認知症薬を作用別に分類すると2種類です。
①脳内のアセチルコリンの濃度を増やす認知症薬
- アリセプト
- レミニール
- イクセロンパッチとリバスタッチパッチ
(イクセロンパッチとリバスタッチパッチは商品名が違うだけで、同じ成分の薬)
②過剰なグルタミン酸を抑えて、脳神経の損傷を抑える認知症薬
- メマリー
現在、認知症薬は4種類が販売されていますが、認知症が完治する薬はいまだに開発されていません。
認知症薬は、認知症の進行を遅らせる効果のみが期待できます。
そのため「認知症薬は効かない、効果なし、むしろ悪化する」という方もいますが、そんなことはありません。
薬の効果が目に見えないため効果が分かりにくいだけです。
認知症薬は効果なしという誤解から解いて、認知症薬一覧を解説します。
「認知症薬は効果なし、悪化する」と言われる理由
理由1: 認知症薬の添付文書の記載
効能又は効果/用法及び用量
アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症の症状の進行抑制
アリセプト添付文書
効能効果に認知症の症状の進行抑制としっかり記載されているため、認知症薬が根本的治療薬ではないことが読み取れます。
これを拡大解釈して「認知症薬は効果なし」と言ってしまう方がいます。
理由2: 認知症薬は効果の判定が難しい
認知症薬は効果の判断が難しいです。
次の薬は効果が目に見えるため、私たちでも効果を判断しやすいです。
- 解熱鎮痛薬を飲んで熱が下がれば薬は効いたのでしょう。
- 血圧を下げる薬を飲んで、血圧が下がれば効いているのでしょう。
しかし、認知症薬は認知症の進行を抑制する薬のため、症状が変わらない。
もしくは、症状が悪化していく場合もあります。
- 認知症の症状が変動しないのは、認知症薬の効果によるものなのでしょうか?
- 認知症薬を服用していなかったら、もっと認知症の症状は悪化したのでしょうか?
- 認知症薬が効かなかったのでしょうか?
認知症薬は、効果が目に見えにくいため、主観的に効果を判断しにくいのです。
そのため「認知症薬は効かない」と言ってしまう方がいるのです。
認知症薬の効果の種類
認知症薬は、効果別に2種類に分けられます。
1.脳内のアセチルコリンの濃度を増やす効果
認知症では、アセチルコリンと呼ばれる、脳内の神経と神経で連絡を取り合う物質(神経伝達物質)の濃度が低下しています。
コリン仮説に基づいて開発された認知症薬がアリセプト、レミニール、イクセロンパッチとリバスタッチパッチです。
これらはアセチルコリンを分解する酵素をブロックします。
(アセチルコリンエステラーゼ阻害作用)
脳内のアセチルコリンを増やし、神経の連絡網が途切れないようにするのです。
2.グルタミン酸の過剰な刺激から守る効果
アルツハイマー型認知症では、グルタミン酸が神経を過剰に刺激するため、継続的にノイズが発生しています。そのノイズが記憶を妨害し、記憶力が低下すると考えられています。
グルタミン酸仮説に基づいて開発された薬がメマリーです。
メマリーはグルタミン酸の過剰な刺激を抑えて、認知症の進行を抑制します。
認知症薬一覧
飲み薬と貼り薬
認知症の症状が軽く自分で服用できる方は、錠剤、D錠(口腔内崩壊錠)が飲みやすいです。
認知症の症状が進行するにつれ、他の剤形(ゼリー、液剤、貼り薬)にシフトしていくことが多いです。
最終的には家族や介護者が認知症薬を管理するため、様々なニーズに応えられるように多くの種類(飲み薬・貼り薬)が用意されています。
用量が同じであれば、どの種類の剤形を選んでも効果は同等です。
認知症薬の剤形別一覧
錠剤 | D錠 | 細粒 | ゼリー | ドライ シロップ |
貼り薬 | 液剤 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
アリセプト | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
リバスタッチパッチ | × | × | × | × | × | ○ | × |
リクセロンパッチ | × | × | × | × | × | ○ | × |
レミニール | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ |
メマリー | ○ | ○ | × | × | × | × | × |
認知症薬のD錠(口腔内崩壊錠)
アリセプト、レミニール、メマリー
- 水がなくてもすぐに服用できます
- 錠剤が飲み込みにくい方でも、口の中で速やかに溶けるため服用できます。
認知症薬の細粒
アリセプト細粒5mg
- 微妙な用量のコントロールが可能です
保険では、アリセプトの1日用量は3mg、5mg、10mgのいずれかが使われます。が、
アリセプトを増量していくと、攻撃性が増強したり症状が悪化する場合があります。
そのようなときに、微妙な用量のコントロールが可能なアリセプト細粒が重宝されます。
認知症薬の用量に医師の裁量権
2016年6月
厚生労働省は、認知症薬の用量について医師の裁量権を認めると発表しました。
認知症薬を増量すると、症状の悪化(攻撃の悪化、興奮など)が起こる場合や、副作用が起こる場合は、低用量での治療を続けられるようになりました。
認知症の進行を遅らせる「アリセプト」(一般名ドネペジル)などの抗認知症薬には、少量から始めて有効量まで増量する使用規定がある。
規定通りに投与する と、患者によっては興奮や歩行障害、飲み込み障害などの副作用が出て介護が困難になると医師らのグループが指摘していた。
東京新聞HP
認知症薬の内服ゼリー
アリセプト内服ゼリー5mg
- 薬を容器から出して皿の上に出してしまえば、薬のようには見えにくいです
- 薬の服用を拒否している場合でも、抵抗を和らげられます
- アリセプト内服ゼリーは、はちみつレモン味です。
スプーンでおやつ感覚で服用できます - 水で薬を飲むと吐いてしまう方などでも、適当な粘り気を保っているため服用しやすいです
- アリセプト内服ゼリーは、喉に詰まらせる危険性が低いです
認知症薬のドライシロップ
アリセプトドライシロップ5mg
- 水やジュースなどで速やかに溶けるため、服用しやすいです
- 薬の服用を拒否している場合でも、抵抗を和らげられます
- 長く口の中に含むと、苦味が出てきます
- アリセプト細粒と同様に、微妙な用量コントロールができます
認知症薬の貼り薬
左:イクセロンパッチ9mg
右:リバスタッチパッチ9mg
- 薬の服用を拒否している場合でも、目立たないところに貼っておけば、内服薬と同等の効果があります
- 湿布と同様に、かぶれの副作用が起こる場合があります
認知症薬の内服液
レミニール内服液8mg(2ml)
(レミニール内服液4mg/ml)
- 水なしでも服用できます
- 水やジュースなどにも簡単に混ざるため、服用しやすいです
- 固形物が飲み込みにくい方でも、服用しやすいです
認知症薬の副作用
認知症薬は、少量から初めて増量していきます。
その理由は、認知症薬の主な副作用である消化器症状(吐き気、食欲低下、下痢)や、めまいの症状を抑えるためです。
認知症薬の種類 | 副作用 |
---|---|
アリセプト | 消化器症状 |
レミニール | |
イクセロンパッチ | |
リバスタッチパッチ | |
メマリー | めまい |
消化器症状の副作用は、薬を飲み始めた1カ月以内や、薬を増量したときに起こりやすいです。
ナウゼリン、プリンペランなどの吐き気止めや、ビオフェルミン、ラックビーなどの整腸剤を、副作用予防のため認知症薬と併用することがあります。
まとめ
- 認知症薬は作用別に2種類
①脳内のアセチルコリンを増量して、認知症の進行を抑える
アリセプト、レミニール
イクセロンパッチとリバスタッチパッチ
②過剰なグルタミン酸の生成を抑制する、認知症の進行を抑える
メマリー - 認知症薬は効果がないのではなく、効果が目に見えないため、効果を実感しにくい
- 副作用(消化器症状、めまい)の発生を抑えるため、認知症薬は少量から治療域量までステップアップする
- 認知症薬を増量すると、症状が悪化するときがある
(一時的な症状悪化である場合も多い) - 認知症薬は、現在剤形別に7種類(錠剤、D錠、細粒、ゼリー、貼り薬、液剤、ドライシロップ)ある
コメント