薬剤師として皮膚科を担当していると、口にはせずとも心の声が聞こえてくることがあります。
「ステロイドは怖い副作用があるからできるだけ使いたくない!」
そこで、医師が考えるのがヒルドイドやワセリンとの混合です。
「ステロイドはヒルドイドやワセリンで薄めているから安心して使って!」
これが医師の精一杯の譲歩でしょう。
しかし実際は、ステロイドはヒルドイドやワセリンで薄めたとしても強さは変わりません。むしろ吸収率が上がり、効果が強くでる可能性があります。
ステロイドはワセリンで薄めても弱くならない
ステロイドには5段階の強さがあります。
強さ | ステロイドの例 |
---|---|
ストロンゲスト(最強) | デルモベート |
ベリーストロング(とても強い) | マイザー |
ストロング(強い) | リンデロンVG |
マイルド(普通) | キンダベート |
ウィーク(弱い) | オイラックスH |
※リンデロンVGとオイラックスHは配合剤です。
『とびひにステロイド軟膏はOK?リンデロンVG、テラコートリルの違い』
例えば、デルモベート軟膏0.05%とワセリンを1:1で混合すると、次のように考えるのが普通です。
「デルモベート軟膏の濃度は0.025%になる→強さも半分になる」
しかし実際は、ステロイドは薄めれば強さもそれに応じて弱くなるほど単純ではありません。
単純に軟膏を混合すれば、効果が100%→50%→25%となるなら、
ストロンゲストのステロイドにワセリンを混合すれば、自家製ベリーストロングの混合軟膏や自家製ストロングの混合軟膏ができあがります。
それが可能であれば、ストロンゲストからウィークの強さのステロイドをメーカーが作る理由がありません。
ステロイドをヒルドイドで薄めると強くなる
混合軟膏を考え方ひとつで解決できるわけではありませんが、
ステロイドにヒルドイドソフト軟膏、パスタロンソフト軟膏のような油脂性ベース基剤(W/O型)の保湿剤を混ぜると、皮膚への浸透力が上がることが知られています。
出典:ノバルティスファーマHP
『ケラチナミンクリームの保湿効果と副作用 ウレパールとの違いは?』
ヒルドイドソフト軟膏/パスタロンソフト軟膏
軟膏と名前が付いていますが、乳化剤を使った油脂性成分をベースとしたW/O型クリームです。クリームは軟膏に比べて皮膚への浸透性が高いです。
O/W型クリームとW/O型クリームはコチラの記事で解説しています。
ステロイドとヒルドイドやワセリンを混合する理由
ステロイドをヒルドイドやワセリン薄めても、強さをコントロールできないことがわかりましたね。
では、なぜ医師このようなことを言ったのでしょうか?
「ステロイドはヒルドイドやワセリンで薄めているから安心して使って!」
理由はふたつ考えられます。
- ステロイドの恐怖心をやわらげるため
(安心感を与えるため) - ステロイドの効果を高めたいから
(多くの方がステロイドをうすく塗るため、薬が効かない)
とにかく薬を使わないことには良くならないのです。
『ぜひ、確かめてください!ヒルドイド・プロペト(ワセリン)・混合薬』
ステロイドとヒルドイドの順番
ステロイドはヒルドイドやワセリンと混合する使い方もありますが、併用して順番に塗る使い方もあります。
混合軟膏のくわしい解説はコチラ!
『皮膚科の混合軟膏 塗り薬の使用期限と保存のルールはある?』
どちらを先に塗っても効果は変わりませんが、ヒルドイド(ワセリン)→ステロイドの順番で使うのが理にかなっています。
詳しくはコチラの記事で解説しています。
『発表!ヒルドイドの順番 化粧水/乳液/ニキビ薬/ステロイド』
まとめ
- ステロイドをワセリンで薄めても強さは変わらない
- ステロイドをヒルドイドで薄めると、逆に強くなる(浸透力が上がる)
- ヒルドイドを先に塗ってからステロイドを塗るのがセオリー
- 医師は恐怖心を和らげるため(良い意味で)ウソをつくことがある
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