他の病気が原因で起こっている頭痛を除くと、頭痛持ちの方の頭痛は、次の4種類のどれかであることが多いです。
頭痛の種類 | 有病率 |
---|---|
偏頭痛 | 8.4% |
緊張型頭痛 | 20~25% |
群発頭痛 | 不明 (0.1%~0.4%?) |
薬物乱用頭痛 | 不明 |
有病率とは、一時点における単位人口に対する患者の割合のことです。有病率が高い病気は、発病する頻度が高い病気です。
群発頭痛は比較的有病率は低い(不明)ですが、頭痛発作が起こると猛烈な痛みが起こるため、日常生活に支障をきたします。
※偏頭痛の正式名称は「片頭痛」です。
群発頭痛とは
群発頭痛は、偏頭痛や緊張型頭痛と比較すると有病率が少ない(0.1%~0.4%程度?)ため、聞き慣れないかもしれません。
一度、頭痛が起こると、一定期間に集中して毎日のように決まった時間(夜から睡眠時が多い)に頭痛を起こすようになり、痛みも群発地震のように猛烈であることから、群発頭痛と名付けられました。
睡眠中に頭痛が発症する場合は、睡眠に恐怖を感じるようになります。
群発頭痛は働き盛りの20~40歳代の男性に起こりやすく、性別では、男性が女性より3~7倍程度有病率が高いです。
群発頭痛の痛みの原因
群発頭痛の根本的な原因はまだわかっていません。数種の仮説があります。
- 視床下部(ししょうかぶ)に原因があるという説
(群発頭痛の頭痛時、視床下部が活性化していることが証明されている) - 三叉神経(さんさしんけい)と血管の関連性が原因という説
- 三叉神経の過剰興奮が原因という説
- 内頸動脈(目の後ろにある)の拡張が原因という説
群発頭痛の群発期
頭痛が群発頭痛である場合、一度頭痛が起こると、ある一定期間決まった時間に頭痛が起こるようになります。
ある一定期間を群発期と呼びます。
群発期はたいてい2~4週間ですが、数カ月続く場合もあります。(反復性群発頭痛)
群発期を過ぎると、頭痛は起こらなくなります。(寛解期)
群発期の頭痛を引き起こす原因
群発頭痛の群発期に頭痛を起こす原因はアルコールで、飲酒後1時間くらいで頭痛が現れやすいといわれています。
アルコールの量には関係なく、群発期の飲酒はほぼ100%起こるようです。
ただ、なぜ飲酒が頭痛を誘発する原因になるのかはよくわかりません。おそらく、アルコールが血管や神経を刺激するのでしょう。
群発頭痛の症状
群発頭痛の頭痛
群発頭痛の頭痛は、持続時間は15分~3時間程度と比較的短いですが、「目をえぐられるような」「ハンマーで頭を叩かれたような」と表現されるくらいの激しい痛みの症状が特徴です。
群発頭痛の頭痛以外の症状
群発頭痛は、頭痛以外に次のような症状をともなうことが多いです。
- 目の充血、涙
- 鼻水、鼻づまり
- まぶたの腫れ
- 顔の汗
- 興奮、落ち着きのなさ
群発頭痛と偏頭痛、緊張型頭痛の違い
偏頭痛、緊張型頭痛と群発頭痛を比較すると、群発頭痛の特徴が見えてきます。
– | 偏頭痛 | 緊張型頭痛 | 群発頭痛 |
---|---|---|---|
有病率 | 8.4% | 20~25% | 不明(0.1~0.4%?) |
男女差 | 女性 | 女性 | 男性 |
発生周期 | 女性の場合は生理 | ない | 夜~睡眠時 |
痛みの程度 | 中程度~重度 | 軽度~中程度 | 重度以上 |
痛みの持続時間 | 4~72時間 | 30分~7日 | 15分~3時間 |
痛みの場所 | 頭の片側が多い | 頭全体 | 目の奥、こめかみ |
動作の影響 | 動作で悪化する | 動作で改善する | 関連性が低い |
痛み以外の症状 | 吐き気 | めまい感 | 目の充血・涙 |
光過敏 | 肩こり | 鼻水・鼻つまり | |
音過敏 | 首こり | まぶたの腫れ | |
臭過敏 | – | 興奮 | |
原因(誘因) | 生理 | ストレス | アルコール |
ストレス | 肩こり | – | |
食事 | 首こり | – | |
睡眠 | – | – | |
前兆・予兆 | ○~× | × | × |
群発頭痛の薬
群発頭痛には市販薬は無効です。
医療用の限られた薬のみ、群発頭痛に効果があることがわかっています。
- イミグラン注射薬
- イミグラン点鼻薬
- ゾーミッグ
保険治療で使える群発頭痛の薬は、イミグラン注射のみです。
イミグラン点鼻液やゾーミッグが、群発頭痛にある程度効果があることがわかっていますが、健康保険の適応はありません。
群発頭痛の対処法
群発頭痛の対処法は、主に2種類です。
- 頭痛がおこったときに服用(注射)する群発頭痛薬
- 群発頭痛が起こらないように群発期に服用する群発頭痛予防薬
群発頭痛薬イミグラン注射【皮下自己注射】
イミグラン注射(正式名称:イミグランキット皮下注3mg)は、偏頭痛と群発頭痛の両方に保険適応がある唯一のトリプタンであり、唯一のスマトリプタン注射薬です。
群発頭痛は短時間に猛烈な痛みが起こるため、トリプタンの中で最も速く効く(最高血中濃度到達時間は約18分)イミグラン注射が特に有効です。
イミグラン注射の血中濃度推移
出典:イミグランキット皮下注3mgインタビューフォーム
イミグラン注射の有効率
データの出典:イミグランキット皮下注3mgインタビューフォーム(臨床試験)
群発頭痛が起こったときに、イミグラン注射を腕の外側や太ももの外側に皮下に自己注射します。
イミグラン注射の注射針(26G)は、インスリンの注射針(32G~34G)と比較してやや太いため痛いです。注射による痛みという副作用が起こります。
注射針について
イミグラン注射は室温保存で大丈夫です。
群発頭痛予防薬
群発頭痛の特効薬であるイミグラン注射は非常に値段が高く、1本あたり3000円くらいします。
3割負担の方のイミグラン注射1回の服用コストは約1000円です。
つまり、群発頭痛が起こるたびに約1000円必要になり、経済的負担も強いられます。
一方、群発頭痛予防薬は比較的安く、群発頭痛の頻度や痛みの度合いの軽減効果が期待できます。
- ワソラン(ベラパミル)
- デパケン(バルプロ酸)
- リーマス(炭酸リチウム)
- クリアミン(エルゴタミン製剤)
群発頭痛予防薬は経験的に使用されています。
偏頭痛予防薬についてはこちらの記事
群発頭痛予防薬ワソラン
ワソランはもともとは不整脈や狭心症などに使用されるカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬です。
ワソランは、ベラパミルを主成分とする群発頭痛予防薬としても使用します。
(標準量:ベラパミル360mg/日)
ワソランは、経験的に群発頭痛予防薬として使用されてきましたが、2011年からは適応外使用の保険給付を認めています。(保険が使える)
しかし、なぜワソランに群発頭痛予防効果があるかは、はっきりわかっていません。
まとめ
- 群発頭痛は比較的有病率は低い(不明)ですが、頭痛発作が起こると猛烈な痛みが起こるため、日常生活に支障をきたす
- 群発頭痛には数種の仮説があるが、根本的な原因はまだわからない
- 群発頭痛には、群発期とよばれる一定期間に連続して頭痛を起こす
- 群発頭痛の薬のよる対処法は、群発頭痛薬の服用(注射)もしくは、群発頭痛予防薬の服用
- イミグラン注射が保険適応の唯一の群発頭痛薬。イミグラン点鼻薬やゾーミッグもある程度効果があるようである
- 群発頭痛予防薬はワソランを使うことが多い
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