薬剤師として小児科を担当していると、ほとんどのお母さんがホクナリンテープの貼り方、使い方を知っています。
風邪の咳止めにホクナリンテープを使うケースが多く、ホクナリンテープは次のような愛称ですっかり有名になっているからでしょう。
- 咳止めシール
- 咳シール
- 貼る咳止め
- 咳止めテープ
- 貼るシール
しかしながら、ホクナリンテープは風邪の咳には効かないはずです。
なぜなら、ホクナリンテープは風邪の「咳止めシール」として開発された貼り薬ではなく、「喘息予防の貼り薬」として開発された薬だからです。
ホクナリンテープとは
ホクナリンテープは0.5mg、1mg、2mgの3種類の大きさがあります。それぞれの大きさに2種類のデザインがあります。
→2017年11月30日、マルホのホクナリンテープは販売終了しました。現在は1種類です。
上:マルホのホクナリンテープ(販売終了)
下:マイランのホクナリンテープ
以前、ホクナリンテープのジェネリックにセキナリンテープがありましたが、2017年8月にツロブテロールテープ「トーワ」に名称変更されています。
先発/ジェネリック | 薬価(薬の価格) |
---|---|
ホクナリンテープ0.5mg | 34.9 |
ツロブテロールテープ0.5mg | 16.4~22.3 |
ホクナリンテープ1mg | 47.7 |
ツロブテロールテープ1mg | 21.9~31.4 |
ホクナリンテープ2mg | 66.6 |
ツロブテロールテープ2mg | 32.1~40.7 |
ホクナリンテープは喘息の咳止めテープ
ホクナリンテープは早朝の喘息発作や呼吸の苦しさの予防を目的として開発された貼り薬です。
気管支が収縮すると呼吸が苦しくなり、ゼーゼーとした咳が出ます。
ホクナリンテープの主成分ツロブテロールは、気管支を広げて呼吸を楽にしたり、ゼーゼーした咳をしずめる効果があります。
ホクナリンテープは「風邪の咳止めテープ」ではない
ホクナリンテープは風邪の咳止め代わりに使われるケースが多いですが、ホクナリンテープは風邪の咳にほとんど効きません。
なぜなら、風邪と喘息の咳は起こるメカニズムが違うからです。
風邪の咳
風邪の咳が起こるメカニズムはこのとおりです。
- 喉・気管に異物(細菌・ウイルス)が侵入
- 咳中枢が刺激される(異物を排除せよ!)
- 異物を外へ出すために咳や痰が出る
「風邪の咳が起こるメカニズム」からわかるとおり、咳止めで強制的に咳を止めることは、必ずしもプラスではありません。
風邪の咳は痰の絡むことが多く、メジコンやフスコデなどの中枢性鎮咳薬(ちゅうせいちんがいやく)やムコダインやムコソルバンなどの去痰薬(きょたんやく)を使います。
『メジコン(咳止め)が効かない?止まらない咳の原因はコレかも』
喘息の咳
喘息やゼーゼーした呼吸の苦しさは、気管支の収縮や炎症が原因でおこります。
だから、喘息には気管支を広げる薬(気管支拡張剤)、もしくは炎症を抑える薬(ステロイド)を使います。
現在では、気管支の収縮や炎症を24時間コントロールできる、吸入薬を使うのが主流です。
- ステロイド吸入薬
(パルミコート、キュバールなど) - ステロイド+気管支拡張剤の配合吸入薬
(シムビコート、レルベアなど)
しかしながら、「ホクナリンテープ」=「咳止めシール」という誤解が起こるのも、それなりにわけがあります。くわしくはコチラの記事で解説しています。
『ホクナリンテープは風邪の咳に効かない!それでも子供に使う理由は?』
ホクナリンテープはすぐに効かない
ホクナリンテープはツロブテロール(主成分)を皮膚にゆっくり届ける特徴があります。
そのため、ホクナリンテープは貼ってもすぐに効きません。
シールを貼ってから4~6時間後くらいから少しずつ効果が表れますが、効果が安定してくるのは貼って3日後からです。
『ホクナリンテープはすぐに効かない!効果はジワリとやってくる』
ホクナリンテープの使い方
ホクナリンテープの使い方は簡単です。
1日1回、胸、背中、腕のいずれかの場所に貼ります。
24時間経ったら古いホクナリンテープをはがし、貼る場所をずらして新しいホクナリンテープに貼り替えるだけです。
出典:マイランHP
貼る場所をずらすのは、シールかぶれの副作用を起こさないためです。
『ホクナリンテープの使い方はこう!貼る場所と効果時間の見極めがポイント』
また、ホクナリンテープは密着性が強いため、普通の生活で剥がれることはありません。
もし、剥がれてしまったときの対処法はコチラの記事で解説しています。
『ホクナリンテープが剥がれたらどうする?お風呂やプールは?』
ホクナリンテープの副作用
ホクナリンテープでよく起こる副作用はシールかぶれです。これは湿布と同じで、貼り薬である以上は仕方のないことです。
また、ツロブテロールの作用が気管支以外に作用したときには「心臓がドキドキする」「手が震える」という副作用が起こります。
『ホクナリンテープの副作用 動悸がしたり手が震える理由はこう!』
まとめ
- ホクナリンテープは風邪の「咳止めテープ」ではない。
- ホクナリンテープの主成分ツロブテロールは、気管支を広げて呼吸を楽にしたり、ゼーゼーした咳をしずめる効果がある。
- ホクナリンテープは喘息の予防を目的に使う貼り薬。
- ホクナリンテープが風邪の咳に効かない理由は、風邪と喘息の咳は起こる原因が違うから。
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