ヒルドイドは有名な保湿剤です。
しかし、ネットの世界では「アンチエンジングクリーム」「美容クリーム」「化粧水」「乳液」…と堂々と紹介されています。
さらに、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSでは、ヒルドイドの写真が大量にアップされ、美容目的に使っている人は相当数いることもわかります。
- 化粧水や乳液の代わりに顔に使っている。
- 化粧水(乳液)よりも顔がうるおう。
- 化粧水(乳液)より値段が安いので、たっぷり顔に使える。
- 肌が若返る効果がある。
- 美容効果がある。
- ニキビ痕やシミにも効果がある。
しかしながら、これらの使い方はNGです。
健康保険連合会(医療費適正化、医療保険制度などの充実をはかる組織)はヒルドイドの美容目的使用を問題視しています。
近い将来、ヒルドイドは保険適用外(健康保険が使えない)になるかもしれませんよ!
ヒルドイドの処方上限(何本まで?)
保湿剤ヒルドイドは、ソフト軟膏、ローション、クリーム、フォームの4種類が発売されています。
ヒルドイドを「化粧水や乳液の代わりに」という発想は昔からあります。
だからか、処方量の上限(制限)が設けられています。
つまり、ヒルドイドは医師が処方できる量が限られているのです。
例えば、私の薬局ではヒルドイドのみ返戻(へんれい)を受けています。(某有名病院小児科の処方)
ヒルドイドソフト軟膏 150g 体
ビーソフテンローション 300g 体
返戻とは
健康保険に請求後、審査で落ちて医療機関に請求が差し戻されること
(健康保険から保険分の薬代が支払われない。何らかの理由で保険適用外である)
ただし、この処方が毎回返戻を受けるわけではありません。検査員、処方内容、診療科目、処方回数、処方量などで違います。
健康保険で使えるヒルドイドは何本までという上限が月単位であるようです。
(さらにつっこむと、何本までという上限は都道府県によって違う!)
そのためか、ヒルドイドのジェネリック・ビーソフテン(←こちらはまだ処方上限がゆるい)にシフトしている印象があります。
『まだ知らないの?ビーソフテンローションは化粧水代わりにならないよ』
ヒルドイドとワセリンの混合処方は処方上限対策では有名です。
しかし、混合する目的は上限対策だけではありません。
『ぜひ、確かめてください!ヒルドイド・プロペト(ワセリン)・混合薬』
ヒルドイド処方の実態と問題
ヒルドイドを含むヘパリン類似物質の単独処方。
これが皮膚乾燥症に使われている金額は、年間約93億円と分析されています。
健康保険組合連合会はヒルドイドなどの保湿剤処方の実態と問題を整理し、2017年10月に政策提言を行いました。
実態と問題の詳細は「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究3」の保湿剤処方のあり方(P76~)です。
(本記事はこれらの調査研究結果のデータを引用します)
ヒルドイド処方の問題1:美容目的によるヒルドイド処方の流行
美容に関心の高い女性の間で、皮膚科等に受診し「乾燥肌(皮脂欠乏症)」等の訴えにより「ヒルドイド」(各種タイプ、後発品含む)を化粧品代わりに処方してもらうことが流行している可能性が高い
ヒルドイドの美容効果(誤った知識)がSNSなどで拡散し、美容目的処方が若い女性を中心に流行を裏付けるデータがあります。
保湿剤のみ処方における性・年齢階級別の構成割合
(20歳~49歳までの処方金額ベースでは、女性は男性の約5倍)
通常、皮膚スキンケアは加齢とともに必要になってきます。
男性の場合、それが顕著に表れています。
一方、女性の場合、20代から急増して50代以降になると減っています。
これは美容に関心の高い年代の女性が、ヒルドイドを保険適用外で使っている可能性が高いということです。
ヒルドイド処方の問題2:アトピーではなく乾燥肌に使用
本来、保湿剤はアトピーなどスキンケアが必須である病気に使われるべきです。
しかし、保湿剤の使用目的の半分以上は皮脂欠乏症です。
(皮脂欠乏症とは、皮膚の油分が失われて角質内の水分量が減った乾燥肌状態)
ヒルドイド処方と健康保険
ヒルドイドが美容目的で使われる理由のひとつは、医師にうまいこと言えば健康保険が使えるため、自己負担が抑えられるからです。
しかし、本来ならば、美容目的の薬は保険適用外で自費が原則です。
だから、ヒルドイドを美容目的で使うのであれば、NALC薬用ヘパリンミルクローション などを使うべきでしょう。
ヘパリンミルクローションは美容成分配合なので、この方が理にかなっていますしね。
ヒルドイド処方の保険適用外検討
- 皮膚乾燥症に対して保湿剤(ヘパリン類似物質または白色ワセリン)が他の外皮用薬または抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合には当該保湿剤を保険適用から除外する。
- 中長期的には、海外の保険収載の状況や一般用医薬品の流通の状況等を踏まえ、保湿剤の処方そのものを保険適用外とすることも検討すべきである
健康保険組合連合会の政策提言より
まとめると、
ヒルドイドなどの保湿剤の美容目的使用はけしからん。単独処方はあやしいから保険適用外にすべきだ。ということです。
美容志向もいいですが、健康保険のあり方と使い方を考え直すときです。
さもないと、本来必要とする方がヒルドイドを使えなくなる日が来るかもしれません。
ヒルドイドの保険適用外はいつから?
西暦の偶数月の4月は、診療報酬の算定ルールが改定される年です。
ヒルドイド問題が終息しない場合、2018年4月から、ヒルドイドは使い方によっては健康保険適応から除外され、大量の返戻を受けるかもしれませんね。
『あなたは間違っている!保湿剤の超定番ヒルドイドの正しい使い方』
まとめ
ヒルドイドの「美容クリーム」「乳液」「化粧水」の代わりの美容使用はダメ!
ヒルドイドの美容目的処方が問題視されているから、使い方によっては健康保険適応から除外されるよ。
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