中等度以上の偏頭痛には、トリプタン製剤と呼ばれる偏頭痛薬が推奨されています。
- イミグラン
- ゾーミッグ
- レルパックス
- マクサルト
- アマージ
偏頭痛はいつ起こるか分からない上に、起こってしまったら吐きそうな痛みをともなうことがあります。
そのため、偏頭痛薬はサッと効いてサッと体から薬が抜けていくタイプが多いです。
しかし、レルパックスとアマージは、他の偏頭痛薬とは違う特徴を持っています。
この特徴を知らない場合、レルパックス、アマージは効かないと判断してしまうことがあります。
今回は、異色の偏頭痛薬レルパックスとアマージにスポットを当てたいと思います。
偏頭痛の正式表記は「片頭痛」です。
偏頭痛薬と薬物乱用頭痛
偏頭痛薬は効果が発現する時間は速いです。そのかわり効果の持続時間は短いです。そのため、偏頭痛薬の効果消失後、偏頭痛が再発することも少なくありません。
偏頭痛薬の連用(何度も飲むこと)は、薬物乱用頭痛の主な原因です。
そのため、偏頭痛薬は飲む間隔が決められています。
- イミグラン注射の使用後は、1時間以上間隔をあける
- イミグラン、マクサルト、レルパックス、ゾーミッグを飲んだ後は、2時間以上間隔をあける
- アマージは4時間以上間隔をあける
また、偏頭痛薬を飲んでも全く効かないという人もいます。偏頭痛薬が全く効かない場合は、偏頭痛薬を続けて飲んではいけません。
頭痛が起こる原因が別にあり、その頭痛は偏頭痛ではない可能性があるからです。
例えば緊張型頭痛の場合、偏頭痛薬は効かないです。
『頭痛薬を飲みすぎると効かない治らない!薬物乱用頭痛の恐怖と治療』
レルパックスとアマージの偏頭痛再発予防効果
レルパックスとアマージに、直接偏頭痛の痛みを抑える効果があることは言うまでもありません。
特にレルパックスは、最大効果到達時間が1時間で、トリプタン製剤の中では最速です。
(最大効果を発揮する時間を推測するには、一般的に最高血中濃度到達時間を使います)
さらにレルパックスとアマージには、偏頭痛の再発を予防する効果があります。
こちらはイミグラン注射の主成分の血中濃度の推移をみたグラフです。
通常の偏頭痛薬はこのようなイメージで、一気に効いてすぐに体から主成分が抜けていきます。
こちらはアマージの主成分の血中濃度の推移をみたグラフです。
レルパックスとアマージは主成分が体の外へ出て行かず、偏頭痛の再発を予防するのです。
『【偏頭痛予防薬の効果と副作用】デパケン、トリプタノール、インデラル、ミグシス、テラナス、セレニカ』
レルパックスとアマージの副作用
レルパックスとアマージで起こりやすい副作用は次のような症状です。
- 圧迫感
- 息苦しさ
- 吐き気
- 眠気
- めまい
圧迫感・息苦しさの副作用は、服用後30分以内に胸・のど・首などで起こりやすく、一般的に「痛い」と表現されます。
レルパックスとアマージなどのトリプタン系の偏頭痛薬は、脳の血管を収縮して頭痛を改善します。
圧迫感、息苦しさの副作用は、血管収縮作用が筋肉にも作用したためと考えられています。
狭心症のような胸の圧迫感(痛み)を感じることがありますが、偏頭痛薬と狭心症は無関係です。
圧迫感、息苦しさがレルパックスとアマージの副作用であれば、しばらくすると楽になります。
楽にならない場合は、レルパックス、アマージの副作用ではなく狭心症が疑われます。
– | レルパックス (エレトリプタン) |
アマージ |
---|---|---|
副作用の頻度 | 28.4% | 14.6% |
(添付文書より)
副作用の種類 | レルパックス (エレトリプタン) |
アマージ |
---|---|---|
めまい | 4.1% | 0.9% |
眠気など | 4.1% | 0.9% |
疲労感・倦怠感 | 2.5% | 0.9% |
悪心嘔吐など | 4.5% | 5.1% |
胸痛など | 1.8% | 1.9% |
(インタビューフォームを編集)
次の項目からは、レルパックスとアマージに分けて解説します。
レルパックスの飲み方
レルパックスは、図の右のような専用ケースに入っている場合がほとんどです。
偏頭痛が起こってから速やかに、レルパックスを1錠服用します。
1回1錠で効果不十分の場合、1回2錠まで増量できます。
レルパックスの1日最大用量は4錠です
レルパックスの効果発現時間と持続時間
レルパックスの血中濃度推移
出典:レルパックスインタビューフォーム
レルパックスの効果発現時間を推測するには、一般的に最高血中濃度到達時間(Tmax)を使います。
- レルパックスの効果はTmaxまで時間がかかりませんが、ひとつの指標として用いられます。
- 効果持続時間を推測するには、消失半減期(t1/2)を使います。
レルパックスの効果持続時間は、消失半減期以上であったり、それ以下であったりしますが、ひとつの指標として用いられます。
消失半減期(薬の効果がなくなるまでの時間)はコチラの記事で解説しています。
『睡眠薬マイスリーの効果発現時間と持続時間(作用時間)はどれくらい?』
レルパックスの最高血中濃度到達時間は約1時間で、トリプタンの中では最速です。
レルパックスの消失半減期は約3.2時間で、トリプタンの中ではやや長めの消失半減期です。
『偏頭痛薬マクサルト、ゾーミッグの効果は最強?副作用と飲み合わせ』
レルパックスとイミグランの偏頭痛改善率の比較
国際頭痛学会では、偏頭痛薬を飲んだ時の頭痛の改善、消失の効果を次のように定義しています。
– | 服用前 | 服用後 |
---|---|---|
改善 | 中等度、重度 | 軽度、なし |
消失 | なし |
頭痛の程度 | 詳細 |
---|---|
重度 | 通常の活動が全くできないほどの強い痛み |
中等度 | 通常の活動が制限される痛み |
軽度 | 通常の活動が制限されない痛み |
なし | 痛みがない |
欧州で行われた臨床試験(二重盲検比較試験)によると、レルパックス1錠でイミグラン2錠分の効果があるようです。
レルパックスの服用2時間後頭痛改善率
ただ、レルパックスは効く方は抜群に効くし、効かない方は効かないようです。
レルパックスを1回2錠に増量しても効かない方には効かないようです。
レルパックス 1錠 |
レルパックス 2錠 |
|
---|---|---|
頭痛改善率 | 64% | 67% |
レルパックス1錠で効かない場合は、他の偏頭痛薬も検討すべきかもしれません。
レルパックスの偏頭痛再発予防効果
レルパックスは、後述するアマージには劣りますが、トリプタンの中ではやや長めの消失半減期で効果が持続します。
他の偏頭痛薬と比較して偏頭痛の同じ日の再発率が低く、副作用の発現率もやや低いです。す。
服用24時間以内の偏頭痛再発率 | |
---|---|
レルパックス 1錠 | 10% |
レルパックス 2錠 | 17% |
レルパックスと食事
レルパックスは、偏頭痛薬の中で唯一食事の影響を受ける薬です。
食後に服用した場合、空腹時服用と比べて最高血中濃度到達時間が延長されるため、効果の発現が遅れる可能性があります。
出典:レルパックスインタビューフォーム
アマージの飲み方
アマージはナラトリプタンを主成分とする、2011年に発売された最も新しい偏頭痛薬です。
そのため、アマージは第三世代のトリプタンといわれる場合もあります。
アマージのメーカーは、イミグランと同じメーカー(グラクソスミスクライン)です。
『偏頭痛薬イミグラン錠、点鼻薬、注射薬の副作用と効果の違い』
偏頭痛が起こってから速やかに、アマージを1錠服用します。
1回1錠で効果が不十分な場合は追加で服用できます。
ただし、前回の服用から4時間以上間隔をあける必要があります。
(他の偏頭痛薬は2時間、イミグラン注射は1時間)
アマージの1日最大用量は2錠です。
アマージの効果発現時間と持続時間
アマージの血中濃度推移
出典:アマージインタビューフォーム
(アマージ1錠は2.5mg)
アマージの最高血中濃度到達時間は、2.4時間~2.7時間です。
アマージの消失半減期は、5.1時間~5.4時間です。
アマージは、ゆっくりと効いて、長く効く特徴があります。
アマージはレルパックス以上に偏頭痛の再発を抑える効果が期待されており、1日に何度も偏頭痛が起こってしまう方や、生理前や生理中の偏頭痛に適した薬といえます。
アマージの偏頭痛改善率(効果)
日本で行われた臨床試験(二重盲検比較試験)の結果では、アマージ服用してから4時間後に77%の頭痛改善が認められました。
アマージ服用4時間後の頭痛改善率
イミグラン錠以外の錠剤の頭痛改善率の指標時間は2時間後ですが、アマージの2時間後の頭痛改善率は不明です。
アマージはジワっと偏頭痛に効いてくることが予測できます。
アマージの偏頭痛再発予防
アマージの消失半減期は5.1時間~5.4時間で、トリプタンの中で最長で、最も効果が持続します。
そのため、他の偏頭痛薬と比較して偏頭痛の同じ日の再発率が低いです。
服用24時間以内の偏頭痛再発率 | |
---|---|
プラセボ | 24% |
アマージ | 12% |
レルパックス、アマージの比較
薬剤名 | レルパックス | アマージ |
---|---|---|
主成分 | エレトリプタン | ナラトリプタン |
ジェネリック | なし | |
効果 | 偏頭痛 | |
頭痛改善率 | 2時間後:64% | 4時間後:77% |
1回用量 | 1~2錠 | 1錠 |
1日最高用量 | 2錠 | 2錠 |
追加投与 | 2時間以上 | 4時間以上 |
主な副作用 | めまい | 吐き気 |
眠気 | 眠気 | |
吐き気 | – | |
Tmax | 1時間 | 2.4~2.7時間 |
t1/2 | 3.2時間 | 5.1~5.4時間 |
禁忌 | クリアミン | |
ジヒデルゴット | ||
メテルギン | ||
リトナビル | – | |
クリキシバン | – | |
ビラセプト | – |
(添付文書、インタビューフォームを参考に作成)
Tmax:最高血中濃度到達時間
t1/2:消失半減期
『【偏頭痛薬比較】5種類のトリプタン製剤の使い分けはこうだ!』
まとめ
- 偏頭痛薬は、効果が発現する時間は速いが、効果の持続時間は短い
- 偏頭痛薬の効果消失後、偏頭痛の再発例は意外と多い
- レルパックスとアマージは他のトリプタンとは違う特徴があり、早々に効かないと判断される場合がある
- レルパックスとアマージは、効果の持続時間が他の偏頭痛薬と比較して長い
- そのため、レルパックスとアマージには、偏頭痛再発予防効果が期待できる
- レルパックスとアマージの主な副作用は、圧迫感、息苦しさ、吐き気、眠気、めまい
- レルパックスは、偏頭痛薬の中で唯一食事の影響を受ける薬
- レルパックスは、増量しても効かない例が意外と多い
偏頭痛薬の効く、効かないは、かなり個人差があります。
また、今まで普通に効いていたのに急に効かなくなる例もあり、選択が難しいです。
副作用も比較的強く表れるため、自己判断での増量等はお控えください。
コメント