法用量 | 1回2本 | 1回1本 | 1回1本 |
投与期間 | 1日間 | 1日間 | 2日間 |
イナビルの予防投与は、インフルエンザ接触後2日(48時間)以内
イナビルもタミフルと同様に、インフルエンザの患者に接触後2日(48時間)以内に投与を開始する必要があります。
イナビルもインフルエンザウイルスが増殖するのを抑制する効果がありますが、直接殺ウイルスする効果はありません。
インフルエンザウイルスは短時間に莫大な数に増殖した場合、イナビルの効果は期待できないのです。
(接触後2日(48時間)経過後に、イナビルを開始した場合の効果のデータはありません)
イナビルのインフルエンザ予防期間
インフルエンザに対する予防期間は、イナビルの吸入を始めてから10日間です。
イナビル予防投与のインフルエンザへの効果
インフルエンザ予防効果
(10歳以上)
吸入薬品 | インフルエンザ発症割合 |
---|---|
イナビル | 3.9% |
プラセボ | 16.9% |
イナビル予防投与の効果:4.3倍
イナビル予防投与の効果
=プラセボ / イナビル
インフルエンザの型別予防効果(10歳以上)
インフルエンザの型 | イナビル吸入 | プラセボ吸入 | イナビル予防投与の効果 |
---|---|---|---|
A型インフルエンザ (A/H3N2) |
3.6% | 17.3% | 4.8倍 |
B型インフルエンザ | 7.0% | 14.0% | 2.0倍 |
インフルエンザの患者に接触してから、2日(48時間)以内にイナビルを予防投与できれば、インフルエンザの発症率を抑える効果が証明されています。
『【妊婦のインフルエンザ】タミフル、イナビル、リレンザは赤ちゃんに大丈夫?』
まとめ
- インフルエンザ予防の基本は、ワクチンによる予防接種
- しかし、タミフルとイナビルは、緊急的、一時的に予防薬として使用されることがある
- タミフルとイナビルのインフルエンザ予防投与は自費(健康保険が使えない)
- タミフルとイナビルを使うタイミングは、インフルエンザ患者に接触後2日(48時間)以内
- タミフルのインフルエンザ予防期間は、タミフルを飲んでいる期間(最大10日間)
- イナビルのインフルエンザ予防期間は、吸入を始めてから10日間
- タミフルとイナビルの予防効果の優越は不明(おそらく同等)
タミフルとイナビルの予防投与の効果のデータの出典元は、添付文書、もしくはインタビューフォームです。
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