ヘルペス薬はバルトレックスが有名ですが、ゾビラックス、ファムビルもあります。
バルトレックスはゾビラックスの欠点(服用回数の多さ、吸収の悪さ)を改良した薬ですので、ゾビラックスの飲み薬を使う理由はあまり見当たりません。
(ただし、ゾビラックスには点滴、塗り薬もあり、ジェネリックの薬価は格安)
ファムビルはバルトレックスと比較すると薬価(薬の値段)がやや高いですが、帯状疱疹に使う価値はありそうです。
なぜなら、ファムビルは帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛が消失するまでの期間を短縮することが海外の二重盲検比較試験で確認されているからです。
※抗ヘルペスウイルス薬を「ヘルペス薬」と略記します。
ファムビルは錠剤の一択
ゾビラックスは錠剤、顆粒剤、点滴、塗り薬があり、バルトレックスには錠剤と顆粒剤があります。
しかし、ファムビルは錠剤のみです。
そのため(効果はあると思いますが)水疱瘡には使えませんが、ヘルペス薬のスタンダードであるバルトレックスと比べると小さく飲みやすいです。
ファムビルのジェネリック発売 (薬価の比較)
ジェネリックがあるといいのですが、ファムビルは現在ジェネリックがありません。(2017年5月)
→2017年12月にファムビルのジェネリックファムシクロビルが発売されました。
ジェネリック | ヘルペス薬 | 薬価 |
---|---|---|
– | ゾビラックス200mg | 221.8 |
– | ゾビラックス400mg | 352.3 |
○ | アシクロビル200mg | 42.4 |
○ | アシクロビル400mg | 58.6 |
– | バルトレックス錠 | 405.6 |
○ | バラシクロビル錠 | 188.8~219.4 |
– | ファムビル | 489.8 |
○ | ファムシクロビル錠 | 209.7 ~289.8 |
ファムビルは口唇ヘルペスにも効果があります。
しかし、口唇ヘルペスは塗り薬でも対応できる場合が多く、さらにファムビルは薬価が高いためか、あまり積極的には使われていない印象です。
なぜなら、ヘルペス薬はヘルペスウイルスの増殖を抑えて水ぶくれの皮膚症状を改善するだけではなく、ヘルペス症状の軽い初期に服用を開始すれば、ピリピリとした痛みを和らげることができるからです。
帯状疱疹の治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛という帯状疱疹の後遺症に移行する場合があります。
ファムビルはプロドラッグ
ファムビルは体内で代謝され薬効を示すプロドラッグです。
- ファムビルの主成分ファムシクロビルは、肝臓でペンシクロビルに変換されます
- ペンシクロビルは、ヘルペスウイルス内で活性型ペンシクロビルになり、抗ヘルペスウイルス作用を発現します。
ペンシクロビルはヘルペスウイルス外では、抗ヘルペスウイルス作用を示さないため、3つのヘルペス薬の中で最高のバイオアベイラビリティを示します。
ヘルペス薬 | バイオアベイラビリティ |
---|---|
ゾビラックス | 10~20% |
バルトレックス | 約55% |
ファムビル | 77% |
生物学的利用率ともいう。
全身をめぐる血液循環に入る薬の割合。
高いと主成分が効率よく利用できている
ファムビルの飲み方
ファムビルなどのヘルペス薬は、ウイルスの増殖を抑える効果が表れるまで2日程度かかります。
帯状疱疹とわかったら、できるだけ早くヘルペス薬を飲んで治療を開始します。
本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。
なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい。
ファムビル添付文書より
ファムビルは、口唇ヘルペスなどの単純疱疹(単純ヘルペス)と帯状疱疹では飲み方が違います。
- 口唇ヘルペス
ファムビル1回1錠、1日3回、5日間服用 - 帯状疱疹
ファムビル1回2錠、1日3回、7日間服用
ファムビルの帯状疱疹への効果
ファムビルはヘルペスウイルスの増殖を抑えて水ぶくれの皮膚症状を改善します。
ファムビルの臨床試験(二重盲検比較試験)では、帯状疱疹の水ぶくれがかさぶたになるのにかかった日数は7日間以内がほとんどです。
ファムビルを含むヘルペス薬は、ヘルペスウイルスの増殖を抑えて水ぶくれの皮膚症状を改善するだけではありません。
帯状疱疹・口唇ヘルペスの皮膚症状の軽い初期に服用を開始すれば、ピリピリとした痛みを和らげることができます。
さらに、ファムビルは帯状疱疹後神経痛が消失するまでの期間を短縮することが海外の二重盲検比較試験で確認されています。
ファムビルの帯状疱疹後神経痛への効果
ファムビルなどのヘルペス薬を服用しない場合、帯状疱疹後神経痛に移行する頻度(皮疹発現90日後の疼痛残存率)は20~60%と言われています。
ファムビルを服用した場合、
半数の方の痛みが取れるまでにかかる日数が21日で、帯状疱疹後神経痛に移行する頻度は12.4%という結果が海外の二重盲検比較試験で報告されています。
出典:帯状疱疹後神経痛に対する臨床効果(FAMILIAR study)
ファムビルの副作用
臨床試験での副作用報告では、
ファムビルは胃腸系の副作用、頭痛、傾眠(うとうとする)の副作用がやや目立ちますが、特に副作用が起こる印象はありません。
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
頭痛 | 単純疱疹:1.1% 帯状疱疹:1.2% |
傾眠 | 単純疱疹:1% 帯状疱疹:0.5% |
下痢 | 単純疱疹:0.7% 帯状疱疹:0.8% |
悪心 | 単純疱疹:0.4% 帯状疱疹:0.8% |
- 副作用頻度(単純疱疹):8.9%
- 副作用頻度(帯状疱疹):12.4%
ファムビルの抗ウイルス効果の限界
ファムビルなどのヘルペス薬は、ヘルペスウイルスの増殖を抑える効果がありますが、全てのヘルペスウイルスを死滅できません。
そのため、ヘルペスウイルスの一部は神経の中に残ります。
(この状態を潜伏感染といいます)
口唇ヘルペス治療後
口唇ヘルペスが治った後も、
ストレスや疲れなどで免疫力が低下したときに、潜伏感染していたヘルペスウイルスが再活動を起こし、口唇ヘルペスが再発する場合があります。
年に1度も再発しない方もいれば、毎月のように再発する方もいますので、再発の頻度は人それぞれです。
帯状疱疹治療後
ファムビルを服用したとしても、帯状疱疹後神経痛に移行する場合があります。
帯状疱疹後神経痛薬の効果の個人差は大きく、長期の痛みに悩まされることあります。
まとめ
- ファムビルは、口唇ヘルペス(単純疱疹)や帯状疱疹に効果がある
- ファムビルは、帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛が消失するまでの期間を短縮する
- ただし、ファムビルなどのヘルペス薬は、ヘルペスウイルスの増殖を抑える効果があるが、全てのウイルスを死滅させることができず、効果には限界がある
- 口唇ヘルペスは塗り薬で対応できる場合が多い
- ファムビルは薬価が高いためか、あまり口唇ヘルペスには積極的には使われていない印象
- ヘルペス薬の飲み薬が本当に必要な病気は帯状疱疹
- その理由は、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛薬の効果の個人差は大きく、長期の痛みに悩まされる場合があるから
- ファムビルなどのヘルペス薬は、ウイルスの増殖を抑える効果が現れるまで2日程度かかる
- 帯状疱疹とわかったら、できるだけ早くヘルペス薬を飲んで治療を開始する
コメント