リザベンには、ケミカルメディエーター(ヒスタミン、ロイコトリエンなど花粉症、喘息、アトピーなどを引き起こす原因物質)の遊離を抑制する作用があります。
そのため、喘息、花粉症、アトピーの薬として使われてきました。
しかし、
リザベン(トラニラスト)はアレルギー薬としてだけでなく、他のアレルギー薬にはない効果があります。
傷の盛り上がり(傷痕)ができる原因物質のひとつTGF-β1を抑制して、傷痕を消す効果です。
最近では、皮膚科・形成外科での処方が多い印象です。
ケロイド・肥厚性瘢痕とは
もり上がった傷痕は、ケロイドや肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)が多いですが、ケロイドと肥厚性瘢痕は専門的には違う傷痕です。
- 肥厚性瘢痕は傷が膨らんで赤く盛り上がった傷痕で、傷の範囲を超えません。
- 一方、ケロイドも盛り上がった傷痕ですが、もとの傷の範囲を超えて盛り上がった傷痕を指します。
ケロイドのできやすさは体質が関係していて、ケロイドになりやすい体質をケロイド体質といいます。
※以下、ケロイド・肥厚性瘢痕をまとめてケロイドと記載します。
ケロイドの治療方法
ケロイドの主な治療方法は、薬物療法、手術、レーザー、圧迫療法(レストン)の4種類です。
<ケロイド薬を使った薬物療法>
ケロイド薬の種類 | ケロイド薬の例 |
---|---|
飲み薬 | リザベンカプセル(大人) 細粒、ドライシロップ(子供) |
ステロイド塗り薬 | デルモベート、アンテベート |
ステロイド貼り薬 | ドレニゾンテープ |
ステロイド注射 | ケナコルト |
ヘパリン類似物質塗り薬 | ヒルドイド、ビーソフテン |
リザベン(トラニラスト)の作用
リザベンはトラニラストを主成分とするケロイドに効果のある唯一の飲み薬です。
リザベン(トラニラスト)には、ケミカルメディエーター(ヒスタミン、ロイコトリエンなど花粉症、喘息、アトピーなどを引き起こす原因物質)の遊離を抑制する作用があります。
そのため、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の治療に使われてきました。
さらに、リザベン(トラニラスト)には他のアレルギー薬にはない作用があります。
傷の盛り上がり(傷痕)ができる原因のひとつTGF-β1(サイトカイン:免疫・炎症反応などに関係する物質)を抑制する作用です。
リザベン(トラニラスト)のケロイドへの効果 (本当に傷痕は消えるのか?)
ケロイドに対してリザベン(トラニラスト)は2つの効果が期待できます。
- ケロイドを消す効果
- ケロイドの痛み・かゆみを抑える効果
ケロイドを消す効果 (赤み・硬さ・増大を抑える効果)
リザベン(トラニラスト)のケロイド・肥厚性瘢痕に対する有効率は、有効以上で59.7%、やや有効以上で87.2%です。
ただし、「有効=傷痕を消す(消える)」ではありません。
「有効=傷痕がうすくなる」です。
ケロイド治療のゴールは、ケロイドの固さ・赤み・拡大を抑えて、傷痕を目立たなくすることです。
リザベン(トラニラスト)、ドレニゾンテープ、アンテベート、ケナコルト、ヒルドイド、ビーソフテン…。
どの薬を使ったとしても傷痕を完全には消せません。
(実際は傷痕を完全に消したい方がほとんどで、ケロイド治療で残念な思いをされる方も少なくありません)
ケロイドの痛み・かゆみを抑える効果
ケロイドは見た目だけの問題ではありません。
ケロイドの傷痕が広がるとき、痛みやかゆみをともなう場合があります。
リザベン(トラニラスト)のケミカルメディエーター遊離抑制作用が痛みやかゆみに効果があります。
リザベンの成分トラニラストは、市販目薬の目のかゆみを抑える成分としても活躍しています。
リザベン(トラニラスト)のニキビ痕への効果
リザベン(トラニラスト)はニキビに直接効果はありませんが、ニキビ痕(クレーター)の治療に使われる場合があります。
ケロイド体質の方はニキビをかいたりして傷ができると、かき傷がケロイド状のニキビ痕になる場合があります。
リザベン(トラニラスト)には、ニキビがケロイド状ニキビ痕になるのを予防する効果と、ケロイド状ニキビ痕を小さくする効果が期待できます。
ただし、ケロイド状ではない普通のニキビ痕に効果があるかどうかは不明です。
『ヒルドイドはニキビやニキビ痕に効く!? それは本当なの?』
ニキビ痕の色素沈着の予防には、シナール(ビタミンC)が使われる場合もあります。
リザベン(トラニラスト)の使い方(用法用量)
リザベン(トラニラスト)はケロイドができる原因のひとつTGF-β1や活性酸素を抑制して、傷痕の生成を抑えたり傷痕を改善します。
リザベン(トラニラスト)の効果を得るためには傷を負った後、傷の盛り上がりや赤みが出てきたらできるだけ早く飲み始めるのが大切です。
リザベン(トラニラスト)は継続服用で効果を発揮するため、長期服用も珍しくありません。
大人はリザベン(トラニラスト)カプセル1カプセルを1日3回毎食後に服用
これが標準量です。
子供の場合は、
- リザベン(トラニラスト)細粒を0.05g/体重1kgを1日3回に分けて飲みます。
- もしくは、リザベン(トラニラスト)ドライシロップを0.1g/体重1kgを1日3回に分けてでもOKです。
リザベン(トラニラスト)は妊婦禁忌
リザベン(トラニラスト)はもともとは花粉症、喘息、アトピーなどの病気に使われるアレルギー薬であったことは先述のとおりです。
アレルギー薬は妊婦に使われることがありますが、リザベン(トラニラスト)は妊娠3カ月以内の妊婦は服用していはいけません。
(アレギサール、セルテクトも妊婦に禁忌)
アレルギー薬は他にもたくさんありますので、わざわざリザベン(トラニラスト)を飲む必要もないでしょう。
ポララミン、ペリアクチン、ザイザル、クラリチン、ジルテック、キプレス、シングレア
FDA妊婦カテゴリーの詳細はこちらの記事
リザベン(トラニラスト)の副作用(膀胱炎など)
リザベン(トラニラスト)の副作用は、膀胱炎のような症状(頻尿、残尿感、排尿時の痛み、血尿)が有名です。
しかし、リザベン(トラニラスト)の膀胱炎症状は細菌が感染した本当の膀胱炎とは違い、抗生物質などを飲んで治療する必要はありません。
リザベン(トラニラスト)服用中止で治ります。
リザベン(トラニラスト)をケロイドに使ったときの副作用発現率は2.6%です。
(ケロイド・肥厚性瘢痕の再審査終了時)
アレルギー薬の副作用で多い眠気・口の渇き・だるさの副作用は、リザベン(トラニラスト)はほとんど起こりません。
副作用 | 副作用発現率 |
---|---|
消化管障害 | 0.94 |
肝臓・胆管系障害 | 0.62 |
泌尿器系障害 | 0.31 |
皮膚・皮膚付属器障害 | 0.28 |
まとめ
- 肥厚性瘢痕とケロイドの大きな違いは、ケロイドは傷が膨らんでもとの傷の範囲を超え盛り上が点
- 主なケロイド薬(リザベン(トラニラスト)、ヒルドイド、ビーソフテン、ケナコルト、ドレニゾンテープ、ステロイド塗り薬)
- リザベン(トラニラスト)は健康保険が使える唯一のケロイド飲み薬
- リザベン(トラニラスト)はTGF-β1を抑制して傷痕の予防修復をする
- ただし、どのケロイド薬を使っても傷痕を完全に消せない
- リザベン(トラニラスト)はケロイド状ニキビ痕への効果は期待できるが、純粋なニキビ痕に効果があるかどうかは不明
- リザベン(トラニラスト)はアレルギー薬としては珍しい妊婦禁忌の薬
- リザベン(トラニラスト)は膀胱炎のような症状(副作用)が起こることがあるが、細菌性のものではないため服用の中止で軽快する
- リザベン(トラニラスト)はアレルギー薬の副作用で多い眠気・口の渇き・だるさの副作用はほとんどない
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