ドライアイにはヒアレインが使われていきましたが、2010年にジクアスという涙液層を安定させる目薬が開発され、それが主流になりつつあります。
その2年後、ジクアスに近い作用を持つムコスタ点眼液が発売されました。
現在、ジクアス、ムコスタ点眼液がのドライアイ治療のツートップといいたいところですが、ムコスタ点眼液は独特の使用感(副作用)からやや敬遠されているようです。
ムコスタ点眼液は胃薬ムコスタ錠の進化薬
ムコスタ錠の成分レバミピドには胃の粘膜を増やし修復する作用があります。
そのため、ムコスタ錠は解熱鎮痛剤ロキソニンとの併用が多いです。
胃粘液を増加したり、胃粘膜を修復する効果をを目に使用して、ドライアイ目薬とした進化薬がムコスタ点眼液(正式名称:ムコスタ点眼液UD2%)です。
ドライアイの種類
ドライアイは2種類に分けられていました。
- 涙液減少型ドライアイ(涙の量の問題)
- 涙液蒸発亢進型ドライアイ(涙の質の問題)
しかし、最近では第3のドライアイ(BUT短縮型ドライアイ)が注目を集めています。
1.涙液減少型ドライアイ
「まばたき」は涙で目をうるおわせ、目の乾燥を防ぎます。
しかし、涙液減少型ドライアイでは何らかの原因で涙が減り、目の乾燥を防ぐことができなくなっています。
2.涙液蒸発亢進型ドライアイ
涙(涙液層)は3層構造(油層、水層、ムチン層)で目の表面(角膜)の乾燥を防いでいます。
油層は水層の蒸発を防ぎ、ムチンは水層を安定化する働きがあります。
涙液蒸発亢進型ドライアイでは、油層の働きが悪くなり涙が蒸発しやすくなっています。
3.BUT短縮型ドライアイ
BUT(涙液層破壊時間)とは、涙の層ができあがってから破壊されるまでの時間をいいます。
通常、まばたきをすると、涙は目の表面に流れバリア機能を果たしますが、
BUT短縮型ドライアイでは、まばたきをしてから涙の層が短時間で破壊され、バリア機能を果たさなくなります。
つまり、涙は十分に出ているにもかかわらず、目がうるおわないのです。
BUT短縮型ドライアイは、コンタクトレンズ(以下コンタクト)、パソコン、スマホを使う若い世代を中心に広がっています。
ムコスタ点眼液の2つの作用
ドライアイは「目が乾く病気」と考えられていましたが、
現在では、ドライアイは「さまざまな要因により涙液層(目の表面をおおう涙の膜)の安定性が低下する病気」ととらえられています。
ムコスタ点眼液はレバミピドを主成分とする涙液層の安定性を向上させるドライアイ目薬です。
<ムコスタ点眼液の2つの主作用>
- ムチン分泌促進作用
ムチンの分泌を促して、涙を目の表面にとどめてて涙の安定性を改善します。 - 角膜上皮障害改善作用
目の表面を滑らかにして目のバリア機能を改善します。
粘液成分の一種です。
ムチンの分泌が減ると、涙の質が悪化して乾きやすい涙になるなど、ムチンは涙の安定性に重要な役割を果たしていることがわかってきています。
もうひとつの涙液層を安定化させるドライアイ目薬ジクアス
ムコスタ点眼液の使い方
ムコスタは、防腐剤フリーのディスポーザブル目薬(1回使い切りタイプ)です。
保存は目薬の出口を上にする
(レバミピド粒子が分散しにくくなるため)
<ムコスタ点眼液の使い方>
- 1本を縦に切り離す
- ムコスタ点眼液は白い懸濁性目薬ですので、レバミピドが下に沈殿します。
使う前に丸く膨らんだ部分を指ではじいてレバミピドを均一にします
(泡立っても問題ありません)
- 目薬の先端部分をねじると穴があきます
(ひっぱらない) - 両眼に1回1滴、1日4回使います
- 使用後は、苦みなどの副作用軽減のため、目を閉じて目がしらを約5分抑えます
(苦みの副作用は後述「ムコスタ点眼液の副作用」) - 使用後のムコスタ点眼液は保存不可(廃棄)
ムコスタ点眼液はコンタクトしたままOK
目薬は開封後非滅菌状態になり、少しずつ汚染されます。
汚染を抑えるために、通常の目薬には塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が添加されています。
防腐剤を含む目薬はコンタクトを痛める原因になるため、コンタクトをしたまま使えません。
(ハードコンタクトはOK)
一方、ムコスタ点眼液は防腐剤フリーの1回使い切り目薬であるため、コンタクトしたまま使うことができます。
コンタクトしたままOKな使い切り目薬の例
- ヒアレインミニ
- ザジテンUD
- インタールUD
ムコスタ点眼液の主成分レバミピドがコンタクトに吸着することがありますが、コンタクトを痛めたり物性を変化させるわけではないため、特に問題はありません。
念のため、ムコスタ点眼液とコンタクトの吸着についてメーカーに確認したところ、「使用前にコンタクトをはずす必要はない」という返答を得ています。
ただ、ムコスタ点眼液はコンタクトしたまま使用をすすめない医師がいるのも事実です。
ムコスタ点眼液の効果
ムコスタ点眼液は次のようなドライアイ症状に効果があります。
- 目の乾燥感
- 目の痛み
- 目の異物感(ゴロゴロする)
- 目のかすみ(疲れに関係)
ムコスタ点眼液4週間使用後のドライアイ症状スコアの結果
(スコアが下がる→効果がある)
データの出典:ムコスタ点眼液の臨床試験
ムコスタ点眼液のヒアレインの効果の比較
ムコスタ点眼液と元祖ドライアイ目薬ヒアレインの効果を比較してみましょう。
ムコスタ点眼液、ヒアレイン(0.1%)4週間使用後のドライアイ症状スコアの結果
データの出典:ムコスタ点眼液の臨床試験
わずかですが、ムコスタ点眼液はヒアレインより効果が期待できます。(誤差の範囲?)
ムコスタ点眼液の副作用で苦い
ムコスタ点眼液は目薬という内訳の中では副作用頻度が高いです。
(全体で24.3%)
主な内訳は次の通りです。
ムコスタ点眼液の主な副作用
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
苦味 | 15.7% |
刺激感 | 2.5% |
かゆみ | 2.2% |
かすみ (霧視) |
1.2% |
「苦味」と「かすみ」の副作用が出る理由を解説します。
ムコスタ点眼液で苦味が出る理由
ムコスタ錠は普通に飲み込むと何ともありませんが、噛むと苦い薬です。(成分自体が苦い)
ムコスタ点眼液も、使用後に苦味成分が鼻涙管(びるいかん)を通って鼻の奥へ流れるため、苦味を感じます。
苦味を軽減するためには、使った後目を閉じて目がしらを5分くらい抑えます。
ムコスタ点眼液で目がかすむ理由
ムコスタ点眼液は白い懸濁性目薬です。
その白さのせいで、使用後5分くらい物が白くかすんで見えます。
(私も試用してみたところ、目の前が真っ白になりました)
周りの方からは、白い涙を流しているように見えるため、野外での使用は勇気がいります。
まとめ
- 最近では、第3のドライアイ(BUT短縮型ドライアイ)がコンタクト、パソコン、スマホを使う若い世代を中心に広がっている
- ドライアイは、さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する病気
- ムコスタは涙液層の安定性を向上させるドライアイ目薬
- ムコスタはドライアイ症状(目の乾燥、痛み、異物感、かすみ)に効果がある
- ムコスタと同様に、涙液層を安定化させるドライアイ目薬にジクアスがある
- ムコスタは防腐剤フリーであるため、コンタクトしたまま使える
- 苦み軽減のため、ムコスタ使用後は目を閉じて目がしらを約5分抑える
- ムコスタは、その白さのせいで使用後5分くらい物が白くかすんで見える
- ジクアス、ムコスタがドライアイ治療の2強といいたいところだが、ムコスタは独特の使用感(副作用)からやや敬遠されている
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