プロクトセディル軟膏(坐薬)は、1966年に発売されたいぼ痔(痔核:じかく)や切れ痔(裂肛:れっこう)に効果を発揮する塗り薬(坐薬)です。
(軟膏は肛門周辺の湿疹にも効果あり)
プロクトセディルは4種の作用(効果)が期待できます。
- 抗炎症作用(ヒドロコルチゾン)
- 抗菌作用(フラジオマイシン)
- 鎮痛麻酔作用(ジブカイン)
- 出血防止作用(エスクロシド)
プロクトセディル軟膏(坐薬)は痔の出血にも効果がある成分を含むため、出血傾向の強い痔に適しています。
プロクトセディル軟膏/坐薬の効果と使い方を解説します。
痔の種類
痔にもいろいろタイプがありますが、塗り薬で治療できる主な痔は2種類です。
- いぼ痔(痔核:じかく)
- 切れ痔(裂肛:れっこう)
痔は排便のたびに痛みや出血が起こり、トイレに行くのが嫌になってきます。
排便がなくなると便はさらに固くなり、肛門を傷つけ、痔が悪化していきます。
いぼ痔(痔核)
いぼ痔は全体の約半数を占めます。
排便時に力強くがんばると、肛門部に負荷がかかります。
そのとき、肛門部の血液循環が悪くなり血液がたまり、いぼ状の腫れものができることがあります。それがいぼ痔です。
肛門の奥(歯状線より内側)のいぼ痔を、専門的には内痔核(ないじかく)といい、
肛門出口に近い側(歯状線より外側)のいぼ痔を、外痔核(がいじかく)といいます。
出典:ボラギノール.com
内痔核ができる場所は神経が通っていないため痛みを感じませんが、血便が出たり排便後に出血したりして驚かされます。
一方、外痔核ができる場所は神経が通っているため、排便後のジリジリした痛みが苦しいです。
切れ痔(裂肛)
切れ痔は、肛門の出口付近の皮膚が切れた状態をいいます。
切れ痔は、便秘時の硬い便で肛門出口付近が切れて起こる場合が多いです。
(下痢便も続くと粘膜が弱り切れることがあります)
切れ痔の出血量は少なめですが、便が通過するたびに痛みを感じます。
痔と便秘の関連性
便秘もいろいろなタイプがありますが、硬い大きな便が出る便秘は痔の大敵です。
硬い便は肛門を傷つけ、出血、痔の悪化の原因になるからです。
そのため、痔の治療には便秘薬や整腸剤を併用することが少なくありません。
- ビオフェルミン
- ラックビー
- ミヤBM
- ビオスリー
便秘薬
- 酸化マグネシウム(マグミット)
- ラキソベロン
- センノシド、プルゼニド
- ヨーデルS
- 新レシカルボン坐剤
- アローゼン
- アミティーザ
プロクトセディル軟膏と坐薬
プロクトセディルは軟膏と坐薬の2種類です。
プロクトセディル軟膏には15g入りのチューブもありますが、使い捨ての2gタイプ(下図の下)が主に使用されています。
肛門周辺に塗ったり、肛門に注入したり、1本で2役可能だからです。
プロクトセディル坐薬
プロクトセディル軟膏と坐薬の成分
プロクトセディルは4種類の成分からできています。
プロクトセディル軟膏1g、坐薬1個中
- ヒドロコルチゾン5mg
- フラジオマイシン硫酸塩7.1mg(力価)
- ジブカイン塩酸塩5mg
- エスクロシド10mg
ヒドロコルチゾンは強力ポステリザン軟膏(痔治療薬)にも含まれるステロイドです。
プロクトセディルを肛門内に入れる場合、理論上プロクトセディル軟膏1gとプロクトセディル坐薬1個が同等の効果です。
プロクトセディルの4種の作用
プロクトセディルは4種の作用(効果)があります。
- 抗炎症作用(ヒドロコルチゾン)
- 抗菌作用(フラジオマイシン)
- 鎮痛麻酔作用(ジブカイン)
- 出血防止作用(エスクロシド)
1.抗炎症作用(ヒドロコルチゾン)
ステロイドには、腫れやかゆみ(アレルギー)を抑える作用があります。
ステロイド軟膏は、ストロンゲストからウィークまで5段階の強さがあります。
- ストロンゲスト
- ベリーストロング
- ストロング
- マイルド(ミディアム)
- ウィーク
ヒドロコルチゾンは最も弱いタイプのウィークステロイドです。
ヒドロコルチゾンを含むステロイド軟膏にオイラックスH軟膏、抗生物質との配合剤にテラコートリル軟膏があります。
プロクトセディルとよく比較されるネリプロクト軟膏は、ジフルコルトロン吉草酸エステル(ベリーストロングステロイド)を含みます。
2.抗菌作用(フラジオマイシン)
フラジオマイシンはアミノグリコシド系抗生物質です。
抗生物質は炎症を起こした痔の細菌感染をおさえます。
とびひなどでもよく使われるゲンタシン軟膏も、アミノグリコシド系抗生物質です。
3.鎮痛麻酔作用(ジブカイン)
プロクトセディルのジブカインは、麻酔作用により痔や排便時の痛みをブロックします。
4.出血防止作用(エスクロシド)
プロクトセディルのエスクロシドは、血管を強化して痔出血を防止する作用があります。
プロクトセディルの効果
プロクトセディルのいぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、肛門周辺の湿疹(プロクトセディル軟膏のみ)に対する効果(改善以上の有効率%)は90.3%です。
プロクトセディルの副作用
プロクトセディルは、副作用発現頻度が明確となる調査が実施されていませんが、
プロクトセディルは塗り薬/坐薬であるため副作用発生頻度は低く、肛門の不快感くらいです。
ただし、プロクトセディルはステロイドを含んでいます。
長期使用でステロイド特有の副作用が起こる可能性があります。
- 皮膚の希薄化
- ステロイド緑内障(ほとんどない)
ステロイド緑内障について↓
大量又は長期にわたる使用により、下垂体・副腎皮質系機能の抑制をきたすことがあるので注意すること。
プロクトセディル軟膏/坐薬添付文書より
プロクトセディルの使い方
プロクトセディルは1日1~3回おしりに使います。
プロクトセディル軟膏の使い方 (注入方法)
- 冬など、気温が低いとプロクトセディル軟膏は硬くなります。
硬い場合は、少し手や湯で温めます - プロクトセディル軟膏のノズル部分(先端)にワセリンを塗る
(ワセリンがなければプロクトセディル軟膏を少し出して、ノズル部分に塗り広げる)
そうすることで、肛門への刺激感がやわらぎます - プロクトセディル軟膏のノズル部分だけを肛門に挿入して半量~全量を使います
(余っても次回に回さない)
出典:強力ポステリザン軟膏を使用される方へ
(プロクトセディル・強力ポステリザンは、注入するときは同じ使い方でOK)
トイレに行く前にプロクトセディル軟膏を注入すると、刺激感で便意(便をしたくなる感覚)が起きる場合があります。
プロクトセディル軟膏の注入のタイミングは、起床時(排便後)や就寝前がベストです。
もし、プロクトセディル軟膏を注入して塗って、すぐに排便したときはもう1本入れます。
(排便でプロクトセディル軟膏も出るため)
一度挿入に使った強力ポステリザン軟膏は、残っていても再利用できません。(使い捨て)
プロクトセディル軟膏の肛門湿疹への使い方 (塗り方)
プロクトセディル軟膏の肛門周辺の湿疹への使い方は、通常のステロイド軟膏と同じです。
ただし、プロクトセディル軟膏を肛門付近に直接塗ると汚染されます。次回以降が使えなくなるため指で取って使います。
下着に軟膏が付く場合は、塗った後にガーゼなどでカバーするのがいいかもしれません。
プロクトセディル坐薬の使い方
- プロクトセディル坐薬の先端にワセリンを塗る
(そうすることで、肛門への刺激感がやわらぎます) - プロクトセディル坐薬を挿肛後、坐薬が出てこないのを確認して指を離す
プロクトセディル軟膏と同様に、トイレに行く前にプロクトセディル坐薬を使うと、刺激感で便意(便をしたくなる感覚)が起きる場合があります。
プロクトセディル坐薬挿肛のタイミングも、起床時(排便後)や就寝前がベストです。
まとめ
- 排便時の強いがんばりなどが原因で、肛門部の血液循環が悪くなり、いぼ状の腫れものができることがある。それがいぼ痔
- 切れ痔は、便秘時の硬い便で肛門出口付近が切れて起こる場合が多い
- 便秘は痔の天敵であるため、痔の治療は便秘薬が併用されるケースも多い
- プロクトセディルは4つの成分の配合剤
- ヒドロコルチゾン(抗炎症作用)
- フラジオマイシン(抗菌作用)
- ジブカイン(鎮痛局所麻酔作用)
- エスクロシド(出血防止)
- プロクトセディル軟膏(坐薬)は痔の出血にも効果が強いため、出血傾向の強い痔に使うとよい
- プロクトセディルは副作用発生頻度は低いが、長期使用時はステロイド特有の副作用に注意
- プロクトセディルの注入(挿肛)は、朝の起床時(排便後)や就寝前の使用がベスト(1日1回~3回)
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