「金利上昇時は固定金利を選び、下降時は変動金利を選びましょう」
これは、住宅ローンの指南本に必ずといって書いている内容です。
金利の変動の予測は困難ですが、固定と変動のどちらかを選ばなくてはなりません。
しかし、住宅ローンの固定と変動のどちらかを迷っていると、ミックスプラン(ミックスローン)という固定と変動をミックスしたローンを紹介されることがあります。
ミックスプラン=固定金利+変動金利
ミックスプランは、固定と変動のどちらも選べない方が最終的にたどり着く答えかもしれません。
ミックスプランは固定と変動の混合型住宅ローンです。
- ミックスプランは、金利が上昇しても、返済額の増加が抑えられる固定金利と、低金利の変動金利をミックスする画期的な住宅ローンです
- 金利上昇時は、ミックスプランの変動金利枠を繰り上げ返済しましょう
- 金利下降時は、ミックスプランの固定金利枠を繰り上げ返済しましょう
どれも合理的なフレーズで、ミックスプランは画期的な住宅ローンのように聞こえます。
しかし、住宅ローンを繰り上げ返済する資金があるならば、別のところに投下した方が利益を得ることができます。
これだけ超低金利で長く借りられる条件がそろっている今、それを放棄する必要があるのでしょうか。
さらにミックスプランは住宅ローンを2本走らせるため、手数料も高くつきます。
ミックスプランは金利が上がろうが下がろうが、心理的に損をする住宅ローンです。
それを数字を使って解説します。
ミックスプランは金利が上昇すると固定金利より損をする
出稿当時の三井住友銀行の変動金利と固定金利(35年返済)を参考にします。
変動金利は5年ごとに0.5%上昇すると仮定します。
(いつか金利の上昇は起こるでしょう)
住宅ローン「固定」の返済額(金利上昇時)
固定金利の条件
金利 | 住宅ローン |
---|---|
1.66% | 3000万円 |
返済期間は35年間 |
固定金利は、金利が変動しても月々の住宅ローンの返済額はかわりません。
毎月の住宅ローンの返済額 | 住宅ローンの返済額合計 |
---|---|
\94,224 | \39,574,181 |
住宅ローン「変動」の返済額(金利上昇時)
変動金利の条件
金利 | 住宅ローン |
---|---|
0.625%~3.625% | 3000万円 |
返済期間は35年間 |
住宅ローン「変動」の金利上昇時の返済額
毎月の住宅ローンの返済額 | 住宅ローンの返済額合計 |
---|---|
\79,544~\102,102 | \39,128,666 |
住宅ローン「ミックスプラン」の返済額(金利上昇時)
ミックスプランの条件
ミックス | 金利 | 住宅ローン |
---|---|---|
変動部分 | 0.625%~3.625% | 1500万円 |
固定部分 | 1.66% | 1500万円 |
返済期間は35年間 |
住宅ローン「ミックスプラン」の金利上昇時の返済額
ミックス | 毎月の住宅ローンの返済額 | 住宅ローンの返済額合計 |
---|---|---|
固定部分 | \47,112 | \19,786,959 |
変動部分 | \39772~\51051 | \19,564,217 |
ミックスプラン合計 | \86884~\98163 | ¥39,351,176 |
住宅ローン「固定、変動、ミックスプラン」の返済額合計(金利上昇時)
住宅ローンの返済額合計 | |
---|---|
固定金利 | \39,574,181 |
変動金利 | \39,128,666 |
ミックスプラン | ¥39,351,176 |
固定金利、変動金利、ミックスプランのどれを選んでもさほど変わりはありませんが、ミックスプランは金利が5年ごとに0.5%上昇すると仮定すると、固定より損をします。
ミックスプランを選ばずに、最初から固定金利を選ぶべきだったと悔やむことでしょう。
住宅ローンのベストは変動金利で借りて、固定金利との金利差で得た金額を繰上げ返済することです。
ミックスプランは金利が下降すると変動金利より損をする
金利は5年ごとに0.05%下降すると仮定します。
変動金利の基準金利は、ほぼ限界まで下がっているため、これからは優遇金利の調整が行われるだけだと思います。
「ミックスプランは金利が上昇すると固定金利より損をする」と同様に計算します。
住宅ローンの返済額合計 | |
---|---|
固定 | \39,574,181 |
変動 | \32,881,352 |
ミックスプラン | \36,227,518 |
ミックスプランは、金利が下降すると変動金利より350万円くらい損をします。
ミックスプランは金利変動なしでも変動金利より損をする
「ミックスプランは金利が上昇すると固定金利より損をする」と同様に計算します。
住宅ローンの返済額合計 | |
---|---|
固定 | \39,574,181 |
変動 | \33,408,357 |
ミックスプラン | \36,491,032 |
ミックスプランは金利変動がない場合、変動金利より300万円くらい損をします。
固定金利特約型と超長期固定金利型ローン
5年、10年固定金利特約型
固定金利特約型ローンとは「固定特約型」と呼ばれる住宅ローンのことです。
例えば「融資期間35年(10年固定特約)」という商品であれば、最初の10年間は固定金利です。10年後に新たに「固定金利」「変動金利」を選び直します。
しかし、金利の優遇幅が下がり、実質金利が上がる場合が多いです。
なぜ、最初の数年だけ金利を固定する必要があるのでしょうか?
某銀行員にたずねると「10年固定は住宅ローン控除が10年までなので、10年で住宅を買い換えたり、ローンを借り換えたりする人がいます」との返答がありました。
確かに、住宅ローン控除は条件さえ満たせば何度でも使えます。
そのためだけに住宅を買い換えたり、住宅ローン借り換えたりことは、合理的な行動とは思えません。不動産売買は多額の手数料が発生するからです。
さらに、不動産は売りたいときに売れるとも限りません。
超長期固定金利型ローン(35年)
一方、35年間の超長期固定金利型ローンは、使い勝手がいい場合もありそうです。
【民間銀行35年固定の支払総額】と【フラット35と団信の保険料の支払総額】を比較する余地があるからです。
(参考)
民間の銀行は、団体信用保険(団信)の加入がほぼ絶対条件であるため、金利に団信保険料が込みである場合がほとんどです。
フラット35も、35年長期固定金利で借りられますが、フラット35は団信の加入が原則任意であるため、団信が必要であれば別に加入しなくてはなりません。
2017年10月、フラット35は団体信用保険(以下、団信)が金利に含まれる形となり、民間の住宅ローンとの金利の比較がしやすくなりました。
三井住友銀行「10年固定特約型」 (固定金利特約型ローン実例)
三井住友銀行の「10年固定特約型ローン」を例にあげ、10年後の実質金利を確認してみます。
(出稿当時)
固定金利特約型10年スタート時
基準金利 | 3.45% |
金利優遇 | -2.2% |
実質金利 | 1.25% |
10年後、金利変動がなかったと仮定します。
10年後固定金利を選択した場合
基準金利 | 3.45% |
金利優遇 | -1.4% |
実質金利 | 2.05% |
金利優遇は0.8%低下し、実質金利は0.8%上がりました。
10年後変動金利を選択した場合
基準金利 | 2.475% |
金利優遇 | -1.4% |
実質金利 | 1.075% |
最初から変動金利を選んでおけば、最大の金利優遇幅は1.7%です。実質金利は0.775%です。0.3%の損です。
※「固定特約型」は三井住友銀行のみが販売している商品ではありません。
まとめ
- ミックスプランとは、固定金利と変動金利をミックスした住宅ローン
- ミックスプランのセールストークはたいてい決まっている
- ミックスプランは、金利の影響は軽減されるが心理的には損をする
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