内服用鉄剤は6種類ありますが、大人の鉄欠乏性貧血によく使われるのはフェロミアです。
しかし、フェロミアは便秘、下痢、吐き気、胃痛などの胃腸系副作用が起こりやすい薬で、その代替薬としてフェログラデュメットが使われるケースが多いです。
鉄欠乏性貧血薬 | 成分名 |
---|---|
フェロミア | クエン酸第一鉄 |
フェログラデュメット | 硫酸鉄 |
スローフィー | |
テツクールS | |
フェルム | フマル酸第一鉄 |
インクレミン | ピロリン酸第二鉄 |
「フェログラデュメットの標準的な飲み方」の解説から入り、副作用が起こったときの対処方法(予防方法)を解説します。
フェログラデュメットの飲み方
フェログラデュメットは硫酸鉄を主成分とする鉄剤(鉄欠乏性貧血薬)です。
成人のフェログラデュメットの飲み方は、1~2錠を1日1回から2回に分けて空腹時に服用です。
鉄剤は胃を刺激して吐き気や胃痛などの副作用を起こしやすく、食後に飲むことが多いです。
その点、フェログラデュメットは鉄が胃を刺激しないように胃酸でゆっくり溶ける工夫がほどこされています。
そのため、フェログラデュメットは鉄剤吸収のよい空腹時に服用しても、吐き気や胃痛などの副作用が出にくい鉄剤です。
フェログラデュメットの副作用 (吐き気、便秘など)
国内文献を参考に集計した結果では、6.0%の副作用が発生しています。
<フェログラデュメットの主な副作用と頻度>
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
嘔気・嘔吐 | 2.8% |
食欲不振 | 0.8% |
腹痛 | 0.7% |
しかしながら、私はフェログラデュメットでこれらの副作用を起こしたという方にあまり遭遇しません。
鉄欠乏性貧血を対象とした二重盲検比較試験においては「フェログラデュメットとプラセボ(偽薬)の副作用頻度に大きな違いがなかった」という結果がそれを後押しします。
各鉄剤28日間服用中の副作用
下軸:20例中の副作用数
フェログラデュメットインタビューフォームを参考に作成
『フェログラデュメットとフェロミアの違い 鉄剤の使い分けはこれでOK!』
フェログラデュメットの副作用がツライときの対策
便秘、下痢、吐き気、胃痛などの胃腸系副作用がツライときにできる副作用対策は、食後に飲むことと、フェログラデュメットの1日量を減らすことです。
量を減らすと効果が心配ですが、もともとフェログラデュメットは1錠中の鉄量が105mgと多く、鉄欠乏状態にあるときは鉄吸収量もいいためほとんど問題になりません。
(食事摂取基準(2015年)によると、鉄分の食事からの接種推奨量は成人女性で約10mg)
飲み続けられないよりは、減量して飲み続ける方にメリットがあります。
それでも副作用がツライなら、インクレミンシロップや注射(フェジン)に変更という手もあります。
参考までに、インクレミンシロップは小児用シロップですが、大人に使われるケースもあります。
『インクレミンシロップは赤ちゃんと子供の鉄欠乏性貧血に大活躍!』
吐き気の副作用対策
フェログラデュメットの鉄が過剰に胃を刺激すると、吐き気を起こす場合もあります。
胃を刺激から守ることができれば、吐き気を抑えられます。セルベックスやムコスタなどの防御因子増強型胃薬の併用が有効です。
『セルベックスとムコスタの違いは4つ!併用したらどうなる?』
便秘の副作用対策
フェログラデュメットの便秘には便秘薬や整腸剤が有効です。
ただし、酸化マグネシウムを成分にするマグミットは、フェログラデュメットと飲み合わせ注意で、2時間以上間隔をあけて飲む必要があります。
『鉄剤(フェロミア/フェログラデュメット/インクレミン)は飲み合わせに注意!』
<便秘薬の例>
<整腸剤の例>
便秘が原因で痔が悪化する場合もあるため、もともと便秘体質の人や痔持ちの人は注意が必要です。
『ネリプロクト軟膏/坐剤は痔に効く!効果的な塗り方/使い方はこう』
また、フェログラデュメットを飲むと、便の色が黒くなって便中に錠剤のカケラが出ます。これは副作用ではありませんので、そのまま飲み続けてください。
まとめ
- フェロミアは胃腸系副作用が起こりやすく、その代替薬としてフェログラデュメットが使われるケースが多い
- フェログラデュメットは鉄が胃を刺激しないように、胃酸でゆっくり溶ける工夫がある
- 便秘、下痢、吐き気、胃痛などの胃腸系副作用の対策は、食後に飲むことと、フェログラデュメットの1日量を減らすこと
- 吐き気には防御因子増強型胃薬の併用が有効
- 便秘には便秘薬や整腸剤の併用が有効
コメント