薬代はどこの薬局でもらっても同じ値段ではありません。
薬局の薬代には、薬剤師が調剤する時に発生する調剤料や、薬の説明するときに発生する管理料などが含まれるからです。
薬局の取り扱い処方箋枚数や、営業形態、ジェネリック(後発医薬品)の備蓄状況などにより算定できる加算なども違います。
一体どのようにして、薬代が決まっているのでしょうか?
薬局で支払う薬代の総額は調剤報酬と言われています。
=調剤基本料
+基準調剤加算
+後発医薬品調剤体制加算
+調剤料
+加算料
+薬学管理料
+薬剤料
+特定保険医療材料等
調剤報酬(薬代)の前半部分、調剤基本料、基準調剤加算、後発医薬品調剤体制加算を解説します。
健康保険の単位は「点」です。1点=10円。
3割負担の場合は、1点3円の自己負担です。
調剤基本料
調剤基本料とは
調剤基本料とは、薬局が処方箋を受付するときに発生する料金で、薬局の調剤報酬(薬代)の土台です。
調剤基本料は、処方箋の月間受付枚数、薬局営業時間の状況、医薬品卸との薬の納入価格の報告の状況などにより点数が違います。
2016年の調剤報酬改定前は、多くの薬局が調剤基本料41点を算定していました。
2016年の調剤報酬の改定後、調剤基本料1~調剤基本料5まで細かく分かれました。
解説の都合上、調剤基本料3からスタートします。
※調剤基本料には例外規定(通常は調剤基本料2であるが、ある条件を満たせば調剤基本料1が算定できる)が多くあります。
調剤基本料3
調剤基本料3は20点です。
調剤基本料3を算定する薬局のイメージは、中規模以上の調剤薬局チェーンで、多くの処方箋を特定の病院・クリニックから受付している薬局です。
具体的には、次の2つの条件を満たす薬局が調剤基本料3を算定しています。
- 処方箋受付回数が月4万回を超えるグループに属する薬局
-
特定の医療機関からの処方箋集中率が95%を超える。
もしくは、医療機関と不動産が賃貸借関係にある薬局
医療機関と不動産が賃貸借関係にある薬局の例
- クリニック:大家
- 薬局:借主
クリニックの土地(建物)に薬局を建てて(入居して)、薬局を営業している。
調剤基本料2
調剤基本料2は25点です。
調剤基本料2を算定する薬局のイメージは、病院・クリニックから多くの処方箋を受付している薬局です。
具体的には、次のいずれか条件を満たす薬局が調剤基本料2を算定しています。
- 処方箋受付回数が月4000回を超え、特定の医療機関からの処方箋集中率が70%を超える薬局
- 処方箋受付回数が月2000回を超え、特定の医療機関からの処方箋集中率が90%を超える薬局
- 特定の医療機関からの処方箋受付回数が月4000回を超える薬局
調剤基本料1
調剤基本料1は、調剤基本料の中では最高点数の41点です。
調剤基本料1を算定する薬局のイメージは、チェーン薬局でもなく、多くの処方箋を受付する大規模薬局でもない普通の薬局です。
ただし、調剤基本料1を算定するためには妥結率が50%を超えていなくてはなりません。
妥結率とは
総額は薬価ベース
妥結率を簡単に説明すると、仕入れた薬全体に対して卸値がどの程度決まっているか。その割合のことです。
小売業は、卸値を交渉して決めてから商品を買います。
しかし、薬局は薬を在庫しないわけにもいきません。
先に薬を暫定卸値で入れてから、後で実際の卸値を交渉するのが慣例です。
卸値を決めずに薬を入れ続けるのです。
(変わってるでしょ?)
2014年の調剤報酬改定で、毎年4月1日から9月30日までの妥結率を、毎年10月31日までに厚生局に報告する義務が課せられました。
そして、妥結率50%以下で調剤基本料が減点されるルールにされたのです。
要するに、10月までに卸値を交渉して決めなさいということです。
薬局の受付時間のルール
調剤基本料4
調剤基本料4は31点です。
調剤基本料1を算定できる条件を満たしているにも関わらず、妥結率が50%以下の場合、調剤基本料4です。
調剤基本料5
調剤基本料5は、調剤基本料では最低の19点です。
調剤基本料2を算定できる条件を満たしているにも関わらず、妥結率が50%以下の場合、調剤基本料5です。
基準調剤加算
基準調剤加算の点数
2014年調剤報酬改定 | 2016年調剤報酬改定 |
---|---|
基準調剤加算1:12点 | 基準調剤加算:32点 |
基準調剤加算2:36点 |
2016年の調剤報酬改定前までの基準調剤加算は、無・1・2の3択でしたが、調剤報酬改定後は、基準調剤加算はあり・なしの2択になりました。
基準調剤加算の算定要件
- 薬局に備蓄する薬の数
- 薬局の営業時間
- 受付している医療機関の集中率
- 後発医薬品(ジェネリック)の調剤率
- 在宅医療の実施状況
- 薬剤師の研修状況
- 管理薬剤師の実務経験 など
基準調剤加算は、一定の基準を満たしている薬局が算定しています。
基準を満たしていない薬局は未算定です。
2016年の調剤報酬改定前までは、基準調剤加算1を算定している薬局が多かったです。
しかし、2016年の調剤報酬改定後は算定要件がかなり厳しくなりました。
基準調剤加算を算定できる薬局は、限定されるでしょう。
後発医薬品調剤体制加算
後発医薬品調剤体制加算の点数
点数 | 2014年 | 2016年 | |
---|---|---|---|
後発医薬品調剤体制加算1 | 18点 | 55%以上 | 65%以上 |
後発医薬品調剤体制加算2 | 22点 | 65%以上 | 75%以上 |
後発医薬品調剤体制加算には、後発医薬品調剤体制加算1と2があります。
後発医薬品の調剤率によって算定できる点数に違いがあります。
2016年の調剤報酬改定後、後発医薬品調剤体制加算の点数は変わりませんでしたが、後発医薬品調剤体制加算の算定条件である後発医薬品の調剤率が底上げされました。
後発医薬品調剤体制加算の算定要件
後発医薬品調剤体制加算は、
- 後発医薬品の調剤率が
- 一定の期間(過去3カ月間)
- 一定の割合(65%以上)
を満たす薬局が算定できます。
基準を満たしていない薬局は未算定です。
後発医薬品調剤体制加算は、過去3カ月間の後発医薬品の調剤率の実績を毎月再考するため、後発医薬品調剤率が65%と75%付近の薬局は、毎月点数が変わる可能性があります。
厚生労働省の後発医薬品の数量目標
調剤報酬改定のたびに、求められる後発医薬品調剤率が上がっていくのには訳があります。
厚生労働省には、後発医薬品の数量ベースの目標値があり、目標を達成するためです。
厚生労働省の数値目標
- 2017年
後発医薬品の数量ベースで70%以上 - 2020年までに
後発医薬品の数量ベースで80%以上
次の調剤報酬改定は2018年です。
そのとき、後発医薬品調剤体制加算も基準調剤加算のように2択になるのでしょうか。
後発医薬品調剤率80%以上で、20点?
2020年の調剤報酬改定では、基準調剤加算に後発医薬品調剤体制加算の要件も追加してくるのでしょうか。
薬局暗黒時代到来です。
まとめ
- 2016年3月までは、多くの薬局が調剤基本料41点を算定してきたが、2016年の調剤報酬の改定により、調剤基本料41点(調剤基本料1)を算定できない薬局が増える
- 調剤薬局チェーンは調剤基本料2か調剤基本料3が多い
- 基準調剤加算1を算定してた薬局は、少なくとも在宅業務に参加しなければ、基準調剤加算を算定できない
- 基準調剤加算2を算定してた薬局も、他の算定要件で基準調剤加算を算定できなくなる可能性がある
- 調剤報酬の改定ごとに、求められる後発医薬品調剤率が上がっていくのにはわけがある
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