病院・クリニック・薬局などの医療費領収書は割引クーポンと思って年末まで保管しておいてください。
なぜなら、医療費控除の還付金をかしこく利用すると、10万円を超えた年間医療費の15%~55%をキャッシュバックできるからです。
ただし、医療費控除の還付金を最大限に受けるためには戦略的な確定申告が必要です。
医療費控除の還付金は控除を受ける人によってキャッシュバック(還付金)が倍以上変わる場合があるからです。
本記事は次の2点を主に解説します。
- 医療費控除の還付金の簡易計算方法(シミュレーション)
- 医療費控除の還付金を最大化する確定申告方法
医療費控除 所得税還付金の簡易計算方法
医療費控除で還付される税金は所得税と住民税があります。しかし、税率が違うため分けて考える必要があります。
まず、所得税分の医療費控除の還付金からみていきましょう。
所得税がいくら戻るかは、次の簡易計算式で計算できます。
医療費控除の還付金の簡易計算式(所得税)
計算式A
【医療費 -10万円】× 所得税率
計算式B
【医療費-(合計所得金額の5%)】× 所得税率
- 総所得金額等が200万円を超える→計算式A
超えない→計算式B - 【 】で計算された値を、医療費控除といいます
- 医療費控除の上限額は200万円です
- 医療保険などで補てんされた金額は、医療費から差し引きます
総所得金額等
収入が給与のみの場合は、給与所得控除後の金額(下図①)
※所得税率については後で解説
医療費控除 所得税還付金の計算実例 (シミュレーション)
※平成28年から源泉徴収表の様式は一部変更されています
『【給与明細の見方】給与と賞与から源泉徴収(天引き)される社会保険料、所得税の計算』
「50万円の医療費を自己負担した」とき、所得税還付金がいくらなのかを計算をしてみましょう。(シミュレーション)
まず、合計所得金額(課税対象金額)を計算します。
合計所得金額(課税対象金額)
=給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額
=①-②
=1,690,380円
所得税速算表(所得税率表)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
「所得税速算表」から課税対象金額約169万円の所得税率は5%です。
【総所得金額等 > 200万円】 ですので、計算式Aを使います。
=【医療費-10万円】×所得税率
=【50万円-10万円】×5%
= 20,000円※1
※1 所得税を計算するとき、千円以下を切り捨てるため還付金に少々の誤差がでます
※1 所得税率が医療費控除により変わるときは、還付金に誤差がでます
医療費控除 住民税還付金の簡易計算方法
医療費控除は住民税にも適応されます。
医療費控除の還付金の簡易計算式(住民税)
計算式C
【医療費-10万円】×10%(住民税率)
計算式D
【医療費-(合計所得金額の5%)】
×10%(住民税率)
総所得金額等が200万円を超えるときは計算式C、超えないときは計算式Dを使います。
『初心者も楽勝!医療費控除明細書の書き方(エクセル、医療費集計フォーム、手書き)』
医療費控除 住民税還付金の計算実例 (シミュレーション)
住民税分の医療費控除の還付金がいくらなのかを計算をしてみましょう。
【総所得金額等 > 200万円】 ですので、計算式Cを使います。
=【医療費-10万円】×10%
=【50万円-10万円】×10%
= 40,000※2
※2 所得税と住民税は控除額が違うため還付金に少々の誤差がでます
サラリーマンは住民税は給与から特別徴収(給与天引き)されます。所得税還付金と違い、確定申告書上では住民税還付金を確認できません。
医療費控除の確定申告を行った年の6月以降の給与から約3,300円(40,000円/12カ月)が減額されます。
=20,000円 + 40,000円
=60,000円
今回のケースでは、約6万円が医療費控除の還付金です。
医療費控除の還付金を増やそう
医療費控除の還付金を最大化するためには、家族で一番稼いでいる人のところへ医療費をまとめて、その人の名義で確定申告します。(医療費は合算が可能です)
所得税速算表からわかるように、支払った医療費が同じでも、課税される所得税率によって医療費控除の還付金は違うからです。
今回のケースで、医療費50万円分の還付金をシミュレーションしてみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | シミュレーション結果 (所得税還付金) |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | ¥20,000 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | ¥40,000 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | ¥80,000 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | ¥92,000 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | ¥132,000 |
1,800万円超え 4,000万円以下 | 40% | ¥160,000 |
4,000万円超 | 45% | ¥180,000 |
このように、高所得者ほど還付金は多くなります。だれが医療費控除を行うかで還付金は違うのです。
医療費控除の医療費は合算できる
ひとりの医療費が年間10万円を超えることはないかもしれません。
しかし、医療費控除を受ける本人分の医療費の他にも、生計を一にする(せいけいをいつにする)妻や親族のために支払った医療費や交通費も医療費控除の対象です。
『医療費控除の交通費 領収書がない、付き添いなど どこまでOK?』
税金関係の親族の範囲は、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族です。
血がつながっている人のことで、父、母、祖父、祖母、兄弟、子、孫などです。
配偶者の血族のことで、配偶者の父母、配偶者の兄弟などです。
自分からみて、親族関係の深さ(近さ)を示す等級です。
1親等:父母、子供など
2親等:祖父母、孫、兄弟など
3親等:曾祖父母、ひ孫、伯父叔母、甥姪など
赤色:血族 青色:姻族 数字:親等
まとめ
- 医療費は親族で合算できる
- 合算の理解に必要なキーワードは「生計を一にする」
- 高所得者ほど所得税率は高くなるため、
医療費は家族で一番稼いでいる人のところへまとめて確定申告するのが、最も節税効果が高い(還付金が多い) - 住民税率は10%固定のため、所得の違いによる住民税の還付金額の差はない
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