あまり人に言えない病気のひとつに痔があります。
いぼ痔、切れ痔、穴痔。
言葉に出しても書いても何かパッとしません。
それが痔です。
痔が大きい場合は手術が必要ですが、小さい痔は塗り薬や坐剤でも十分効果を発揮します。
- 強力ポステリザン軟膏
- プロクトセディル軟膏/坐剤
- ネリプロクト軟膏/坐剤
この中で圧倒的に使われている痔の塗り薬が強力ポステリザン軟膏です。
ただ、この強力ポステリザン軟膏は痔以外の肛門周辺の湿疹にも効果があり、使い方が違います。
痔の種類
痔にもいろいろの種類がありますが、塗り薬で治療できる痔は2種類です。
- いぼ痔(痔核:じかく)
- 切れ痔(裂肛:れっこう)
痔は排便のたびに痛みや出血が起こり、トイレに行くのが嫌になってきます。
排便がおっくうになると便は固くなり、硬い便を排便するために肛門を傷つけます。
そして、どんどん痔が悪化していきます。
ですので、痔の治療は便秘にも気を付けなければなりません。
『マグミットは便秘に効かない?では どれくらいで効くの?効果時間は?』
いぼ痔(痔核)
最も多い痔がいぼ痔で、全体の約半数を占めます。
排便時に力強くがんばると、肛門部にストレスがかかります。
そのとき、肛門部の血液循環が悪くなって血液がたまり、いぼ状の腫れものができることがあります。それがいぼ痔です。
肛門の奥(歯状線より内側)にできたいぼ痔を専門的には内痔核(ないじかく)といい、肛門出口に近い側(歯状線より外側)にできたいぼ痔を外痔核(がいじかく)といいます。
出典:ボラギノール.com
内痔核は神経が通っていないところにできるため痛みを感じませんが、血便が出たり排便後に出血したりして驚かされます。
一方、外痔核は神経が通っているところにできるため、排便後のジリジリした痛みが苦しいです。
切れ痔(裂肛)
切れ痔は、肛門の出口付近の皮膚が切れた状態をいいます。
切れ痔は、便秘時の硬い便で肛門出口付近が切れて起こる場合が多いです。
(下痢便も続くと粘膜が弱り切れることがあります)
切れ痔の出血量は少なめですが、便が通過するたびにジリジリとした痛みが残ります。
強力ポステリザン軟膏
強力ポステリザン軟膏は1965年に発売された歴史のある痔の塗り薬です。
もちろん今も、痔の初期治療薬として活躍しています。
30g入りのチューブの強力ポステリザン軟膏もありますが、使われているほとんどが2gタイプの強力ポステリザン軟膏(下図)です。
強力ポステリザン軟膏は2種類の成分からできています。軟膏の色は黄色で特有の臭いがあります。
強力ポステリザン軟膏1gあたり
- 大腸菌死菌浮遊液:0.163mL
- ヒドロコルチゾン:2.5mg
(ステロイド)
強力ポステリザン軟膏の3つの作用
強力ポステリザン軟膏は2つの成分で、3つの作用(効果)を発揮します。
- 感染防御作用(大腸菌死菌)
- 傷の治癒促進作用(大腸菌死菌)
- 抗炎症作用(ヒドロコルチゾン)
1.感染防御作用
強力ポステリザン軟膏の大腸菌死菌は感染を抑える作用があります。
強力ポステリザン軟膏の死菌大腸菌が注入されると、免疫機能が働き白血球が集まります。
すると、免疫機能が高まり、感染を抑えることができるのです。
2.傷の治癒促進作用
強力ポステリザン軟膏の大腸菌死菌傷は、傷の治りを助ける作用があります。
(肉芽形成促進作用)
痔は炎症と傷を伴う病気ですので、肛門部の傷は強力ポステリザン軟膏を塗ると、改善していきます。
3.抗炎症作用(ステロイド作用)
ヒロドコルチゾンはステロイドです。
ステロイドには腫れやかゆみ(アレルギー)を抑えたりする作用があります。
ステロイド軟膏は、ストロンゲストからウィークまで5段階の強さがあります。
- ストロンゲスト
- ベリーストロング
- ストロング
- マイルド(ミディアム)
- ウィーク
ヒドロコルチゾンは最も弱いタイプのウィークステロイドです。
ステロイド軟膏ではオイラックスH軟膏、ステロイドと抗生物質の配合剤ではテラコートリル軟膏があります。
『とびひにステロイド軟膏はOK?リンデロンVG、テラコートリルの違い』
強力ポステリザン軟膏とよく比較されるネリプロクト軟膏は、ジフルコルトロン吉草酸エステル(ベリーストロングステロイド)を含みます。
ステロイド軟膏ではネリゾナ軟膏があります。
『ネリプロクト軟膏/坐剤の痔改善効果と使い方(塗り方) 市販は?』
強力ポステリザン軟膏の効果
強力ポステリザン軟膏のいぼ痔・切れ痔に対する効果は次の通りです。
痔タイプ | 効果(有効率%) |
---|---|
いぼ痔 | 80.2 |
切れ痔 | 74.6 |
強力ポステリザン軟膏は肛門付近の湿疹に使われることもあり、その効果は96.2%です。
痔核・裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹、痒感)の緩解、肛門部手術創、肛門周囲の湿疹・皮膚炎、軽度な直腸炎の症状の緩解
強力ポステリザン軟膏添付文書より
ポステリザン軟膏の使い方
強力ポステリザン軟膏は1日1~3回おしりに使いますが、痔と肛門周辺の湿疹では使い方が違います。
使い方をまちがえると効きません。
強力ポステリザン軟膏の使い方 (痔への注入方法)
- 強力ポステリザン軟膏が硬い場合、少し手や湯で温めます
- 強力ポステリザン軟膏のノズル部分(先端)にワセリンを塗る。
(もしくは、強力ポステリザン軟膏を少し出して、ノズル部分に塗り広げる)
そうすることで、肛門へスルッと入れやすくなります。
ワセリンの便利な使い方はこちらでまとめてます。
『万能すぎる!白色ワセリン、プロペト、サンホワイトの使い方7選』 - 強力ポステリザン軟膏のノズル部分だけを肛門に注入して半量~全量を使います
(余っても次回に回さない)
トイレに行く前に強力ポステリザン軟膏を使うと、注入の刺激感で便意(便をしたくなる感覚)が起きる場合があります。
強力ポステリザン軟膏を使うタイミングは、起床時(排便後)や就寝前がベストです。
もし、強力ポステリザン軟膏を使い、すぐに排便してしまったときは、もう1本入れます。
(排便で強力ポステリザン軟膏も出るため)
強力ポステリザン軟膏の袋には使用期限の記載がありますが、一度注入に使った強力ポステリザン軟膏は残っていても再利用できません。(使い捨て)
強力ポステリザン軟膏の使い方 (肛門周辺の湿疹への塗り方)
強力ポステリザン軟膏の肛門周辺の湿疹への使い方は、通常のステロイド軟膏と同じです。
ただし、肛門付近に強力ポステリザン軟膏を直接塗ると、汚染され次回以降が使えなくなるため指で取って使います。
下着に軟膏が付く場合は、塗った後にガーゼなどでカバーするのがいいかもしれません。
強力ポステリザン軟膏の副作用
強力ポステリザン軟膏は塗り薬ですので副作用発生頻度は低く、副作用が起こったとしても止めれば自然となくなります。
副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
かゆみ | 0.12 |
便意 | 0.06 |
塗布部不快感 | 0.06 |
(強力ポステリザン軟膏の再評価結果より)
ただし、強力ポステリザン軟膏はステロイドを含んでいるため、長期使用でステロイド特有の副作用が起こりえます。
- 皮膚の希薄化
- ステロイド緑内障(←ほとんどない)
強力ポステリザン軟膏の市販
- 強力ポステリザン軟膏
- プロクトセディル軟膏/坐剤
- ネリプロクト軟膏/坐剤
有名どころの痔の塗り薬には市販はありません。
痔の市販はボラギノールシリーズが有名です。
軟膏、注入軟膏、坐剤と3種類のタイプが市販されているため、症状によって使い分けができます。
『ボラギノールAとM(坐剤・注入軟膏)の成分・効果の違いと使い方』
痔と便秘
繰り返しますが、硬い大きな便がでる便秘は痔が悪化する原因です。
硬い便は肛門を傷つけ、出血、痔の悪化の原因になるからです。
ですので、便秘を治さないことには痔は治りません。
そのため、痔の治療には便秘薬や整腸剤を併用することは少なくありません。
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まとめ
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