- マンションは資産だから、できるだけ速く買いましょう
- 賃貸の家賃は永遠ですが、マンションを持っていれば資産なので、いざというときに安心です
- 家賃がもったいないから、資産であるマンションを買いましょう
どこかで聞いたことのあるような言葉です。
果たして本当にマンションは資産なのでしょうか?売れないとは一体どういうことなのでしょうか?
マンションの売却事情と購入事情
中古マンションは相対取引です。売主と買主に特殊な事情がない限り、相場により形成された価格で売買されることがほとんどです。
特殊な事情というのは、以下のような事情です。このような事情があるときは、相場からかけ離れた価格で売買されることがあります。
売主の売却事情
- 引越するから、期限までに古いマンションを売却しなくてはならない
- 相続税のからみで、期限までに売却しなくてはならない
買主の購入事情
- 校区の関係で、3月には入居しなくはならない
- 社宅がなくなるから、期限までに購入しなくてはならない
マンションは資産か?
マンションは、帳簿上は資産です。それは紛れもない事実です。
しかし現実は、資産にもなるし、負債にもなります。
マンションが資産になるか、負債になるかは、相場での売却価格と住宅ローンの残債とのバランスで決まります。
マンションの購入前のバランスシート
個人の場合でも、バランスシートを使って資産と負債と純資産をわけて考えることが重要で、常に資産が負債を上回る状況が望ましいです。
この考えがマンションを売却するときや、住宅ローンを組む時に役に立ちます。
マンションを購入する前のバランスシートはこのような感じです(保険や貯金などは考慮しません)
負債がないため、資産=純資産です。
マンションの購入直後のバランスシート
フルローンの住宅ローンでマンションを買った場合のバランスシートは、このようになります。
すべての現金は、仲介手数料などのマンション取得のための経費に使ったと仮定します。
現金はゼロになり、資産(マンション)=負債(住宅ローンの残債)で、純資産はゼロです。
このバランスシートが、購入するマンションによって変化します。
この購入直後のバランスシートを目に焼き付けておいてください。これがどのように変化するのかを見ていきましょう。
マンションの売却価格と残債
居住用のマンションの価値とは、通常の相場で売却可能な価格のことです。決してマンションを購入した価格ではありません。
マンションの売却価格は相場により変動しますが、住宅ローンは毎月支払っている限り、残債は確実に減っていきます。
マンションの相場での売却価格と、残債のバランスを見てみましょう。
考えられるパターンは4パターンです。
- 売却価格>購入価格
- 売却価格=購入価格
- 売却価格=残債
- 売却価格<残債
①マンションの売却価格が購入価格より上昇
マンションの売却価格が購入価格より上昇することは、都心部のほんの一部の地域で見られることです。
なぜらなば、建物部分の価値は、月日とともに減価され、その減価以上に土地の価格が上昇しなくては、このようなことは起こり得ないからです。
マンションの売却価格が上昇した場合の売却価格と残債の推移を示すとこのような感じです。
縦軸:売却価格(購入時100%)
横軸:経過年数
マンションの売却価格の上昇と、残債の減少によりダブルの含み益が出ます。
マンションの売却価格から残債を引いた額が純資産です。
バランスシートで示すとこのような感じです。
純資産と負債の上下位置が反対ですが、資産と負債のバランスを棒グラフのようにイメージできるように、このように記します。
マンションの売却価格が上昇した分の含み益と、残債が減った分が純資産となります。
②マンションの売却価格が購入価格と同じ
これも、都心部の一部の地域で見られることです。バブル崩壊以降、マンションの価格を維持することすら困難になってきました。
マンションの売却価格から残債を引いた額が純資産でしたね。
売却価格は購入価格と同額ですので、残債の減少分のみの含み益が出ます。
バランスシートで示すとこのような感じです。
残債が減った分が純資産となります。
③マンションの売却価格が残債と同じだけ下落
バブル崩壊以降は、このパターンが最も多いようです。
バランスシートは、マンション購入直後のバランスシートを上から圧縮したような形になります。
④マンションの売却価格が残債以上に下落(売れない)
このパターンがマンションを売却するときに困る、売れないパターンです。
マンションの売却価格が残債より小さいため、含み損がでています。バランスシートで示すとこのような感じです。
毎月、滞り無く住宅ローンを払っていました。何も悪いことはしていません。
しかし、マンションの売却価格は残債より小さく、資産と負債のバランスが保てない状態になりました。
ただ、このような状態でも、明日から生活ができなくなるわけではありませんし、銀行からマンションを取り上げられるわけでもありません。
マンションを売却しようとしない限りは…。
マンションが売れないという問題
マンションの相場の売却価格が残債以上であれば、特に何も困ることはありません。高値で売れるように売却活動に精を出して下さい。
さて、問題は【4.マンションの売却価格が住宅ローンの残債以上に下落】した場合です。
この場合は、ある条件を満たさない限りマンションが売れないのです。
なぜ、マンションが売れないのか?ある条件とは?
マンションが売れない理由は、銀行が設定している抵当権を抹消出来ないからです。
抵当権は、住宅ローンがすべて支払い終えた時に抹消することができます。
このような状況では、住宅ローンの清算ができないため、抵当権は抹消できないため売れないのです。
では、一体どうすればよいのでしょうか?
このように不足分を現金で補うか、買主に残債と同じ額で買ってもらうしか方法はありません。
マンション売却の要 抵当権について
住宅ローンが残っているマンションには、銀行の抵当権が設定されています。
抵当権とは担保の様なものです。
マンションの所有者が、銀行に住宅ローンを支払える見込みがなくなった場合、銀行は強制的に住宅を売却して残金を取り返すことができます。
通常のマンション取引では、マンションの引き渡し時に売主・買主・仲介会社・司法書士が銀行に集まり、売主の抵当権抹消と同時に買主の抵当権を設定します。
そのため、抵当権の抹消手続きは、売却時には意識されませんが、マンションを売却するためには、抵当権の抹消が必須となっているのです。
まとめ
マンションは帳簿上資産ですが、含み損の出ている場合は資産ではありません。実質上の負債です。
ただ、普通に生活している限りは、自分のマンションの含み損にも気付くこともないでしょう。
マンションを売却しなくてはならない日は、いつやってくるかわかりません。
そのとき、売れないという事実に直面しないためにも、自分のマンションの相場での売却価格について気にかけておく必要があります。
- マンションは帳簿上は資産。しかし現実は、資産にもなるし、負債にもなる
- マンションが資産か負債かは、マンションの売却価格と残債のバランスで決まる
- 居住用マンションの価値は、通常の相場で売却可能な価格のこと。購入価格ではない
- マンションの売却価格が残債より小さいとき、不足分を現金で補わない限り売れない
- マンションの売却には、抵当権の抹消が必須
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