たかが塗り薬と、塗り薬を軽視していませんか?
- ステロイドは怖いから、薄くチョットだけにしておこう。
- ニキビ薬はたくさん塗れば、効くんじゃないのないの?
- 水虫薬は1日1回だと効かないから2回は塗らないとね。
すべて間違いです。
実は、塗り薬って凄くスゴく奥が深いのです。使い方の良し悪しで効果に大きな違いが表れるのです。
この記事を読めば、塗り薬の基本的な知識が身につきます。
さあ、始めましょう。
[塗り薬の基本]軟膏・クリーム・ローションの塗り方
手を洗う前に、直接塗り薬にさわっていませんか?
軟膏を使う前に、最初に手(特に指と爪)をキレイに洗う。
軟膏、クリームのチューブの先端はキレイに保つ。
頭に使うローションなど、ダイレクトに頭皮に塗っていませんか?
塗り方の基本2と同様の理由で、汚染される原因になります。
軟膏、クリーム、ローションなどの先端を直接患部に付けない。
(指で取って使う)
塗り薬は均一全体にぬれていますか?
軟膏は横に塗る。
(縦に塗るとしわに軟膏がたまることがあるため)
『あなたは間違っている!保湿剤の超定番ヒルドイドの正しい使い方』
ステロイドは薄く塗り広げる。
薬剤師が塗り薬の使用量の説明をしないわけ
薬剤師は薬の専門家です。
薬の知識がありますが、医師ではないため診察して症状を診ることができません。だから、添付文書(プロ向けの薬の説明書)が頼りなのです。
しかしながら、その添付文書には塗る量の記載がありません。
ゆえに、塗り薬については「塗り薬はうすく広げて塗ってください」と、無難な説明にならざるをえないのです。
飲み薬の添付文書(量の決まりがある)
通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。
ベルソムラ(睡眠薬)添付文書より
塗り薬の添付文書(量の決まりがない・あいまい)
通常1日1~数回適量を塗布する。なお、症状により適宜増減する。
デルモベート軟膏/クリーム添付文書より
薬局でいう1日数回って何回なの?
また、塗り薬は「1日数回塗って下さいね」と薬剤師に言われることも多いと思います。
こんな頼りない説明になってしまうのは「薬剤師が塗り薬の使用量の説明をしないわけ」で説明した理由と同様で、添付文書に回数の記載がない薬が多いからです。
しかしながら、ステロイド・保湿剤・水虫薬など、ジャンル別に使用量・使用回数のルールがないわけではありません。
ステロイドの塗る量
ステロイドは、このように部位別に塗る量の目安(成人)があります。
塗る場所 | 量 |
---|---|
顔、首 | 1.25g |
腕から手まで(片側) | 2g |
太ももからつま先(片側) | 4g |
胸、腹 | 3.5g |
背中 | 3.5g |
もし、頭からつま先まで全身に使うなら、25g(5gチューブ5本分)に相当します。
思ったよりたくさん塗ると思いませんでしたか?
ほとんどの方のステロイドの塗布量は、目安の半分以下程度です。薄すぎてステロイドは十分に効果を発揮しません。
『ステロイドが怖い!ヒルドイドやワセリンで薄めると強さも弱くなる?』
ステロイドの量の測り方
先端口径5mmのチューブから、人差し指の第1関節から先端まで絞りだしたときの量。これが約0.5gになり、1FTP(フィンガーティップユニット)といいます。
しかしながら、実際は軟膏の種類によってチューブの先端口径の大きさが違い(先端口径5mmのチューブが忘れ去られていることが多い)、第1関節から先端まで絞り出した時の量が0.5gとは言い切れません。
1本5g~25gの塗り薬。
チューブ先端の大きさ(太さ)に注目
例えば、キンダベート(ステロイド)の先端口径は約3mm(ほとんどのステロイドが約3mm)で、第1関節から人差し指の先端(私の指で25mm)まで絞りだした量は0.24gです。
1FTU0.5gの半分でした。
つまり、ステロイドは指2本分で0.5gはかりとれることがわかります。
※5gチューブのステロイドを数本試し、平均すると約0.1g/軟膏1cmになりました。
ステロイドの量をまとめるとこうです。
部位(塗る場所) | 量 | 指上の本数 |
---|---|---|
顔、首 | 1.25g | 5本 |
腕から手まで(片側) | 2g | 8本 |
太ももからつま先(片側) | 4g | 16本 |
胸、腹 | 3.5g | 14本 |
背中 | 3.5g | 14本 |
<補足>ヒルドイドソフト軟膏(先端口径約5mm)の1FTUは?
1本25gのヒルドイドソフト軟膏(先端口径約5mm)は0.51gでした。
やっぱり、チューブの口径5mmという条件が重要なんだね!
ヒルドイド(保湿剤)の塗る量
ヒルドイドの塗る量の目安は、塗ったところにティッシュが貼りつく量(ちょっと塗り過ぎたかなと思えるくらいの量)です。
出典:マルホHP
ヒルドイド(保湿剤)は量が少なすぎると期待した効果が得られません。
軟膏・クリーム・ローションなどいろいろありますが、同じ量を使わないと同じ効果は得られません。(ローションはよくのびるため、うすく使いがち)
また、1日1回より1日2回塗った方が効果が高いことがわかっています。
『ヒルドイドローションの効能効果はコレ!だから顔もぷるっぷるに』
塗り薬の塗る順番
2種類以上の薬を同じ場所に塗ることは珍しくありません。
例えば、保湿剤とステロイドです。
どちらを先に塗ればよいのでしょうか?
保湿剤とステロイドの塗る順番のルールはありません。どの順番で塗っても、効果に違いが出たというデータもありません。
しかしながら、先に保湿剤、後にステロイドを塗るのが合理的だと考えられます。
その理由はこうです。
ステロイドは炎症部分に部分的に使い、保湿剤は皮膚全体に使います。
塗る場所が限定されているステロイドを先に塗布すると、保湿剤を塗る際(重ねる際)に、関係のない部分にステロイドをぬり広げてしまうからです。
『皮膚科の混合軟膏の不思議 塗り薬の使用期限と保存のルールはある?』
塗り薬はこのタイミングで使おう
水虫薬(抗真菌薬)
水虫薬は、入浴後乾燥させた後に塗布するのが最も効果的です。
なぜなら、入浴後は皮膚が柔らかくなり、薬が浸透しやすいからです。
特に足の裏は皮膚が分厚いため、通常の状態ではなかなか薬は皮膚奥部へ浸透しません。
『ルリコンクリーム/軟膏/液 水虫塗り薬の効果的な塗り方 5つのキーワード』
保湿剤 (ヒルドイド、ビーソフテン、プロペトなど)
保湿剤は入浴後すぐと朝にぬると効果的です。
入浴後は、皮膚は普段より水分を多く含んでいるからです。
塗り忘れたときは、思い出したときにできるだけ早くすり込みます。
入浴1分後と60分後の保湿効果の関係
出典:マルホHP
『発表!ヒルドイドの順番 化粧水/乳液/ニキビ薬/ステロイド』
ニキビ薬 (ディフェリン、ベピオ、デュアック)
ニキビ薬は洗顔して、化粧水や乳液で保湿してから塗ります。
『ニキビケアの順番(ベピオ/ディフェリン/デュアック/エピデュオ/ヒルドイド/化粧水/乳液/日焼け止め)』
まとめ
塗り薬は種類が多いから、塗り方・回数・順番は一般化しづらいんだ。
でも、ジャンル別(水虫薬、ステロイド、保湿剤…)に分けると、ある程度基本的なルールがあるんだね。
どのジャンルの塗り薬も、正しい塗り方を守らないと期待した効果を得られないよ。
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