塗り薬の軟膏とクリームの違いは基剤!吸収率、使用感で使い分ける

塗り薬
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内服薬のカプセルと錠剤の効果が同じように、塗り薬の軟膏とクリームの効果も同じです。

なぜなら、剤形(軟膏、クリーム、ローションなど)によって違いが出ないようにメーカーが基剤を調整して薬を作っているからです。

 

とはいえ、軟膏、クリームでは使用感の違いがあるため、なかなかそうは感じられないのも事実です。

 

塗り薬を使った治療においては、主成分と同じくらい基剤の選択がキーポイントです。

基剤により、使用感、吸収率、吸収速度の違いがあります。

塗り薬(軟膏、クリーム)の皮膚での吸収

軟膏やクリームを皮膚に塗っても、主成分が皮膚で吸収されなければ効果を発揮しません。

異物を体内に入れないように、皮膚にはバリア機能が働いています。

 

皮膚への吸収経路は何通りかありますが、

吸収スピードや吸収量に最も影響を与えるのは、皮膚のバリア機能を直接突破する経路です。

塗り薬の主な皮膚吸収経路とバリア機能

皮膚のバリア機能

皮膚の吸収経路

  1. 塗り薬の主成分が、皮膚の一番上の表面部分(角質層)に吸収される
  2. 吸収した主成分が角質層で広がり、さらに奥の層(角質層→真皮層→皮下組織)に吸収される

塗り薬も異物の一種ですので、皮膚にはバリア機能でブロックされてしまいます。

塗り薬をいかに皮膚に浸透させるかが重要です。

塗り薬(軟膏、クリーム)の主成分と基剤

軟膏やクリームなどの塗り薬は、すべてが主成分でできているわけではありません。

少し驚くかもしれませんが、塗り薬の主成分はたいてい1%以下(後述)です。
そのわずかな主成分が皮膚に吸収されることで、初めて効果を発揮するのです。

塗り薬(軟膏、クリーム)の主成分と基剤

 

塗り薬の主成分は、基剤などに溶け込ん状態で安定しています。

塗り薬が皮膚で効果を得るためには、主成分を基剤などからはがして、角質層に吸収させる必要があります。

使用している基剤によっては、はがれやすさや皮膚への吸収に違いがあります。

軟膏とは?クリームとは?その違い

マイザー軟膏とマイザークリーム

マイザーの軟膏とクリームを例に挙げて、軟膏とクリームの基剤による使用感の違い、メリット、デメリットを説明します。

 

どちらの塗り薬も、0.05%(1g中に0.5mg)が主成分で、残りの99.95%は基剤を含む添加物です。

マイザーの軟膏とクリームの添加物・基剤の違い

軟膏の使用感と皮膚への吸収率

マイザー軟膏の基剤は、脂溶性油脂性)成分の白色ワセリンを主として、他に5種類添加物が含まれています。

白色ワセリンはこちらの記事で解説中
プロペト(白色ワセリン)で美容美肌対策!?保湿効果、副作用 顔は?

 

軟膏のメリット

  • 皮膚の保護に優れる
  • 皮膚への刺激が少ないため、あらゆる皮膚症状に対応できる

 

軟膏のデメリット

  • べとべとする(使用感)
  • 皮膚への吸収率がやや低い

クリームの使用感と皮膚への吸収率

マイザークリームは水溶性と脂溶性の両方の基剤が使用されています。

しかし、水溶性成分と脂溶性成分は通常混ざりません。
(水と油が混ざらない)

クリームは乳化という現象を使って、水溶性成分と脂溶性成分を混合しています。

乳化とは
本来混ざりあわないものに、乳化剤を加えて均一に混合することです。
クリームは油脂性成分ベースと水性成分ベースの2パターンがありますが、クリームは水溶性成分をベースとしたものが多いです

 

乳化には水溶性成分(グリセリンなど)を使います。
そのため、クリームは軟膏と比べると腐りやすいです。(水は腐りやすい)
腐敗防止のために、添加物に防腐剤を使います。

マイザークリームには、軟膏にはない乳化剤や防腐剤などが含まれています。
添加物は基剤を含めて12種類と多くなります。
(マイザー軟膏は5種類)

そのため、クリームは、基剤による副作用(かゆみなど)が軟膏に比べて高くなります

添付文書によると、マイザーの副作用は、軟膏0.87%、クリーム1.31%です。

 

クリームのメリット

  • ベタツキが少ない(使用感)
  • 皮膚への吸収率が高い

 

クリームのデメリット

  • 添加物が多いため、皮膚を刺激することがある
    (皮膚症状によっては使用不可)
  • 混合すると乳化が破壊されることがあるため、安定性に欠ける
  • かぶれなどの副作用が軟膏より起こりやすい

軟膏とクリームの皮膚吸収率の違い

塗り薬は混合することで、効果が上がる場合もあります

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軟膏の吸収

軟膏は、脂溶性基剤を使用しているものが多いです。

皮膚の一番表面部分(角質層)は、脂溶性が高いため脂溶性の主成分は吸収されやすいです。

脂溶性同士の主成分と基剤は、安定しているため、なかなか主成分が基剤からはがれようとしません。

つまり、主成分を角質層と基剤で奪い合います。

軟膏主成分が角質と基剤で奪い合う図

矢印の太さが吸収力の強さを示す

クリームの吸収

クリームは水溶性成分をベースとしているものが多いです。

軟膏と同じように、主成分を角質層と基剤で奪い合いますが、基剤が水溶性成分をベースとしているものが多いため、主成分は比較的角質層へ移行しやすいです。

軟膏の主成分を角質層と基剤で奪い合う

矢印の太さが吸収力の強さを示す

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塗り薬の体の場所別吸収率の違い

あまり知られていないことかもしれませんが、
塗り薬は塗る場所によって吸収率が違います。

 

こちらは、ステロイド成分(ヒドロコルチゾン)を腕の内側に塗った吸収率を1として、他の部位を比較した図です。

ステロイド軟膏の吸収率(体の正面)

ステロイド軟膏の吸収率(背中側)

 

皮膚のうすい首から上は比較的塗り薬は吸収しやすいですが、手のひらや足の裏は皮膚が厚いため塗り薬の吸収率はよくありません。

主なステロイド軟膏の強さの強弱

ステロイド軟膏は、成分によって強さの強弱があります。

薬の強さ 商品名 成分名
ストロンゲスト
(最強)
デルモベート クロベタゾールプロピオン酸エステル
ダイアコート ジフロラゾン酢酸エステル
ベリーストロング
(かなり強力)
マイザー ジフルプレドナート
アンテベート 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン
リンデロン‐DP ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
ネリゾナ 吉草酸ジフルコルトロン
トプシム フルオシノニド
ビスダーム アムシノニド
フルメタ モメタゾンフランカルボン酸エステル
ストロング
(強力)
メサデルム プロピオン酸デキサメタゾン
エクラー デプロドンプロピオン酸エステル
ボアラ デキサメタゾン吉草酸エステル
リンデロン‐V
(※リンデロン‐VG)
ベタメタゾン吉草酸エステル
ベトネベート
(※ベトネベートN)
ベタメタゾン吉草酸エステル
プロパデルム ベクロメタゾンプロピオン酸エステル
リドメックス プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
フルコート
(※フルコートF)
フルオシノロンアセトニド
ミディアム
(中)
アルメタ アルクロメタゾンプロピオン酸エステル
ロコイド ヒドロコルチゾン酪酸エステル
キンダベート クロベタゾン酪酸エステル
ウィーク
(弱い)
プレドニン プレドニゾロン

※抗生剤との合剤

 

ステロイド軟膏は「薬の強さ」の表現が誇張されているため、若干恐怖を感じられる方も少なくないと思います。

「ストロング=標準」のイメージで大丈夫です。

同じランクでも、上位に記載があるから単純に強いというわけではありません。

ステロイド軟膏の強さの比較(違い)

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アンテベートはアルメタより強さが上位のため、効果が高い(強い)と言う方がいます。
半分は当たっていますが、半分は間違っています。

医師は、ステロイド軟膏の強さ、塗る場所、皮膚の状態などを考慮して使う塗り薬を決定しています。

 

塗り薬は、塗る場所によって吸収率が違うため、
ステロイドの強さの強弱のみで、一概に塗り薬の効果を比較できません

ステロイド軟膏の効果の比較を質問されると返答に困ってしまいます。

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皮膚の状態による塗り薬の皮膚吸収の違い

皮膚のバリア機能を突破が、塗り薬の効果のキーワードでした。

もし、そのバリア機能が低下していたらどうなるのでしょうか?

もちろん、塗り薬の吸収率などが高まるため、効果が上がると考えられます。

バリア機能が低下している状態とは

  • 皮膚に傷がある部分
  • アトピー性皮膚炎のある部分
    (角質の水分量の減少)
  • 湿疹の症状が出ている部分

湿布の添付文書に、次のようなことが記載されているのは、バリア機能低下による吸収率を考えてのことなのです。

  • 損傷皮膚および粘膜に使用しないこと
  • 湿疹または発疹の部位に使用しないこと
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まとめ

  1. 軟膏は塗る場所を選ばないことが多い
  2. クリームは塗る場所の皮膚の状態によって使えない場合がある
  3. 塗り薬の使用感の違いは、基剤の違い
  4. クリームは、軟膏と比べると添加物が多いため、副作用を起こしやすい
  5. ステロイド軟膏の効果は、強さの強弱のみでは語れない
  6. 塗り薬は、塗る皮膚の場所によって吸収率が違う
  7. クリームやローションは伸びがいいため、軟膏と比べてうすく塗る傾向がある
  8. クリームやローションも軟膏と同じ量を塗らないと、軟膏と同じ効果を得られない

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