湿布にはうすいプラスター剤と厚いパップ剤があります。
さらに、モーラスにはXRという新しいパップ剤が2015年に追加されました。
- モーラスパップ
- モーラステープ
- モーラスパップXR
薄いプラスター剤と厚いパップ剤は、ある一定条件のもとでは効果が同じ場合がありますが、
モーラスは、ケトプロフェン含有量・濃度、効能効果、効果時間、貼り心地、粘着性、副作用などが違います。
パップ剤、プラスター剤、パップXR 貼り心地・粘着性の違い
パップ剤・プラスター剤・パップXRは、貼り心地・粘着性の違いがあり、炎症時間の経過で使い分けられています。
パップ剤:モーラスパップ
モーラスパップのような分厚い白い湿布をパップ剤と言います。
パップ剤は水分含有量が多く、貼ると水分の蒸発作用により冷たく感じるのが特徴です。
(夏は気持ちいいが、冬は飛び上がるくらい冷たい)
パップ剤には冷却効果があり、急性症状(まさに痛みが起こったその瞬間)に使うと有効です。
プラスター剤:モーラステープ
モーラステープのようなうすい肌色の湿布をプラスター剤と言います。
モーラステープは水分が少なく・うすく、皮膚に密着しやすいのが特徴です。
打撲などで熱を持っているときは、モーラスパップを数日使用して患部の熱がなくなったころにモーラステープを使うといいです。
パップXR:モーラスパップXR
パップXRはパップ剤とプラスター剤の特徴を足して2で割ったような剤形です。
- パップ剤の冷却性
(ただし、冷却性はパップ剤におとる) - プラスター剤の粘着性
(ただし、粘着性はプラスター剤におとる)
モーラスパップ、テープ、パップXR 大きさの違い
モーラスの大きさは3種類です。
(モーラスの大きさの単位はcmです)
- 7×10(スモール)
- 10×14(ミディアム)
- 14×20(ビッグ)
モーラスパップ | モーラステープ | モーラスパップXR |
---|---|---|
10×14 | 7×10 | 10×14 |
14×20 | 10×14 | 14×20 |
スモールサイズがあるのはモーラステープだけです。
モーラスパップ、テープ、パップXR ケトプロフェン含有量と濃度の違い
ケトプロフェン含有量と濃度の違いを解説する前に、湿布の膏体と湿布が効く理由を解説します。
モーラス(湿布)の膏体と効く理由
モーラスの主成分ケトプロフェンは膏体に溶けた状態で安定しています。
モーラステープL40mgを例に挙げると、
モーラステープL40mg1枚(膏体質量1g)中に、ケトプロフェンが40mg溶けています。
出典:外用製剤協議会HP
モーラステープL40mgを肌に貼ると、膏体から主成分ケトプロフェンがはがれていき、皮膚の一番表面部分である角質に付着します。
付着したケトプロフェンは、角質→表皮→真皮→皮下組織へと浸透していき、痛みが起こっている場所のプラスタグランジンと呼ばれる炎症物質の生成を抑え、痛みや炎症を抑えます。
ケトプロフェン含有量と濃度の違い
モーラスパップ、モーラステープ、モーラスパップXRの10×14サイズのケトプロフェン含有量は、それぞれ30mg、40mg、120mgです。
【モーラスパップ
< モーラステープ
< モーラスパップXR】
ケトプロフェン含有量が多いほど効果は高いと考えたいところですが、そう単純な話でもありません。
ケトプロフェン濃度が違うからです。
膏体質量はそれぞれ10g、2g、6gですので、ケトプロフェン濃度は0.3%、2%、2%です。
モーラスパップ | モーラステープ | モーラスパップXR | |
---|---|---|---|
ケトプロフェン含有量 (mg) |
30 | 40 | 120 |
膏体質量 (g) |
10 | 2 | 6 |
ケトプロフェン濃度 (%) |
0.3 | 2 | 2 |
ケトプロフェン濃度で効果を判定すると、
【モーラスパップ < モーラステープ = モーラスパップXR】です。
ケトプロフェン濃度が高いほど湿布の効果は強いと考えられます。
検証してみましょう。
モーラスパップ、テープ、パップXR 効果時間の違い
モーラスパップとモーラステープの効果時間の違い
モーラスパップの用法は1日2回貼付、モーラステープの用法は1日1回貼付です。
次のグラフは、モーラステープは24時間貼りっぱなし。
モーラスパップは12時間後に1回貼り替えたときの角層中ケトプロフェン量(μg)の推移です。
モーラスパップは12時間後に貼り替えたとしても、モーラステープのケトプロフェン濃度を超えられません。
【ケトプロフェン濃度を維持=効果時間が長い】
と考えると、
効果時間はモーラステープの圧勝です。
実際、モーラステープの最高血中濃度到達時間(Tmax)は12~13時間で、消失半減期(T1/2)は4~5時間ですので、24時間程度は効果が持続します。
出典:モーラステープインタビューフォーム
そして、24時間ごとにモーラステープを貼り替えると、血清中ケトプロフェン濃度は一定範囲内で安定し、効果・効果時間も安定します。
出典:モーラステープインタビューフォーム
Tmax(最高血中濃度到達時間),T1/2(消失半減期)の解説
モーラスパップXRとモーラステープの効果時間の違い
モーラスパップXRとモーラステープの角層中ケトプロフェン量(μg)はどうでしょうか?
モーラスパップXRとモーラステープは1日1回貼り替えタイプの湿布ですので、どちらも24時間貼りっぱなしで試験しています。
モーラスパップXRとモーラステープの効果時間は同等であることがわかります。
(実際、モーラスパップXRとモーラステープLの生物学的同等性は確認されている)
モーラスパップ、テープ、パップXR 効能効果の違い
モーラステープとモーラスパップXRの効能効果は同じです。
モーラスパップは患部へのケトプロフェンの浸透力が弱く、腰痛症や関節リウマチには十分な効果が期待できないため、保険適応はありません。
下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
- 腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)
- 変形性関節症
- 肩関節周囲炎
- 腱・腱鞘炎
- 腱周囲炎
- 上腕骨上顆炎(テニス肘等)
- 筋肉痛
- 外傷後の腫脹・疼痛
関節リウマチにおける関節局所の鎮痛
モーラステープ(モーラスパップXR)添付文書より
ただし、モーラステープとモーラスパップXRは痛みを抑えるだけで、病態そのものを治療しているわけではありません。
腰痛あれば、腰痛の原因を絶たなくては腰痛は治りません。
腰痛の原因を何とかしない限り腰痛は再発します。
モーラステープXR開発の経緯
先述の通り、モーラスパップは腰痛や関節リウマチには十分な効果が期待できません。
しかし、特に腰痛は国民的慢性疾患?であるため腰痛ニーズは多いです。
ケトプロフェン濃度を高めて患部への浸透性を上げ、腰痛症にも効果を発揮させるために開発された湿布がモーラステープです。
(後に「関節リウマチにおける関節局所の鎮痛」の効能効果追加)
モーラスパップXR開発当時「腰痛症」に対する効能・効果がある湿布はモーラステープのみでした。
(ロキソニンテープ、ボルタレンテープ、イドメシンパップ、ミルタックスパップは腰痛に使われいるのが、腰痛症の適応はない)
腰痛ニーズをパップ剤で満たすため開発された湿布がモーラスパップXRです。
まとめ
モーラスパップ | モーラステープ | モーラスパップXR | |
---|---|---|---|
大きさ | 10×14 14×20 |
7×10 10×14 |
10×14 14×20 |
ケトプロフェン濃度 | 0.3% | 2% | 2% |
用法 | 1日2回貼付 | 1日1回貼付 | |
効果時間 | 短い | 長い | |
粘着性 | 低い | 高い | やや高い |
冷却効果 | ○ | × | △ |
効能効果 |
以外の右記疾患 |
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