積立NISAは金融庁が本気で作った初心者におすすめの投資制度です。
積立NISAを簡単に解説すると、投資信託・ETFが手数料格安で、年間40万円×20年間非課税で運用できる制度です。
しかし、すべての投資信託・ETFが積立NISAの制度を使えるわけではありません。
積立NISA対象商品となるには、金融庁の厳しい要件をクリアした投資信託・ETFである必要があるからです。
金融庁の要件を見ていくと、個人も投資に目覚めてほしい。成功してほしい。という思いがひしひしと伝わってきます。
積立NISAの対象商品の要件
金融庁の調べによると、公募タイプの投資信託は5942本発売されています(2017年)。
しかし、多くの投資信託の信託期間(運用が行われる期間)は10年以内であり、長期積立投資には向きません。
当然、このような投資信託は積立NISA対象商品ではありません。
積立NISAの対象商品の要件
- 販売手数料なし(ノーロード)
- 信託報酬は一定水準以下
- 分配金が毎月分配されないこと
- 信託期間が無期限または20年以上
- 他
積立NISAにこのような要件が付いている理由を解説します。
積立NISA対象商品の要件1 販売手数料なし(ノーロード)
販売手数料とは、金融機関が投資信託を売ったとき(投資家が投資信託を購入したとき)に発生する手数料です。
基準価格に販売手数料(年率)を掛けた金額を金融機関に支払います。
投資信託の値段のこと。
ほとんどの投資信託の基準価額は1万円(10000口)からスタートします。
基準価格が高い→良い投資信託
基準価格が安い→悪い投資信託ではありません。
金融庁の調べによると、投資信託販売手数料の平均は3.2%(純資産額上位5商品)です。
金融庁の資料を参考に作成
積立NISAが「販売手数料なし」のみ対象商品にしている理由は、販売手数料が高いと儲けを出すのが難しくなるからです。
100万円で買える投資信託
- 販売手数料なし:100万円
- 販売手数料3.2%:96.8万円
→3.2%分のマイナスから投資がスタート
積立NISA対象商品の要件2 信託報酬は一定水準以下
信託報酬とは運用手数料のことです。
投資信託を持ち続ける限り、永久に発生し続けます。
信託報酬は見えない形で毎日徴収されています。
基準価格から信託報酬分を差し引くという形です。
簡単に解説すると次の通りです。
1年間で2%の運用益が出た投資信託(信託報酬1.5%)があるとします。
年始の基準価格が10000円であれば、2%の儲けを乗せて年末の基準価格は10200円になるはずです。
しかし、実際の基準価格は1.5%の手数料を差し引かれて、10050円前後に収まります。
積立NISAが「信託報酬が一定水準以下」を対象商品にしている理由も、投資信託が高いと儲けを出すのが難しくなるからです。
『投資信託の手数料は高い!だから儲からない(米国と比較。数値で解説)』
積立NISA対象商品の要件3 分配金が毎月分配されないこと
投資信託は毎月分配型が人気です。
毎月分配型の投資信託は毎月分配金が出るため、儲かっているような気がするからでしょうか?
しかし、投資信託の分配金はファンドの純資産から支払われるため、分配金を出せば出すほどファンドの基準価格は下がります。
このようにです。
(青線が基準価格)
分配金が毎月約100円支払われる分配型投資信託
基準価格が下がっても、積立NISAの分配金は非課税であるため投資には影響を与えないようにみえますが、積立NISAを長年続けていくと差が出てきます。
分配金を受け取ってしまうと、その分だけ複利の力が弱くなるからです。
元本だけに利息がつくものを単利といい、
元本とその利息に新しい利息がついていくものを複利といいます。
積立NISAの複利とは、儲けが再投資され儲けが儲けを生むことをいいます。
複利の力は時間(年数)の経過とともに強力になっていき、放物線上に資産が増えていきます。
『投資信託は分配金なしを選ぼう 再投資パワーを税金に食われたくないなら』
積立NISA対象商品の要件4 信託期間が無期限または20年以上
投資で勝つためには「安値で買い高値で売る」。
これ以外に方法はありません。
しかし、「高値安値がいつでいくらなのか」は、プロ投資家でもわかりません。
積立NISAでは、毎月少額をコツコツと買っていきます。
100万円分を一括購入すると勝ち負けがはっきりしますが、1万円分を100回に分けて毎月購入すれば、大勝はできませんが大損する可能性が低いからです。
縦軸:基準価格
たまたま安く買えれば大きな利益を出せますが、高値づかみで大損をこうむることもあります。
積立NISAの信託期間が無期限または20年以上である理由は、時間分散して買いリスクを軽減して平均的に利益を出すためです。
積立NISAのような積立投資は、長期であればあるほど運用は安定してきます。
積立NISAの対象商品の信託報酬はこんなに安い
金融庁の資料を参考に作成
金融庁の調べによると、日本の信託報酬の平均はアメリカの5倍以上です。
(1.53%)
そのため、積立NISAにはインデックスファンド、アクティフファンドごとに信託報酬の上限があります。
積立NISA(インデックスファンド)
- 国内のみが投資対象:0.5%
- 海外資産も投資対象:0.75%
積立NISA(アクティブファンド)
- 国内のみが投資対象:1.0%
- 海外資産も投資対象:1.5%
市場の平均値(インデックス)より高い儲けを求める投資信託のこと。
儲けを追求する分、手数料がインデックスファンドより高い。
しかし、アクティフファンドとインデックスファンドの儲けを比較すると、必ずしも「アクティブファンド>インデックスファンド」ではない。
そして、こちらが積立NISA対象商品の信託報酬の平均です。
インデックスファンド
株式型 | 0.31 |
---|---|
国内 | 0.27 |
海外 | 0.35 |
国内外 | 0.26 |
バランス型 | 0.36 |
国内 | 0.28 |
海外 | 0.6 |
国内外 | 0.35 |
アクティブファンド
株式型 | 1.09 |
---|---|
国内 | 0.95 |
海外 | 1.5 |
バランス型 | 1.1 |
国内 | 1 |
海外 | – |
国内外 | 1.12 |
積立NISA対象商品の信託報酬は相当抑えられています。
積立NISA対象商品は「販売手数料なし」「毎月分配型」ではないため、理想的な長期積立投資が可能です。
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まとめ
- 積立NISAが「販売手数料なし」のみ対象商品にしている理由は、販売手数料が高いと儲けを出すのが難しくなるから
- 積立NISAが「信託報酬が一定水準以下」を対象商品にしている理由も、投資信託が高いと儲けを出すのが難しくなるから
- 積立NISAが「分配金が毎月分配されないもの」を対象商品にしている理由は、分配金を受け取ってしまうと、その分だけ複利の力が弱くなるから
- 積立NISAが「信託期間が無期限または20年以上」を対象商品にしている理由は、投資金額を時間分散して買い、リスクを軽減して平均的に利益を出すため
- 積立NISA対象商品は理想的な長期積立投資が可能
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