2015年4月に兵庫県で自転車条例が改定されてから、近畿圏を中心に自転車保険が広がりつつあります。
- 2016年7月
大阪府 自転車条例 - 2016年10月
滋賀県 自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例
兵庫、大阪、滋賀の自転車条例は、自転車事故の備えと、被害者の救済を図るための保険に加入しなければならないことで共通していますが、
必ずしも自転車保険に加入なければならないわけではありません。
条例の内容を確認すると、個人賠償責任保険でも十分で、むしろ自転車保険より個人賠償責任保険の方がおすすめです。
自転車条例が施行された背景を確認して、おすすめの個人賠償責任保険を解説します。
自転車事故に多額の賠償金
自転車乗車中に車に突っ込まれる事故も深刻ですが、自転車が高齢者、子供、赤ちゃんに突っ込む事故も深刻です。
ただの自転車事故では済まされなくなってきているのです。
自転車事故の判例
判例1(2005年横浜地裁判決)
当時高校生だった子供が、自転車無灯火で携帯電話を操作しながら自転車を運転。
女性が追突され、手足にしびれが残って歩行困難になり職も失った。
加害者(判決時19歳)に約5000万円の賠償を命じた。
判例2(2015年神戸地裁判決)
当時、小学校5年生だった子供が乗った自転車と歩行者との衝突。
少年の母親に約9500万円の賠償を命じた。
自転車条例
自転車保険が義務化されたと騒がれていますが、自転車保険の義務化は自転車保険の加入が絶対条件ではありません。
自転車保険の義務化ではなく、正しくは自転車保険等の義務化です。
自転車保険等というのは、自転車保険に準じる保険(自転車損害賠償保険など)を指します。
自転車条例の保険加入の記載は次の通りです。
自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(その自転車の利用に係る事故により生じた他人の生命又は身体の損害を填補することができる保険又は共済をいう)に加入しなければならない。
兵庫県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例(第13条抜粋)
自転車保険未加入でも罰則はなし
条例で自転車保険をあおっておきながら、自転車保険に入っていなくても罰則はありません。
自転車には車検はないので仕方ないかもしれませんが、これでは自転車保険の加入は進まないでしょう。
被害者の救済のためにも、罰則を設けてもらいたいものです。
自転車保険とは
自転車保険は、主に3つの保険から成り立っています。
- 賠償責任保険
- 死亡保険
- 傷害保険
自転車保険の賠償責任保険
自転車保険の賠償責任保険は、先述のような他人に対する賠償責任に備えるための保険です。
民法 第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
自転車保険の死亡保険
自転車乗車中の事故、死亡や後遺障害を補償するための保険です。
自転車保険の傷害保険
自転車乗車中の事故、怪我をしてしまっときの通院代、入院費用、手術費用などを補償するための保険です。
自転車保険の不要部分
条例には損害賠償保険についての記載がありますが、死亡保険と傷害保険については記載がなく不要です。
自転車保険をおすすめしない理由1
自転車保険の死亡保険は100万円~500万円程度で、いざというとき頼りになりません。
通常の生命保険を見直しをおすすめします。
自転車保険をおすすめしない理由2
自転車保険の傷害保険には通院代を補償するタイプもありますが、通院でかかる費用は健康保険でも7割程度は補償されます。
入院時の費用は医療保険に加入しておけば、自転車の事故以外の病気にも対応できます。
(自転車保険の傷害保険は自転車事故のみ対応)
自転車保険をおすすめしない理由3
自転車保険は、賠償責任保険、死亡保険、傷害保険の3つの保険のパック商品のため保険料が割高で、補償機能が中途半端(おすすめしない理由1.2参照)です。
園児総合保険(子供保険)も、保険料が割高のためおすすめしません
自転車保険よりも個人賠償責任保険をおすすめします。
個人賠償責任保険とは
- 自転車で他人に追突して怪我を負わせた、死亡させた
- 子供が、幼稚園でケンカをして怪我を負わせてしまった
- 他人の車に傷をつけてしまった(自動車事故以外)
個人賠償責任保険は、このような日常生活で起こりそうな、他人の生命や所有物に対する賠償責任に備えるための保険で、自転車事故以外の賠償責任問題にも対応しています。
法律上の損害賠償責任だけではなく、慰謝料まで請求されるようなこともあります。
裁判になった場合、弁護士費用も発生します。
これらの費用が、個人賠償責任保険の支払い対象です。
個人賠償責任保険の加入方法
個人賠償責任保険は原則単独では加入できません。何かの保険の特約などで加入します。
- 火災保険の個人賠償責任特約
- 自動車保険の特約
- クレジットカードの会員プラン
- JAFの個人賠償責任補償プラン
- 自転車保険(自転車の事故にかかわる個人賠償のみ)
個人賠償責任保険の保険料は、支払い方法や保険会社によって違いますが、年間実質1,000円~6,000円で、賠償額は1億円からが多いです。
安い保険料で多額の補償が受けられるのも、個人賠償責任保険をおすすめする理由のひとつです。
家の購入と同時期に、子供の出産や入学がある家庭には、火災保険の特約として個人賠償責任保険に入ることをおすすめします。
個人賠償責任保険の対象者
- 契約者本人
- 配偶者(妻・夫)
- 同居の親族(子供・祖父母・義父母など)
- 生計を一にする別居の子供(仕送り中の大学生など)
世帯主が個人賠償責任保険に加入すれば、子供を含めてほとんどの家族が個人賠償責任保険の対象です。
また、認知症列車事故訴訟(愛知県)の影響を受け、三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、個人賠償責任保険の対象者を拡大しました。
新特約では、従来特約の補償内容に加えて、誤って線路に立ち入るなどして電車を止めてしまった場合に生じる賠償責任 (鉄道会社から請求される振替輸送費用など)を補償します。
【業界初】新型「個人賠償特約」の販売開始について 抜粋
認知症の方が線路内に入り列車にはねられ死亡するという事故がありました。
JR東海は運行遅延の損害賠償金約720万円を遺族に求める裁判を起こした。
2016年3月、最高裁はJR東海の請求を棄却した。
まとめ
- 自転車事故で、約9500万円の高額賠償を命じた判例がある
- 自転車事故による被害者保護のため、近畿圏を中心に自転車保険が広がりつつある)
- 兵庫、大阪、滋賀の自転車条例では必ずしも自転車保険の加入が必須ではない
- 自転車を利用するときは、賠償責任保険などに加入していれば問題ない
- 個人賠償責任保険は、自転車保険の不必要部分(死亡保険、傷害保険)がないため、年間1000円~6000円程度で割安
- 個人賠償責任保険は、日常生活で起こりそうな、他人の生命や所有物に対する賠償責任に備えるため保険で、自転車事故以外にも対応している(だからおすすめ)
- 個人賠償責任保険は原則単独では加入できず、何かの保険の特約などで加入する
- 世帯主が個人賠償責任保険に加入すれば、子供を含めてほとんどの家族が個人賠償責任保険の対象者になる
- さらに、一部の損保会社は対象者を拡大している
コメント