偏頭痛(片頭痛)の痛みの治療には、4種類の頭痛薬が使われることが多いです。
(※偏頭痛の正式名称は「片頭痛」、偏頭痛薬の正式名称は「片頭痛薬」です)
- アセトアミノフェン
カロナール、コカールなど - 非ステロイド性抗炎症薬
ロキソニン、ボルタレン、ナイキサン、ポンタールなど - エルゴタミン製剤
クリアミン、ジヒデルゴットなど - トリプタン製剤
イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージ
偏頭痛は吐き気を起こす場合も多いため、4種類の頭痛薬に吐き気止め(ナウゼリン、プリンペランなど)をプラスして5種類が偏頭痛薬という数え方もあります。
現在、偏頭痛に使われている頭痛薬は、トリプタン製剤と呼ばれる偏頭痛に特化した頭痛薬です。
トリプタン製剤は5種類あり、4種類の製剤(錠剤、口腔崩壊錠、点鼻薬、注射)が発売されています。(2018年現在)
トリプタン製剤一覧 | 主成分 | 世代 | 発売年 |
---|---|---|---|
イミグラン | スマトリプタン | 第一世代 | 2001年 |
ゾーミッグ | ゾルミトリプタン | 第二世代 | 2001年 |
レルパックス | エレトリプタン | 2002年 | |
マクサルト | リザトリプタン | 2003年 | |
アマージ | ナラトリプタン | 第三世代 | 2004年 |
トリプタン製剤は効く効かないの個人差が大きく、相性の良い偏頭痛薬を求めて何種類か試すことも少なくありません。
さらに、偏頭痛薬に求める内容(効果、効果発現時間、持続時間、副作用など)で、相性も違うでしょう。
さあ、あなたの偏頭痛にあったトリプタン製剤を探しに行きましょう。
※トリプタン製剤一覧は、記事の最後にまとめています。
偏頭痛の原因(メカニズム)
偏頭痛の原因はいまだに解明されてはいません。
3種類の仮説が有名ですが、現在では三叉神経血管説(さんさしんけい けっかんせつ)が最有力です。
<三叉神経血管説>
- 何らかの原因で頭の中の太い血管が拡張すると、頭の中で一番大きな神経である三叉神経が圧迫されます。
- 圧迫された三叉神経から痛みの起こす物質が放出され、血管の周りに炎症を起こし、さまざまな偏頭痛の症状が表れます。
これが偏頭痛の症状が起こるメカニズム(原因)です。
「何らかの原因で」ということですが、血管を拡張させる原因のひとつに「セロトニンの異常な放出」が考えられています。
トリプタン製剤(偏頭痛薬)の作用
トリプタン製剤には他の頭痛薬にない2種類の作用があります。
- 脳にあるセロトニン受容体に働いて、拡張した血管を収縮させる作用
- 拡張した脳の血管周辺の炎症を取る作用
しかし、トリプタン製剤を飲んでも全く効かないという人もいます。
効かなかった場合は、そのトリプタン製剤を飲んではいけません。
その頭痛は偏頭痛ではない可能性があるからです。
例えば、緊張型頭痛にトリプタン製剤は効かないので、普通の頭痛薬(ロキソニン、ボルタレンなど)が使われます。
偏頭痛の再発に有効なトリプタン製剤2種類 【レルパックス、アマージ】
レルパックス(エレトリプタン)
アマージ(ナラトリプタン)
トリプタン製剤は、速く効く代わりに速く効果がなくなります。
しかし、レルパックスとアマージの2種類は、他の3種類のトリプタン製剤とはちょっと違う特徴があります。
レルパックスとアマージは他のトリプタン製剤と比較すると、効果が持続することです。
ですので、偏頭痛の再発予防にも効果が期待できます。
『偏頭痛薬レルパックス、アマージは効かない?副作用と再発予防効果』
偏頭痛に強く効くトリプタン製剤2種類 【ゾーミッグ、マクサルト】
※ゾーミックではなくゾーミッグが正解です。
ゾーミッグ・マクサルトには、普通の錠剤とRM錠(RPM錠)と呼ばれる崩壊錠がありますが、この2種類の剤形の効果は同等です。
どちらのトリプタン製剤も吸湿性があるため使用直前に薬を取り出します。
左:ゾーミッグ錠(ゾルミトリプタン)
右:ゾーミッグRM錠
左:マクサルト錠(リザトリプタン)
中:専用ケース
右:マクサルトRPM錠
どのトリプタン製剤も偏頭痛に速い効果が期待できます。
その5種類のトリプタン製剤の中でも特に速く強い効果が期待できるのは、ゾーミッグとマクサルトです。
(ゾーミッグは血中濃度の立ち上がりがやや遅いですが、効果は満足という方が多い印象)
ゾーミッグはイミグランの吸収率の低さをカバーするため、中枢性作用を強化した偏頭痛薬です。
そのため副作用も比較的強いです。
(副作用は後でまとめて解説)
『偏頭痛薬マクサルト、ゾーミッグの効果は最強?副作用と飲み合わせ』
3種類の製剤から選べるトリプタン製剤 【イミグラン】
他のトリプタン製剤は内服薬のみですが、イミグランは3種類の製剤(錠剤、点鼻薬、注射薬)があります。
イミグランは成分を変更することなく、偏頭痛のニーズに合わせて製剤を変えられます。
ただし、製剤の種類で効果と副作用が違います。
製剤の種類の大きな違いは、主成分スマトリプタンが血中に入るスピードです。
スマトリプタンが血中に入るスピード
- 注射薬
- 点鼻薬
- 錠剤
主成分が血中に入るスピードが速いほど、偏頭痛に速く効きます。
『偏頭痛薬イミグラン錠、点鼻薬、注射薬の副作用と効果の違い』
イミグラン注射は群発頭痛にも効果があります
『群発頭痛の原因、症状、対処法(治療薬イミグラン注射と予防薬ワソラン)』
トリプタン製剤(偏頭痛薬)を飲むタイミング
トリプタン製剤は、偏頭痛が起こってからすぐに飲めば偏頭痛を速く取り除けます。
ただし、偏頭痛の起こる前(前兆、予兆)に飲んでも予防効果はありません。
なぜなら、トリプタン製剤は速く効く代わりに速く効果がなくなる特徴があるからです。
たとえトリプタン製剤を偏頭痛予防に使ったとしても、偏頭痛が出るころにはトリプタン製剤の効果が弱くなっています。
偏頭痛を予防したい場合は、予防専用薬を検討してみましょう。
『【偏頭痛予防薬の効果と副作用】デパケン、トリプタノール、インデラル、ミグシス、テラナス、セレニカ』
トリプタン製剤(偏頭痛薬)の副作用
トリプタン製剤の副作用頻度は次の表の通りです。
トリプタン製剤 | 副作用頻度 |
---|---|
イミグラン | 31.6% |
ゾーミッグ | 23.4% |
レルパックス | 28.4% |
マクサルト | 18.6% |
アマージ | 14.6% |
(添付文書、インタビューフォームを参考に作成)
ただし、効果と同じで副作用も個人差が強く表れるので、必ずしもイミグランの副作用頻度が高いというわけではありません。
トリプタン製剤の副作用の内訳はこのとおりです。
副作用の種類 | イミグラン | ゾーミッグ | レルパックス | マクサルト | アマージ |
---|---|---|---|---|---|
痛み、圧迫感など | 6.6% | 6.1% | 1.8% | – | 1.9% |
悪心・嘔吐など | 6.6% | 1.7% | 4.5% | – | 5.1% |
動悸 | 4.6% | – | – | – | – |
めまい | – | 2.6% | 4.1% | 2.2% | 0.9% |
眠気、傾眠など | – | 3.0% | 4.1% | 7.7% | 0.9% |
倦怠感、脱力感 疲労感など |
4.6% | 3.5% | 2.5% | 2.9% | 0.9% |
(添付文書、インタビューフォームを参考に作成)
※各トリプタン製剤の副作用頻度を比較するのではなく、この程度の副作用が起こる可能性があると受け止めてください。
圧迫感・息苦しさの副作用は、飲んだ後30分以内に胸・のど・首などで起こることが多く、「痛い」「気分が悪い」と表現される場合が多いです。
これら症状は、トリプタン製剤による血管収縮作用が筋肉に起こったと考えられています。
圧迫感・息苦しさの副作用は狭心症とは関係ありません。しばらくすると楽になります。
また、トリプタン製剤の吐き気防止のため、ナウゼリンやプリンペランを併用するケースも多いです。
『吐き気止め薬ナウゼリン錠・OD錠(ドンペリドン)の効能効果、副作用、市販』
トリプタン製剤(偏頭痛薬)の併用
トリプタン製剤を飲ん後は、一定時間あける必要があります。
- イミグラン注射を使った後
→1時間以上間隔をあける - イミグラン錠/点鼻、マクサルト、レルパックス、ゾーミッグを使った後
→2時間以上間隔をあける - アマージを飲んだ後
→4時間以上間隔をあける
さらに、トリプタン製剤(偏頭痛薬)の併用は行われていません。
トリプタン製剤の効果を比較するために、別のトリプタン製剤に切り替える場合は、24時間以上間隔をあけてから切り替えます。
トリプタン製剤の連用は、薬物乱用頭痛を起こすからです。
『頭痛薬を飲みすぎると効かない治らない!薬物乱用頭痛の恐怖と治療』
トリプタン製剤の市販はない
市販してほしい薬の上位にはトリプタン製剤があります。
しかし、トリプタン製剤は次の理由で市販はできません。
- その頭痛が偏頭痛かどうかを判断できるのが医師のみである
- トリプタン製剤は使い方をまちがえると頭痛を悪化させる(薬物乱用頭痛)
- トリプタン製剤は副作用で危険な状態になりやすい
- トリプタン製剤が市販されたとしても、価格がとてつもなく高価になるため、購入できる方は少数
『頭痛持ち? 治らない? 頻度が高い? それは偏頭痛かも 主な症状と原因』
5種類のトリプタン製剤一覧
添付文書、インタビューフォームを参考に作成
トリプタン製剤 (偏頭痛薬) |
イミグラン錠50 | イミグラン点鼻20 | イミグランキット皮下注3mg |
---|---|---|---|
主成分 | スマトリプタン | ||
偏頭痛改善率 | 4時間後:71% | 2時間後:63% | 1時間後:94% |
群発頭痛改善率 | – | – | 0.5時間後:94% |
効果 | 偏頭痛 | 偏頭痛 | 偏頭痛 群発頭痛 |
1回用量 | 1~2錠 | 1本 | 1キット |
1日最高用量 | 4錠 | 2本 | 2キット |
服用間隔 | 2時間以上 | 1時間以上 | |
主な副作用 | 吐気 | ||
眠気 | |||
– | 鼻から喉の違和感 | 注射の痛み | |
最高血中濃度到達時間 | 1.8~2時間 | 1.3時間 | 0.18時間 |
消失半減期 | 2.2~2.4時間 | 1.9時間 | 1.8時間 |
禁忌 | クリアミン | ||
ジヒデルゴット | |||
メテルギン |
トリプタン製剤 (偏頭痛薬) |
イミグラン | ゾーミッグ | レルパックス | マクサルト | アマージ2.5 |
---|---|---|---|---|---|
主成分 | スマトリプタン | ゾルミトリプタン | エレトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン |
効果 | 偏頭痛 | ||||
偏頭痛改善率 | 2時間後 71% |
2時間後 56% |
2時間後 64% |
2時間後 59% |
4時間後 77% |
1回用量 | 1~2錠 | 1錠 | |||
1日最高用量 | 4錠 | 2錠 | |||
服用間隔 | 2時間以上 | 4時間以上 | |||
主な副作用 | 吐気 | 吐気 | めまい | 喉の渇き | 吐気 |
眠気 | めまい | 眠気 | 眠気 | 眠気 | |
– | – | 吐気 | 吐気 | – | |
最高血中濃度到達時間 | 1.8~2時間 | 3時間 | 1時間 | 1~1.3時間 | 2.4~2.7時間 |
消失半減期 | 2.2~2.4時間 | 2.4時間 | 3.2時間 | 1.6~1.7時間 | 5.1~5.4時間 |
禁忌 | クリアミン | ||||
ジヒデルゴット | |||||
メテルギン | |||||
– | – | リトナビル | インデラル | – | |
– | – | クリキシバン | – | – | |
– | – | ビラセプト | – | – |
まとめ
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- トリプタン製剤は効果の個人差が大きく、相性の良い偏頭痛薬を求めて何種類か試すことも多い
- 偏頭痛の原因のひとつは「セロトニンの異常放出」
- トリプタン製剤は脳にあるセロトニン受容体に働いて、拡張した血管を収縮させて炎症を取る作用がある
- トリプタン製剤は偏頭痛が起こったときにすぐに飲む(予防効果はない)
- イミグランは3種類の製剤(錠剤、点鼻薬、注射薬)がある
- ゾーミッグ、マクサルトは、偏頭痛に速く強い効果が期待できる
- レルパックス、アマージには、偏頭痛の再発を抑制する効果がある
<トリプタン製剤一覧>
トリプタン製剤 | イミグラン | ゾーミッグ | レルパックス | マクサルト | アマージ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
製剤と剤形 | 錠剤 | 点鼻薬 | 注射薬 | 錠剤、RM錠 | 錠剤 | 錠剤、PM錠 | 錠剤 |
主成分 | スマトリプタン | ゾルミトリプタン | エレトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン | ||
群発頭痛 | × | ○ | × | ||||
偏頭痛再発予防 | × | ○ | × | ○ | |||
副作用 | 普通 | 普通 | 強い | 強い | 弱い | 普通 | 弱い |
効果発現速度 | 速い | 速い | 最速 | 普通 | 速い | 速い | 普通 |
持続時間 | 普通 | 短い | 短い | 普通 | 長い | 短い | 長い |
偏頭痛薬の効く、効かないは、かなり個人差があります。
また、今まで普通に効いていたのに急に効かなくなる場合もあり選択が難しいです。
副作用も比較的強く表れるため、自己判断で増量するのは危険です。
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