口腔カンジダは、口の中のカンジダ菌が異常増殖して起こる病気です。
カンジダ菌が口の中のみで増殖しているだけであれば、ただの口腔カンジダで済みますが、胃腸、血液中、肺へ入った場合は全身性の真菌感染症になるため、口腔カンジダ薬でしっかりと治療しなくてはなりません。
現在、口腔カンジダに使われている主な口腔カンジダ薬は3種類です。
- フロリードゲル経口用(ミコナゾール)
- イトリゾール内用液(イトラコナゾール)
- ファンギゾンシロップ(アムホテリシンB)
1.2はアゾール系抗真菌薬で、3はポリエンマクロライド系抗真菌性抗生物質です。
口腔カンジダは高齢者が発症しやすいため、塗って飲んで効くフロリードゲルがよく使われていますが、フロリードゲルやイトリゾールは併用禁忌が多いです。
そのようなときに都合のいいカンジダ薬がファンギゾンシロップです。
ただ、ファンギゾンシロップは使い方と取り扱いがかなり面倒です。
口腔カンジダの原因
カンジダ菌はカビ(真菌)の一種です。
カンジダ菌はある一定量を保って口腔内で他の菌と共存しています。
しかし、次のような条件がそろうと菌のバランスが崩れ、カンジダ菌が異常増殖して口腔カンジダを発症します。
- ステロイド吸入薬(喘息薬)の使用
→吸入後のうがいで予防できる - 口腔乾燥(唾液量の減少)
唾液量が減ると、カンジダ菌の量は増える
→うがいで口腔乾燥を抑えて予防できる - 免疫力の低下(加齢など)
- 義歯(入れ歯)装着
- 抗生物質の長期服用
口腔カンジダの症状
口腔カンジダの自覚症状は口内炎のような痛みです。
- 舌のピリピリ感
- 口の中の違和感
口内炎のように何かに触れたりしたときに痛みが走ります。また、口腔カンジダで味覚障害を起こすこともあります。
見た感じでは、舌や頬などの口腔粘膜に白い苔(こけ)のようなものが付着します。
この白い苔は白苔(はくたい)と呼ばれ、ティッシュやガーゼなどで取り除けますが、無理にはがすと痛みが増したり出血したりします。
口腔カンジダは口内炎薬で悪化
口腔カンジダは口内炎とまちがえやすい病気です。
まちがって口内炎薬(ケナログ、アフタゾロン、デキサメタゾンなど)を塗ると、口腔カンジダは悪化します。
なぜなら、カンジダはステロイド原則禁忌(使ってはいけない)であり、ケナログ、アフタゾロン、デキサメタゾンの主成分はステロイドだからです。
『アフタゾロン(デキサルチン)がカンジダ/ヘルペスに効かない理由』
口内炎薬は市販も多く発売され、簡単に手に入るため使用には注意が必要です。
口内炎薬を使っても炎症が治まらないときや悪化するときは、口内炎ではなく口腔カンジダなのかもしれません。
ファンギゾンシロップの味はマズい
ファンギゾンシロップはアムホテリシンBを主成分とするポリエンマクロライド系抗真菌性抗生物質です。
ファンギゾンシロップは飲み薬ですが、とんでもない味がするため嫌われています。(臭いも悪い)
色は絵具を溶かしたかのような真オレンジで、何に混ぜても味と色は隠せません。
ファンギゾンシロップの使い方
ファンギゾンシロップは希釈して飲み薬として使うのが本来の使い方です。
しかし、希釈しても味はほとんど変わらず、飲む量が増えるだけでたいへん苦痛です。
そのため、現在ではファンギゾンシロップは希釈してうがい薬として使うケースがほとんどです。
また、歯科ではファンギゾンシロップ(もしくはハリゾンシロップ)は歯周病治療で使われるケースもあります。
使い方は、希釈して歯のブラッシングやうがい薬としてが多いです。
ファンギゾンシロップ希釈うがい薬の作り方
先に解説したとおり、ファンギゾンシロップは味がひどくて飲めません。
ですので、ファンギゾンシロップは、50倍~100倍に希釈してうがい薬として使います。
約50倍希釈であれば、ファンギゾンシロップ10mLを蒸留水約500mL(1本)に加えます。
<処方例>
- ファンギゾンシロップ 10mL
- 蒸留水 500mL
混合
1回20mL、1日3回うがい
室温遮光保存で、50倍希釈液で2週間安定。100倍希釈液で1週間安定しています。
(ただし、ファンギゾンシロップのうがい使用は保険外使用です。保険請求では「うがい」ではなく内服処方しないと返戻されます)
ファンギゾンシロップ希釈うがい薬の使い方
- 作ったファンギゾンシロップ希釈うがい薬を振る
- 約20mLをカップで測り、喉うがいではなく口うがいを30秒程度行う
ファンギゾンシロップのうがい量とうがい時間の根拠はありませんが、ファンギゾンシロップ希釈うがい薬は菌に接触しているときのみ効果を発揮します。
だから、できる限りうがい時間を長くするのが使い方のコツです。
このように、ファンギゾンシロップは使い方と取り扱いがかなり面倒ですので、併用薬が問題なければ、口腔カンジダにはフロリードゲルがよく使われています。
『口腔カンジダ薬フロリードゲル経口用の使い方、効果、副作用、禁忌』
ファンギゾンシロップの効果
85.3%
(ただし最後に内服した場合)
ファンギゾンシロップを使ってから数日で見た目はよくなりますが、ここで治療をやめると口腔カンジダが再発することが多いです。
カビの治療には時間がかかるからです。
このことは、こちらの記事でくわしく解説しています。
『ルリコンの効能効果はパワフル!それでも水虫に効かない6つの理由』
ファンギゾンシロップの副作用
ファンギゾンシロップの副作用は、胃腸系副作用がほとんどです。
主な副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
食欲不振 | 2.3% |
悪心 | 0.8% |
下痢 | 0.6% |
嘔吐 | 0.4% |
食欲不振や悪心の副作用は味が原因でしょう。
うがい薬としてファンギゾンシロップを使うならば、このような副作用は発生しません。
『口内炎に効く!アフタゾロン口腔用軟膏(デキサルチン)の使い方』
まとめ
- 口腔カンジダの原因はカンジダ菌の異常増殖。
- 口腔カンジダの自覚症状は口の中の痛みや味覚障害。
- 口腔カンジダに口内炎薬(ケナログ、アフタゾロン、デキサメタゾン)を塗ると悪化する。
- ファンギゾンシロップは飲み薬であるが、希釈してうがい薬として使う場合がほとんど。
- その理由は、ファンギゾンシロップの味が悪すぎるから。
- ファンギゾンシロップ希釈うがい薬はできるだけ長い時間行う。
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