妻は妊娠中の腰痛に湿布を使っていました。
妻の弟嫁が妊娠したとき病院に湿布をもらいにいったところ、妊婦に湿布は処方できないと断られたそうです。
なぜでしょう?
妊婦の腰痛に、湿布を使っても大丈夫なのでしょうか?
こんな疑問にお答えしたいと思います。
<本記事に登場する湿布一覧>
※健康保険の関係で腰痛に使えない湿布もありますが、今回は健康保険は考慮しません
妊娠中に腰痛が起こる理由
妊娠中の腰痛の原因は、子宮が大きくなるにつれ、腰(骨盤)、背中、腰部への負担が増えるためと考えられています。
(妊娠して赤ちゃんが大きくなりにつれ、おなかも大きくなる
体重が増える→体全体のバランスが悪くなる→腰痛)
腰痛や背中の痛み軽減のために妊婦帯を使う方も多いです。
妊婦への湿布の使用 意見がわかれる理由
湿布に使用される成分は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)といわれる解熱鎮痛成分です。
非ステロイド性抗炎症薬の飲み薬は、妊娠後期に使用すると赤ちゃんの動脈管収縮や羊水減少などを起こすことがあります。
動脈管とは
妊婦の胎盤から流れる血液(酸素)を赤ちゃんの全身へ送るための心臓のくだのことです。
動脈管が収縮すると、血液(酸素が)全身にいきわたらなくなります。閉じてしまうと赤ちゃんの生命がリスクにさらされます。
生まれてから動脈管は必要なくなりますので、生後3週程度で自然に閉じます。
ケトプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症薬の湿布は、赤ちゃんに動脈管収縮が起きた症例は報告されていません。
しかし、妊娠後期の妊婦腰痛に多くの湿布を使った場合、湿布が赤ちゃんに影響を与える可能性がないとは言い切れません。
それが妊婦への湿布使用の是非がわかれる理由です。
妊娠後期の妊婦腰痛に使えない湿布(禁忌)
ケトプロフェンとエスフルルビプロフェンを含む成分を使った湿布は、妊娠後期の妊婦の腰痛に使えません。
モーラステープ(ケトプロフェン)
妊娠後期の腰痛に使えない湿布はモーラステープが有名です。
知っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、モーラステープのみが妊娠後期の妊婦に使えないのではなく、ケトプロフェンを含むすべての湿布が妊娠後期の妊婦に使えません。
『モーラステープ、パップ、パップXRの違いは効果と効果時間にある』
<ケトプロフェンを含む湿布の例>
- モーラスパップ、パップXR
- ミルタックス
- ケトプロフェン
- タッチロン
- パッペンK
- パテル
- フレストル
ロコアテープ(エスフルルビプロフェン)
ロコアテープは妊娠後期の妊婦に使えません。
ロコアテープ(2016年発売)はエスフルルビプロフェンを主成分とする最強の湿布と噂される評判のいい湿布ですが、変形性関節症にしか使えないというデメリットがあります。
妊婦腰痛への使用が禁止されていない湿布
次にあげる湿布は、妊婦腰痛への使用が医師の裁量に任される湿布です。
- ロキソニン(ロキソプロフェン)
- ボルタレン(ジクロフェナク)
- セルタッチ(フェルビナク)
- イドメシン(インドメタシン)
- アドフィード(フルルビプロフェン)
ロキソニンテープ(ロキソプロフェン)
ロキソニンテープの主成分はロキソプロフェンです。
ロキソニンテープは妊婦腰痛への使用が禁止されていませんが、ロキソプロフェンの飲み薬(ロキソニン錠)は、妊娠末期の妊婦に使えません。
『ロキソニンの湿布 ロキソニンテープは子供と妊婦も使ってOK?』
<ロキソプロフェンを含む湿布の例>
- ロキソプロフェンNa
- ロキソプロフェンナトリウム
ボルタレンテープ(ジクロフェナク)
ボルタレンテープの主成分はジクロフェナクです。
ボルタレンテープは妊婦腰痛への使用が禁止されていませんが、ジクロフェナクの飲み薬(ボルタレン錠)は妊婦に使えません。
妊娠末期の妊婦腰痛にはボルタレンテープ以外の湿布が無難です。
『湿布貼りすぎ!?ボルタレンテープ市販と病院用は1日何枚まで?』
<ジクロフェナクを含む湿布の例>
- ジクロフェナクNa
- ジクロフェナクナトリウム
- ナボール
セルタッチテープ(フェルビナク)
フェルビナクを主成分とするセルタッチテープは、妊婦腰痛への使用が禁止されていません。
ただし、フェルビナクを含む市販湿布は妊婦に使用禁止の記載があります。
(同じフェルビナクでも、医療用と市販では妊婦への使用の意見が違う)
<フェルビナクを含む湿布の例>
- スミル
- パルスポット
- ファルジー
- フェルナビオン
- フェルビナク
- フレックス
- マルチネス
イドメシンコーワパップ(インドメタシン)
イドメシンコーワパップの主成分はインドメタシンです。
イドメシンコーワパップは妊婦腰痛への使用が禁止されていませんが、インドメタシンの飲み薬(インダシン、インテバン)は、妊婦、妊娠している可能性のある女性に使えません。
<インドメタシンを含む湿布の例>
- アコニップ
- インサイド
- インテナース
- インドメタシン
- カトレップ
- パップスターID
- ラクティオン
アドフィード(フルルビプロフェン)
フルルビプロフェンを主成分とするアドフィードは、妊婦腰痛への使用が禁止されていません。
<フルルビプロフェンを含む湿布の例>
- ステイバン
- ゼポラス
- フルルバン
- フルルビフロフェン
- ヤクバン
『モーラス・ロキソニン・ボルタレン・ミルタックス一番効く湿布はどれ?』
湿布の主成分を評価
添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用する」というお決まりのフレーズが多すぎます。
そのため、医療現場では「FDA妊婦カテゴリー(FDA Pregnancy Category)」を妊婦に対する薬物治療の指標のひとつとして使われることも多いです。
FDA妊婦カテゴリーとは、アメリカFDAによる赤ちゃんに対する薬の危険度を示す評価基準のことです。5段階のカテゴリーからなり、危険度に順じた分類になっています。
FDA妊婦カテゴリー抜粋
カテゴリー | 概要 |
---|---|
A | ヒト対照試験で、危険性がみいだされない |
B | ヒトでの危険性の証拠はない |
C | 危険性を否定することができない |
D | 危険性を示す確かな証拠がある |
X | 妊娠中は禁忌 |
このカテゴリーに準じて、湿布の主成分を評価すると次のようになります。
湿布 | 主成分 | FDA妊婦カテゴリー |
---|---|---|
モーラス | ケトプロフェン | – |
ロコア | エスフルルビプロフェン | – |
ロキソニン | ロキソプロフェン | – |
ボルタレン | ジクロフェナク | C |
セルタッチ | フェルビナク | – |
イドメシン | インドメタシン | B |
アドフィード | フルルビプロフェン | – |
インドメタシンの内服薬は添付文書上妊婦に禁忌のため、妊婦には使えません。
ただ、FDA妊婦カテゴリーの基準によると、インドメタシンはBに評価されており、妊婦には比較的安全に使用できると考えられています。
『妊婦必見!妊娠中の薬服用不安と心配を解くヒント その薬飲んで大丈夫?』
妊婦腰痛湿布のまとめ)
湿布 | 添付文書 (湿布) |
添付文書 (内服薬) |
添付文書 (市販) |
FDA | 独自評価 |
---|---|---|---|---|---|
モーラス | 妊娠後期禁忌 | – | 妊婦禁忌 | – | C |
ロコア | 妊娠後期禁忌 | – | – | – | C |
ロキソニン | 有益性 | 妊娠末期禁忌 | 相談 | – | A |
ボルタレン | 妊婦禁忌 | 妊婦禁忌 | C | B | |
セルタッチ | – | 妊婦禁忌 | – | A | |
イドメシン | 妊婦禁忌 | 相談 | B | A | |
アドフィード | – | – | – | – |
FDA:FDA妊婦カテゴリー
-:未発売もしくは未評価
独自評価:
- 妊婦の腰痛に使う場合がある
- 妊婦の腰痛には別の湿布も考慮する
- 妊婦の腰痛には使わない方がいい
- 妊婦と授乳中の薬の使い方については、医師や診療科によって意見がわかれる
- 非ステロイド性抗炎症薬の飲み薬は、妊娠後期の妊婦の使用で赤ちゃんの動脈管収縮や羊水減少などを起こすことがある
- ただし、ケトプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症薬の湿布では、赤ちゃんに動脈管収縮が起きた症例の報告はない
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