薬代は薬局ごとに少し違います。
なぜなら、薬局の薬代には、薬そのものの値段以外にも、指導料や管理料などが加算されるからです。
ただし、薬剤料と特定保険医療材料料は、どこの薬局で計算しても同じです。なぜなら、国が薬価と材料価格を決定しているからです。
今回は、薬そのものもの値段である薬剤料・特定保険医療材料料の計算方法について解説します。
薬価とは
1錠(1本、1ml、1g、1キット、1瓶)あたりの薬の値段を、薬価(単位は円)といいます。
ただし、目薬は薬価は2パターンあるので注意が必要です。
- 1mL単位に薬価が付く場合
- 1本単位に薬価が付く場合
薬価は薬局が独自につけた値段ではありませんので計算できませんが、薬価サーチなどのウェブサイトで簡単に調べられます。
薬価は西暦の偶数年の4月1日に国(中央医療保険協議会:通称、中医協)が決めていて、最近では2018年に薬価改定が行われました。
新薬価に切り替わる度に薬価は下がるため、処方箋薬を扱う医療機関では、薬価改定の月は経営的に厳しくなります。
薬価について詳しく知りたい方は、厚生労働省作成の「薬価算定の基準について」を参照して下さい。
単位薬剤料とは
薬剤料は単位薬剤料を基本にして計算します。
単位薬剤料とは
- 内服薬
[薬価×1日分]で計算した点数の小数点以下を五捨五超入した点数のこと - 頓服薬・外用薬・注射薬・内服用液剤
[薬価×処方全量]で計算した点数の小数点以下を五捨五超入した点数のこと
健康保険の共通の単位です。1点=10円。
五捨五超入(ごしゃごちょうにゅう)とは
5を少しでも超えたら繰り上げる。
[小数点以下を五捨五超入する例]
16.51→17 16.50→16
- 五捨五超入?
- 薬剤料??
- 単位薬剤料???
ちょっとわかりにくいかもしれませんね。
計算してみると意外と簡単ですので、さっそく計算してみましょう。
薬剤料の計算方法1 内服薬、頓服薬
内服薬の処方箋の読み方
朝夕食後 14日分
アレグラ錠60mgを1日2錠、14日間、朝夕食後に服用すると解釈します。
調剤する薬の量=2錠×14日分=28錠
薬剤名の次の○錠は、1日に服用する薬の数(量)です。
『アレグラ(フェキソフェナジン)は眠気なしだから花粉症には効果がない?』
頓服薬の処方箋の読み方
吐き気時 10回分
ナウゼリン錠10mgを吐き気があるときに1回2錠服用する。
それを10回分調剤すると解釈します。
2錠×10回分 =20錠
20錠調剤します。
『吐き気止め薬ナウゼリン錠・OD錠(ドンペリドン)の効能効果、副作用、市販』
内服薬、頓服薬の薬剤料の計算方法の例題
処方例
アレグラ錠60mg 2錠
朝夕食後 14日分
ロキソニン錠60mg 3錠
毎食後 14日分
ムコスタ錠100mg 3錠
毎食後 14日分
ナウゼリン錠10mg 2錠
吐き気時 10回分
単位薬剤料を計算するときは、内服薬は用法別にわけて考えます。
[処方1]
=薬価64.90円×2錠
=129.8円
=12.98点
12.98点の小数点以下を五捨五超入して13点
この13点が単位薬剤料です。
[処方2]
=薬価15.90円×3錠
=47.7円
=4.77点
=薬価14.60円×3錠
=43.8円
=4.38点
各1日分薬価を足して、
4.77点+4.38点=9.15点
→五捨五超入後の9点が単位薬剤料です。
[処方3]は頓服薬です。
頓服薬は1回分薬価ではなく、全回分薬価が単位薬剤料です。
(今回であれば20回分)
つまり、最終的には単位薬剤料=薬剤料となります。
=薬価15.10円×2錠×10回分
=302円
=30.2点
単位薬剤料は30点
[薬剤料の計算]
内服薬の単位薬剤料に調剤日数をかけて加えます。
=338点
これが処方全体の薬剤料です。
関連記事
『薬局は受付時間で薬代が違う!夜間、休日、時間外加算 向精神薬、麻薬加算とは?』
薬剤料の計算方法2 外用薬・注射薬・内服用液剤
外用薬の処方箋の読み方
傷部へ1日2回塗布
テラ・コートリル軟膏を傷部へ1日2回塗布する。
調剤する量は5g。
注射薬の処方箋の読み方
就寝前16単位、自己注射
ランタス注ソロスターを寝る前16単位、自己注射する。
調剤する量は1キット(1本)。
外用薬・注射薬・内服用液剤の薬剤料の計算方法の例題
処方例
テラ・コートリル軟膏 5g
傷へ1日2回塗布
マイザー軟膏 5g
かゆいところへ1日3回塗布
ランタス注ソロスター2キット
寝る前16単位自己注射
ラキソベロン内用液
10ml 寝る前に10滴
『ラキソベロン(ピコスルファート)の効果時間と副作用(下痢・腹痛)』
それぞれの単位薬剤料を計算します。
[テラ・コートリル軟膏]
薬価32.4円×5g=162円
=16.2点
↓五捨五超入
=16点
[マイザー軟膏]
薬価20.8円×5g=104円
=10.4点
↓五捨五超入
=10点
[ランタス注ソロスター]
薬価2,069円×2キット=4,138円
=413.8点
↓五捨五超入
=414点
[ラキソベロン内用液]
薬価24.2円×10ml=242円=24.2点
↓五捨五超入
=24点
それぞれの単位薬剤料をすべて足します。
これが処方全体の薬剤料です。
薬剤料はパソコンで自動計算をするため、計算ミスは入力ミスを除いてありません。
関連記事
『【調剤報酬(薬代)】一包化加算、内服薬、外用薬の調剤料の計算』
特定保険医療材料料の計算方法
特定保険医療材料とは「特定保険医療材料」の料金のことです。
多くの薬局が扱う特定保険医療材料は、インスリン用の万年筆型注射用注射針です。
『妊娠糖尿病の治療と入院 インスリン注射は怖がらないでいいよ!』
注射針は製品の品質(針の太さ)によって価格(薬価)が若干違います。
品質 | 材料価格 (薬価) |
製品例 |
---|---|---|
標準型 | 15円 | BDマイクロファインプラス31G 8mm |
針折れ防止型 | 17円 | BDマイクロファインプラス32G 4mm |
超微細型 | 18円 | ナノパスニードルⅡ34G 4mm |
○○Gの値が大きいほど注射針が細くなり、痛みが軽減します
○○mmの値がが大きいほど注射針が長くなります
薬局ではあまり扱うことがなくなりました。私も10年以上取り扱っていません。
注射器の名前 | 材料価格 (薬価) |
---|---|
インスリン製剤等注射用ディスポーザブル注射器 | 17円 |
ヒト成長ホルモン剤注射用ディスポーザブル注射器 | 10円 |
ホルモン製剤等インスリン製剤等注射用ディスポーザブル注射器 | 11円 |
薬代の計算根拠は、調剤明細書で確認できます。
『調剤報酬明細書の見方 夜間、休日、時間外加算で薬代はどう変わる?』
まとめ
- 薬剤料と特定保険医療材料は、どこの薬局で計算しても同じ
- 薬剤料は、薬価と単位薬剤料を用いて計算する
- 薬剤料はパソコンで自動計算するため、計算ミスは入力ミスを除いてない
- 薬剤料を計算するときは、単位薬剤料を基本として計算する
- 単位薬剤料は、内服・頓服・外用等によって計算の仕方が少し違う
- 特定保険医療材料はインスリン注射針が多い
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