水疱瘡は「水痘・帯状疱疹ウイルス」の感染が原因で発症する病気で、重症化しない限り自然治癒する病気です。
しかし、抗ヘルペスウイルス薬などの治療薬を使えば、早期に水疱瘡の皮膚症状である水ぶくれの広がりを抑えたり、かゆみを抑えられます。
主に水疱瘡の治療に使用される薬は主に3種類です
- 抗ヘルペスウイルス薬(飲み薬)
→ウイルスの感染増殖抑制と治療 - カチリ(塗り薬)
→かゆみの治療 - 抗性物質(塗り薬)
→とびひなどの感染予防と治療
水疱瘡薬をひとつずつ解説します。
水疱瘡薬1 抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬 (バルトレックス、ゾビラックス)
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バルトレックスとゾビラックスの違い
水疱瘡薬で使用される飲み薬は、ゾビラックス顆粒やバルトレックス顆粒という抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬です。
バルトレックスはゾビラックスの欠点を改良したプロドラッグで、アシクロビルに変換されて抗ヘルペスウイルス作用を発現します。
1日の服用回数が違うだけで、薬の効果は同等です。
バルトレックス、ゾビラックスの飲み方
バルトレックス(ゾビラックス)は、服用が速ければ水疱瘡の水ぶくれ症状が広がるのを抑えてくれます。
水疱瘡の飲み薬は、赤いブツブツができてから2日~3日以内にを開始するのが望ましいです。
水疱瘡飲み薬 | ゾビラックス顆粒 | バルトレックス顆粒 |
---|---|---|
成分名 | アシクロビル | バラシクロビル |
1日服用回数 | 4回 | 3回 |
1kg体重当たりの 1回用量 |
0.05g | |
1回最高用量 | 2g | |
服用日数の目安 | 5日間 |
水疱瘡の飲み薬は、水ぶくれがかさぶたになってきても、途中で止めないで飲みきってください。
水疱瘡飲み薬はウイルスを死滅できるか?
バルトレックス顆粒(ゾビラックス顆粒)はウイルスの増殖を抑えるだけで、神経の中のウイルスまで届きません。
残念ながら、水疱瘡の飲み薬バルトレックス顆粒(ゾビラックス顆粒)で、全てのヘルペスウイルスは死滅しません。
水疱瘡が治った後も、水痘・帯状疱疹ウイルスの一部は知覚神経の奥にひそみます。
知覚神経にひそんだ水疱瘡ウイルスの再活動で起こる病気が帯状疱疹です。
水疱瘡と帯状疱疹の原因ウイルスは同じですので、帯状疱疹にもバルトレックスなどの抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬が有効です。
水疱瘡薬2 塗り薬カチリ
カチリは、フェノール亜鉛華リニメントを主成分とするの塗り薬です。
フェノール亜鉛華リニメント(カチリ)は3種類の名前で商品化されています。
- カチリ「ホエイ」
- カチリ「ヨシダ」
- フェノール亜鉛華リニメント
塗り薬カチリと水疱瘡の微妙な関係
あせもに使う体が真っ白になる塗り薬がありませんでしたか?
あれが「カチリ」です。
カチリは水疱瘡薬ではなく、もともとはあせも、蕁麻疹、虫刺されに使う塗り薬です。
カチリを水疱瘡薬として使用するときは、3つの作用を期待して使います。
- かゆみを抑える作用
- 消毒作用
- 皮膚を保護する作用
(水ぶくれがやぶれにくくなる)
虫さされや蕁麻疹には他にいい薬があるため、カチリは水疱瘡やあせもくらいにしか使われなくなってきています。
カチリは水疱瘡の保険適応がないため、カチリを水疱瘡の塗り薬として使わない医師も増えています。
虫さされや蕁麻疹のいい薬
(ステロイド軟膏と抗生物質の配合剤)
塗り薬カチリの水疱瘡薬としての塗り方、使い方
カチリを水疱瘡薬として使うとき、塗る回数は1日2~3回で十分です。
カチリは塗ると固まって真っ白になりますが、お風呂以外では洗い流す必要はありません。
薬局ではカチリは軟膏つぼに入れて渡されます。
使っている間に少しずつ赤暗い色になる場合がありますが、そのまま使えます。
カチリは置いておくと、透明の部分と白い部分が分離してきます。
(カチリは水平にして容器を開けないと、分離した透明の液体がこぼれる)
使用前に綿棒などでかきまぜて、そのまま水疱瘡の部分だけにカチリを塗ります。
カチリは傷ついたところには塗ってはいけません。
傷ついたところには、次に解説する抗生物質の塗り薬を塗ります。
カチリを塗った部分は白く固まり、何とも言えない変な臭い(フェノール亜鉛華リニメントのフェノール臭)がします。
カチリが固まる前に、服などに触れると白く汚れます。
水疱瘡にカチリはいつまで使う?
水疱瘡にカチリをいつまで使うか?
よく受ける質問のひとつです。
明確な「いつまで?」の答えはありませんが、
私は、水疱瘡がかさぶたになるまでカチリを続けるべきだと考えています。
- カチリは水ぶくれをやぶれにくくする効果を期待して処方?
- かさぶたができれば、かゆみはたいてい治まる
水ぶくれ状態のところにカチリを塗るときは、つぶさないように注意して塗ります
(水ぶくれの個数によっては気を使います)
水疱瘡は全身にまんべんなく皮膚症状が出ますので、カチリを使いだすと全身カチリだらけでまっ白になります。
水疱瘡薬3 抗生物質の塗り薬 フシジンレオ、テラマイシン
水疱瘡は、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が原因でしたね。
抗生物質は細菌に効果がある薬のためウイルスには無効です。
しかし、水疱瘡に抗生物質の塗り薬を使う場合があります。
水疱瘡に抗生物質の塗り薬を使う理由
水疱瘡のかゆみがひどい場合、爪を短く切っておきます。
そうしないと、かきむしった傷口がとびひになる場合があります。
とびひは、主に黄色ブドウ球菌の感染で原因で起こります。
黄色ブドウ球菌の細菌感染の予防や治療が目的で、抗生物質の塗り薬(フシジンレオ軟膏、テラマイシン軟膏など)が使われることがあります。
抗生物質の塗り薬(フシジンレオ、テラマイシン)の使い方
抗生物質の塗り薬の使い方は簡単です。
1日2~3回水疱瘡の部分や傷の部分だけにフシジンレオ軟膏やテラマイシン軟膏などを塗ります。
とびひのような化膿部分が広がってくるようであれば、フシジンレオ軟膏(テラマイシン軟膏)の効果が不十分であるため、塗り薬の変更や抗生物質飲み薬の追加などが必要なときもあります。
まとめ
- 水疱瘡は自然治癒する病気ではあるが、重症化をおさえるため薬を使うこともある
- 主な水疱瘡薬は3種類
・抗ヘルペスウイルス薬(飲み薬)
・カチリ(塗り薬)
・抗生物質(塗り薬) - 抗ヘルペスウイルス薬は服用が早ければ、水ぶくれ症状が広がるの抑える効果がある
- かゆみがひどいときは、カチリを使うことがある。
ただし、傷がある場所にはカチリは使っていはいけない - 傷があるところや、かきむしったところには、抗生物質の塗り薬が使われることがある
- 水疱瘡の皮膚症状はパターン化していて、赤いブツブツ→みずぶくれ→かさぶたの順で治っていく
- 水疱瘡が治った後も、ウイルスは体に残る。
ウイルスが再活動を始めると「帯状疱疹」を発症する
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