子供のころに水疱瘡(みずぼうそう)にかかった記憶があるでしょうか?
水疱瘡は1度かかると生涯免疫を得られるため、2度と水疱瘡になりません。
しかし、水痘・帯状疱疹ウイルスは、水疱瘡が治った後も知覚神経の奥にひそみ、免疫力が低下したときなどに再活動することがあります。
そのことが原因で「帯状疱疹」という痛みを伴う病気に発展します。
水疱瘡と帯状疱疹(たいじょうほうしん)の原因ウイルスは同じで「水痘・帯状疱疹ウイルス」といいます。
※水疱瘡の正式名称は「水痘(すいとう)」です。
ヘルペス薬の正式名称は「抗ヘルペスウイルス薬」です。
人間に感染する主なヘルペスウイルス
- 単純ヘルペスウイルス1型
口唇ヘルペス
カポジ水痘様発疹症など - 単純ヘルペスウイルス2型
性器ヘルペスなど - 水痘・帯状疱疹ウイルス
水疱瘡
帯状疱疹など
水疱瘡と帯状疱疹の発症原因の違い
水疱瘡の記事を先に読めば、この先の帯状疱疹の理解が深まります
「帯状疱疹は人からうつる」という方がいますが、それは違います。
水疱瘡には潜伏期間があり、感染してもすぐに症状がでません。
そのため、知らない間に人から人へうつって広がっていきます。
(水疱瘡は保育園・幼稚園などでは集団感染が多い)
一方、帯状疱疹は、子供のときに感染した水疱瘡ウイルスの残りの再活動が原因で、水疱瘡に感染した人であれば誰でも起こる病気です。
※帯状疱疹は人にうつることがありますが、うつった人は水疱瘡として発症します。
水痘・帯状疱疹ウイルスが再活動する原因
水痘・帯状疱疹ウイルスの再活動は、免疫力の低下と加齢が原因といわれています。
- 過労
- ストレス
- 睡眠不足
- 加齢
どの年齢層でも水痘・帯状疱疹ウイルスの再活動は起こる可能性がありますが、50歳以上になるとウイルスの再活動が起こりやすいことがわかっています。
帯状疱疹と水疱瘡の治療の違い
帯状疱疹と水疱瘡では、治療方針に違いがあります。
水疱瘡は自然に治る
子供の水疱瘡は、放置してもウイルスの数が免疫力で抑えられ、ある程度ウイルスが減ると自然に治ります。
水疱瘡の重症化を抑えるためにヘルペス薬などが使われることもありますが、ヘルペス薬はウイルスの増殖を抑えるだけで、全ウイルスを死滅できません。
水疱瘡が治ってもウイルスは体の中で生き続け、ウイルスの再活動で帯状疱疹を発症させます。
帯状疱疹は自然に治さない (ヘルペス薬で治療する)
帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛がかなり厄介な病気であるため、帯状疱疹は早期にヘルペス薬で治療を開始します。
帯状疱疹と水疱瘡の症状の違い
帯状疱疹と水疱瘡の皮膚症状は似ていますが、
帯状疱疹は皮膚の症状だけでなく、神経に関連する症状が出る違いがあります。
帯状疱疹と水疱瘡の主な皮膚症状は水ぶくれで、帯状疱疹の神経に関連する症状は痛みです。
帯状疱疹の皮膚症状
帯状疱疹の皮膚症状は、水疱瘡と似たような経過をたどり、ほぼパターン化しています。
※帯状に症状が出るため、実際はもっとグロテスクです
- 虫さされや、何かにかぶれたような、小さな赤いブツブツ症状がでる
それが帯状につながり、目立つようになる - 水ぶくれ(水泡)になる
- 水ぶくれはかさぶたとなり、自然にかさぶたが取れる
帯状疱疹と水疱瘡の皮膚症状の違い
帯状疱疹は、水疱瘡のように全身に水ぶくれができるのではなく、体の左右どちらか一方の知覚神経に沿って集中して帯状に皮膚症状が出るのが特徴です。
やぶれやすく、細菌の感染も起こりやすいです。
帯状疱疹の皮膚症状は、知覚神経のある全身のどこにでも出ますが、胸から背中にかけて最も多くみられ、50%以上が上半身に症状が出ます。
水ぶくれが出た場所は、神経が傷つくと麻痺(感覚の低下)を起こすことがあります。
帯状疱疹は顔にも症状が出る場合もあり、美容上の問題となったり、顔面神経麻痺を起こす原因にもなります。
帯状疱疹の炎症性の痛みの症状
水疱瘡にはかゆみの症状がありますが、帯状疱疹は痛みの症状が出ます。
帯状疱疹は、体内でひそんでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活動が原因でしたね。
ウイルスはひそんでいた知覚神経付近で増殖し、神経に沿って炎症を起こします。
そして、神経を傷つけながら皮膚の表面に出てきます。
痛みは皮膚症状がでる1~2週間前からにムズムズするという違和感から、ピリピリする・チクチクするという痛みの症状が出ます(炎症性の痛み)。
痛みの程度は、さまざまな表現があり個人差があります。
- 軽度のもの(ピリピリ・チクチク)
- 突き刺すような痛み
- 焼かれるような痛み
- 眠れないほどの猛烈な痛み
帯状疱疹の痛みのピーク
通常の帯状疱疹の痛みのピークは、皮膚の症状が出てから1週間程度で、皮膚症状が治るにつれて痛みも消失します。
その後もピリピリ感やズキズキ感が残り、痛みのピークがない場合もあります。
帯状疱疹が治った後も痛みが続く場合は、帯状疱疹後神経痛(神経性の痛み)である可能性が高いです。
50歳以上の方や糖尿病などの神経に関わる病気がある方は、帯状疱疹後神経痛になりやすいことが分かっています。
帯状疱疹そのものを予防する帯状疱疹ワクチンも少しずつ広まってきています。
帯状疱疹は名科にいけばいい?
水疱瘡とは違い、帯状疱疹はたいてい一生に1回なるかどうかという頻度の病気です。
皮膚の症状がない段階の炎症性の痛みは、初めて体験する痛みですので、次のような病気と間違える場合もあります。(症状が似ている)
- 内科(頭痛、盲腸、腹痛)
- 整形外科(肋間神経痛、腰痛)
正解は皮膚科です。
まとめ
- 水疱瘡と帯状疱疹の原因ウイルスは同じで、水痘・帯状疱疹ウイルス
- 帯状疱疹は、人からうつらない
- ヘルペス薬はウイルスの増殖を抑えるだけで、すべてのウイルスを死滅できない。そのためウイルスは体の中で生き続ける。
- 帯状疱疹は、子供のときに水疱瘡にかかったときのウイルスの再活動が原因で発症する
- 帯状疱疹の2大症状は、皮膚症状(水ぶくれ)と神経症状(痛み)
帯状疱疹と水疱瘡の違い
帯状疱疹 | 水疱瘡 | |
---|---|---|
原因 | ウイルスの再活動 | ウイルスの感染 |
治療 | ヘルペス薬 | 自然治癒する |
症状 | 痛み | かゆみ |
皮膚症状 | 帯状に集中的 | 全身 |
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