紫外線が強い季節になってきましたが、紫外線や季節とは無関係に、肩、首、腰、膝、肘の痛みは襲ってきます。
これらの痛みを緩和するため、湿布が使う人も多いと思います。
夏は、湿布の使い方には十分な注意が必要な季節です。
夏の湿布の使い方を誤ると、「光線過敏症(光接触皮膚炎)」という湿布かぶれの副作用が出ることがあります。
目次
夏の湿布かぶれの副作用 光線過敏症
夏の湿布かぶれの原因は、光線過敏症(光接触皮膚炎)という副作用がほとんどです。
光線過敏症は、皮膚上で何らかの成分とアレルギー反応を起こした後に、紫外線(UVA)を浴びることが原因と考えられています。
夏の場合、皮膚上で何らかの成分は湿布の成分が多く、湿布の添付文書(医療者向け薬の説明書)に副作用や禁忌事項として光線過敏症の記載があります。
光線過敏症の副作用は、湿布を貼っていた場所に、かぶれ、かゆみ、痛みが出ます。
ひどい光線過敏症は、2倍くらいに皮膚がはれ上がるときもあります。
出典:久光製薬資料
光線過敏症の副作用は、湿布を貼ったところに沿って赤くかぶれるのが特徴です。
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モーラステープと光線過敏症
光線過敏症の原因となるアレルギー反応を起こす何らかの成分は、モーラステープの有効成分ケトプロフェンが原因であることが多いです。
そのため、モーラステープの湿布袋には
「貼付部を紫外線に当てると光線過敏症を起こすことがあります」と注意喚起されています。
ケトプロフェンを含む湿布と塗り薬の例
(光線過敏症に要注意湿布と塗り薬)
ケトプロフェンを含む湿布は、モーラステープがあまりにも有名です。
本記事にもモーラステープがよく出てきますが、
ケトプロフェンを含む湿布、ゲル、クリームなどは、モーラステープの光線過敏症と同様に、湿布かぶれの副作用に注意が必要です。
- セクター
- ミルタックス
- エパテック
- ケトプロフェン
- タッチロン
ケトプロフェンで光線過敏症を起こす頻度
医療用医薬品のケトプロフェン外用剤については、昭和61年の販売以降平成22年5月までに、皮膚障害の副作用が4,252例(うち重篤症例は90例)報告され、そのうち光線過敏症は2,028例(うち重篤症例は47例)であった。
医薬品・医療機器等安全性情報No.276
ケトプロフェンで、剤形別の光線過敏症の報告数と重症の光線過敏症報告数をグラフ化すると次の通りです。
グラフだけを見ると、テープ(要するにモーラステープ)が突出して光線過敏症を起こすように見えます。
しかし、モーラステープの使用量が圧倒的に多いだけで、モーラステープが光線過敏症を起こしやすいというわけではありません。
参考:平成21年度の剤形別出荷量
- ゲル:約7500kg
- パップ:約6億6000万枚
- ローション:約7万4000kg
- クリーム:剤約1万6000kg
- テープ:約24億枚!
紫外線が強い夏になる前に、毎年モーラステープのメーカーから各医療機関へ光線過敏症の注意喚起があるため、モーラステープの湿布かぶれの副作用は年々減少傾向にあります。
出典:久光製薬資料
(以下、光線過敏症を含むかぶれの副作用ことを「湿布かぶれ」と表記します)
夏のモーラステープの湿布かぶれ(事前対処)
夏のモーラステープの湿布かぶれは、湿布を貼っていた部分に、直接紫外線があたると起こります。
湿布かぶれは、モーラステープ貼っているとき、または貼がしてから4週間以内に起こりやすいです。
つまり、モーラステープを貼ってから4週間は、紫外線に当てないようにすればいいのです。
湿布かぶれ事前対処1:
湿布を貼った部分を覆う
モーラステープ貼付部に直接紫外線があたらないように、長袖や長ズボンを履いたり、サポーターなどで覆います。
ただし、白い生地や薄手の服は、紫外線の吸収が弱いため注意が必要です。
湿布かぶれ事前対処2:
紫外線の強い時間帯は外出を控える
夏の時間帯別紫外線指数
(気象庁HP:つくば市の7月紫外線指数の最大値の平均を参考に作成)
紫外線指数(UVインデックス、UV指数)とは、紫外線が人体に与える紫外線の強さを数値化した指数です。
夏、冬、季節に関わらず、10時~14時は紫外線が強いです。
その時間はできる限り外出を控えます。
湿布かぶれ事前対処3:
日焼け止めを使用する
日焼け止めは紫外線対策に有効ですが、使用の仕方にコツがいります。
日焼け止めは湿布かぶれの事前対処に有効だが…
出典:久光製薬「患者さま向け資料」
メーカーは日焼け止め(サンスクリーン剤)の使用を推奨していますが、
日焼け止めは使い方を誤ると、湿布かぶれとは別のかぶれを起こしたり、湿布の効果を落としたりする原因になります。
日焼け止めの成分でかぶれを起こす可能性がある
塗り薬を皮膚に強力に効かせたい時は、皮膚に塗り薬を塗った後、サランラップなどで覆って密封します。
これを密封療法といいます。湿布も一種の密封療法といえます。
日焼け止めを塗った上に湿布を貼ると、日焼け止め成分が皮膚に強力に浸透することがあり、日焼け止めの成分が原因のかぶれ(接触皮膚炎)が起こる可能性があります。
湿布を貼る場所には日焼け止めを塗らないで、何かで覆う方法での事前対処が有効です。
また、日焼け止めを塗った場合は、日焼け止めをしっかり落としてから湿布を貼ります。
湿布がはがれやすくなる可能性がある
湿布を貼る前に日焼け止めを塗ると、湿布が皮膚に粘着するのを妨げる原因になります。
そのため、湿布を貼っても期待した効果を得られない場合があります。
湿布かぶれ後の対処
それでも、湿布かぶれを起こしてしまった時は、皮膚科に受診します。
湿布かぶれの場合は、ステロイドを数日塗れば、かゆみとかぶれはおさまってきます。
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モーラステープ以外は湿布かぶれを起こさない?
そんなことは、ありません。
モーラステープ以外の湿布でも、夏場は特に湿布かぶれを起こす可能性はあります。
「医薬品・医療機器等安全性情報No.276」に、4成分の光線過敏症の発現状況の比較結果(2005年1月から2008年12月)が掲載されています。
- ケトプロフェン
- フルルビプロフェン
- インドメタシン
- フェルビナク
処方から2カ月以内に光線過敏症と診断された割合
サンプル数 | 光線過敏症 | 割合 | |
---|---|---|---|
インドメタシン | 20338 | 11 | 0.054% |
ケトプロフェン | 65897 | 35 | 0.053% |
フルルビプロフェン | 32893 | 10 | 0.030% |
フェルビナク | 50975 | 11 | 0.022% |
サンプル数も多いので、信ぴょう性の高いデータです。
この結果からわかること
- インドメタシンとケトプロフェンを含む湿布は、光線過敏症を起こす頻度が高い
- フルルビプロフェン、フェルビナクを含む湿布は、インドメタシンとケトプロフェンほどではないが、同様に光線過敏症を起こす可能性がある
リストには上がっていないロキソニンテープやボルタレンテープでも、湿布かぶれを起こす可能性は0ではありません。
光線過敏症の発現率は、100万人あたり0.6人~12.4人で、夏の湿布の使用には同様に注意が必要です。
モーラステープの光線過敏症と同様に湿布かぶれに注意すべき湿布
ケトプロフェン以外にも、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクを含むゲル、クリーム、軟膏なども、湿布かぶれを起こす原因となるとわかりましたね。
湿布名 | 成分名 |
---|---|
イドメシンコーワパップ | インドメタシン |
インテナース | |
カトレップ | |
ハップスターID | |
ラクティオンパップ | |
アドフィードパップ | フルルビプロフェン |
ゼポラス | |
フルルバン | |
ヤクバンテープ | |
(ロコアテープ)※ | |
セルタッチテ | フェルビナク |
フェルナビオン |
※ロコアテープの成分:エスフルルビプロフェン
これらの成分を含む湿布や塗り薬を使用するときは、直射紫外線にあたらないように特に注意が必要です。
まとめ
- 夏に湿布を貼るときは紫外線に注意
- モーラステープは使用量も多いため、湿布かぶれを起こす件数も多い
- 湿布を貼ったところは、直接紫外線が当たらないように覆う
- または、日焼け止めを使用する
- フルルビプロフェン、フェルビナク、インドメタシン、ケトプロフェンを含む湿布や塗り薬も、モーラステープと同様に湿布かぶれを起こす可能性があるため注意(統計あり)
- ロキソニンテープやボルタレンテープも、湿布かぶれを起こす可能性は0ではない(統計なし)