鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンを作るのに必要な栄養素のひとつです。
ヘモグロビンは肺で取り込んだ酸素を全身に運んでいます。鉄分が不足すると、ヘモグロビンの合成ができなくなり酸素不足を起こし、貧血状態になります。
食事摂取基準(2015年)によると、1日の食事からの鉄の推奨摂取量は次の通りで、妊娠女性の鉄必要量が多いことがわかります。
- 成人男性:7.0mg
- 成人女性:10.5mg(月経あり)
- 妊娠前期:8.5~9.0mg
- 妊娠中後期:21~21.5mg
- 授乳期:8.5~9.0mg
フェロミアは、そのような鉄分不足で起こる貧血症状を改善します。
フェロミアの飲み始めると意外にも効果はすぐに表れますが、鉄欠乏性貧血の症状がなくなったからといって止めてはいけません。
なぜなら、[症状の消失=治療終了]ではないからです。
鉄欠乏性貧血とは
貧血とは、血液中の赤血球の数やヘモグロビン量が少ない状況が続き、酸素が不足した状態をいいます。そして、鉄分不足によって起こる貧血が鉄欠乏性貧血です。
赤血球に含まれるヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ送っています。
ヘモグロビンの合成に必要な栄養素は、鉄、ビタミンB12、葉酸などで、妊娠中はこれらの栄養素の需要が増大します。
貧血の種類 | 主な原因 |
---|---|
鉄欠乏性貧血 葉酸欠乏性貧血 悪性貧血 |
赤血球を作る材料がなくなる |
再生不良性貧血 | 赤血球が作れなくなる |
溶血性貧血 | 赤血球が壊れやすくなる |
出血性貧血 (多量出血) |
赤血球が減る |
『フォリアミンは妊婦の葉酸サプリの代わりになる?いつからいつまで?』
これらの栄養素が不足すると、ヘモグロビンが合成できなくなり貧血を起こします。
鉄欠乏性貧血薬フェロミア
フェロミアはクエン酸第一鉄を主成分とする鉄欠乏性貧血薬です。
鉄イオンは2価と3価がありますが、吸収されやすいのは2価の鉄イオンです。
- 2価の鉄イオン(Fe2+)
フェロミア、フェログラデュメット - 3価の鉄イオン(Fe3+)
インクレミンシロップ
現在、大人にはフェロミア、子供にはインクレミンがよく使われています。
『インクレミンシロップは赤ちゃんと子供の鉄欠乏性貧血に大活躍!』
フェロミアは吸収がいい反面、吐き気・胃痛などの副作用が飲み始めに出やすく、続けるのが難しくなるケースもあります。
そのようなときは、副作用がマイルドなフェログラデュメットや注射薬(フェジン)を使うパターンが多いです。
『フェログラデュメットとフェロミアの違い 鉄剤の使い分けはこれでOK!』
フェロミアの効果
鉄欠乏性貧血を起こすと次のような症状が表れ、フェロミアはそのような貧血症状を改善します。
- 爪が割れやすくなる
- 口のはしや舌が荒れる
- 肌がカサカサする
- 頭痛
- めまい
<全身性貧血症状>
- 免疫力低下
- すぐに疲れる(易疲労)
- 動悸・息切れ
そして、フェロミアはヘモグロビン量、血清鉄量、貯蔵鉄量を増やして鉄欠乏性貧血状態を改善します。(用語の解説は記事後半「血清鉄と貯蔵鉄の違い」)
フェロミアの効果はいつ表れる?
フェロミアの飲み始めると、意外にも効果はすぐに表れます。
(疲れる、動悸・息切れなどの鉄欠乏性貧血の全身症状は早く回復する)
とはいえ、鉄欠乏性貧血の症状がなくなったからといって、すぐに止めてはいけません。
なぜなら、鉄欠乏性貧血の症状がなくなっただけで、鉄欠乏性貧血の治療が終わったわけではないからです。
鉄分のストックである貯蔵鉄も正常にならないことには、鉄欠乏性貧血を再発するリスクが残ります。
- 血清鉄正常化の目安:1~2カ月
- 貯蔵鉄正常化の目安:約6カ月
血清鉄と貯蔵鉄の違い
鉄分の一時的な鉄分不足を補うため、余った鉄分は肝臓などに貯蔵鉄として一定量ストックしています。
鉄分が不足してくると、貯蔵鉄が減っていき貧血ではない鉄欠乏状態になります。
(血清フェリチンの低下)
貯蔵鉄を使い果たして血中の鉄分(血清鉄)が減ると、貧血状態となり貧血症状が少しずつ表れます。
<臨床検査値の目安>
ヘモグロビン | 血清フェリチン | |
貧血でない鉄欠乏状態 | 12g/dL以上 | 12ng/mL以下 |
鉄欠乏性貧血 | 12g/dL以下 |
フェロミアの飲み方(用法用量)
大人は2~4錠を1日1回から2回に分けて食後に飲む。これが標準的なフェロミアの飲み方です。
ですので、たいてい1回1錠から2錠を1日1回から2回飲むことになります。
鉄の吸収をよくするために、あえて「食前」に飲む飲み方もありますが、吐き気や胃痛などの副作用が起こって飲み続けられなくなるかもしれません。
(フェロミアの健康保険の用法は「食後」)
副作用がツライときは、1回1錠に減量したり1日2回にわける飲み方に変更すると、副作用は軽くなるかもしれません。
『フェロミアのツライ副作用 便秘、下痢、吐き気、胃痛はいつまで続くの?』
また、フェロミア(鉄剤)を飲むとビックリするくらい便の色が黒くなります。これは副作用ではありませんので安心してください。くわしくはコチラの記事で解説しています。
フェロミアとシナールの飲み合わせ
フェロミアとシナール(ビタミンC)の併用もよく行われます。
『シナール(ビタミンC)の美白効果でシミ、紫外線(日焼け)対策』
鉄剤はビタミンCと併用すると吸収率がよくなるからです。
しかし、フェロミアとシナール(ビタミンC)を併用しても、鉄欠乏製貧血症状の改善効果は変わらないというデータもあります。
また、フェロミアは相性の悪い薬(飲み合わせがよくない薬)があります。
特定の抗生物質、マグミット(酸化マグネシウム)などがその例です。
これらの飲み合わせがよくない薬とは間隔をあけて飲む必要があります。
『鉄剤(フェロミア/フェログラデュメット/インクレミン)は飲み合わせに注意!』
まとめ
- 鉄分不足によって起こる貧血を鉄欠乏性貧血という
- フェロミアはクエン酸第一鉄を主成分とする鉄欠乏性貧血薬であり、他の鉄剤と比較すると鉄の吸収がよい
- その反面、吐き気、胃痛などの胃腸系副作用が起こりやすい
- フェロミアの飲み始めると、貧血症状への効果はすぐに表れるがそこで止めない
- フェロミアの治療期間の目安は6カ月
- 「1回1錠から2錠を1日1回から2回飲む」これが標準的なフェロミアの飲み方
- フェロミアと飲み合わせのよくない薬は間隔をあけて飲む
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