とびひに効果のある塗り薬といえば抗生物質です。
ただ、抗生物質は種類が多く、思い出せるだけでもこれくらいあります。
ゲンタシン、アクアチム、テラマイシン、テラコートリル、リンデロンVG、フシジンレオ…。
どれを取り上げようか、かなり迷いました。
まず、古くから(1970年発売!)とびひ使われているゲンタシンは外せないでしょう。
そして、新タイプのアクアチムと何がどう違うのか?これが興味深いです。
さまざまな角度から比較してみることにしました。
※とびひの正式な病名は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」です。
とびひとは
とびひは夏に集中的に起こりやすいです。
なぜなら、夏はとびひになる原因が多いからです。
- 肌の露出が多くなる
→転んですり傷になり化膿する
→化膿が悪化 →とびひ - 虫刺されやあせも
→掻きむしって悪化 →とびひ
とびひには、水ぶくれができるタイプ(水疱性膿痂疹:すいほうせいのうかしん)と、
かさぶたができるタイプ(痂皮性膿痂疹:かひせいのうかしん)の2種類があります。
子供がなりやすいとびひは水疱性膿痂疹です。
ゲンタシンとは
ゲンタシンはゲンタマイシンを主成分とするアミノグリコシド系抗生物質です。
抗生物質は風邪薬だと思っている方もいますが、実はほとんど効果がありません。
風邪の原因のほとんどはウイルス感染だからです。
抗生物質はウイルスには全く効きません。抗生物質が効くのは細菌です。
こちらの記事でも解説しています。
『抗生物質クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)は風邪に効果がある?』
ゲンタシンは軟膏とクリームの2種類がありますが、とびひに使うのはほぼ軟膏です。
そして、ゲンタシンとステロイドの配合剤が、あの有名なリンデロンVG軟膏です。
『ゲンタシンとリンデロンVGの違い とびひにはこう使うのがパーフェクト』
アクアチムとは
一方、アクアチムはナジフロキサシンを主成分とする世界初のニューキノロン系抗菌剤です。
アクアチムには軟膏、クリーム、ローションの3種類がありますが、とびひに使うのは主に軟膏です。
アクアチムクリームとローションはニキビに使う場合が多いです。
最近では、ゼビアックスローション(超アクアチムローション!?)もジワジワと使われている印象があります。
くわしくはこちらをチェック!
『1日1回じゃ満足できない?ゼビアックスローションの正しい使い方』
ゲンタシンとアクアチム 効く細菌の違い
先に解説した通り、子供がなりやすいとびひは水疱性膿痂疹でしたね。
水疱性膿痂疹の原因菌の多くは黄色ブドウ球菌ですので、その細菌に効くことがとびひ薬の絶対条件です。
ゲンタシン軟膏が効く細菌
ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(肺炎球菌を除く)、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌
ゲンタシン軟膏添付文書より
ゲンタシン軟膏はブドウ球菌属以外の多くの細菌にも効果があります。
ゲンタシン軟膏は1970年に販売されて以来、多くの皮膚感染症に使われている「キングオブ抗生物質」です。
アクアチム軟膏が効く細菌
一方、アクアチム軟膏はゲンタシン軟膏と比較すると効く細菌の種類が少ないです。
本剤に感性のブドウ球菌属、アクネ菌
アクアチム軟膏添付文書より
アクネ菌というのはニキビの原因菌です。
ですので、アクアチムはニキビに使われることも非常に多いです。
(アクアチムはとびひ薬というよりニキビ薬かもしれません)
ただ、アクアチム軟膏/クリーム/ローションでは、コレをとびひに使い、アレをニキビに使うという暗黙のルールがあります。
くわしくはこちらで解説しています。
『アクアチム軟膏/クリーム/ローション とびひに効果No.1はこれ!』
ゲンタシンとアクアチム 効果の違い
ゲンタシンの効果
(「とびひ」に限定した効果のデータはなし)
表在性皮膚感染症とは
黄色ブドウ球菌などの細菌が傷などに侵入して炎症を起こす感染症の総称。
<例>
- カミソリ負け(毛瘡:もうそう)
- 化膿性皮膚炎
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 毛のう炎
- 毛包炎
アクアチム軟膏の効果
アクアチム軟膏の毛包炎、とびひ・尋常性膿瘡に対する効果(有効率)は次の通りです。
病名 | 有効性 |
---|---|
毛包炎 | 93.8% |
とびひ・尋常性膿瘡 | 100% |
100%とは恐れ入りましたね。ナジフロキサシンの抗菌力の強さがうかがえます。
ゲンタシンとアクアチム 副作用の違い
ゲンタシン軟膏とアクアチム軟膏は、かゆみ、刺激感、赤みなどの副作用が起こる可能性があります。
(副作用頻度が明確となる試験は実施されていなため、副作用頻度は不明)
<参考>アクアチムクリームの副作用頻度
- かゆみ:0.84%
- 赤み:0.31%
ただし、同じ成分でもクリームは軟膏より副作用頻度が高いです。
その理由はこちらで解説しています
『塗り薬の軟膏とクリームの違いは基剤!吸収率、使用感で使い分ける』
ゲンタシンとアクアチム 塗り方、使い方の違い
ゲンタシン軟膏とアクアチム軟膏は塗る回数が違いますが、基本的な使い方は同じです。
- ゲンタシン軟膏:1日2~3回使う
- アクアチム軟膏:1日2回使う
<塗り方、使い方>
- 風呂で石鹸でキレイに洗う
(とびひ患部を清潔に保つため) - 膿が多い場合は膿をタオルなどでふきとる
- 軟膏を使う手(指)を石鹸で洗う
- 水ぶくれをつぶさないように、軟膏を必要部分に適量塗る
(とびひに少しかぶせるだけで十分な効果があります。ベタベタするまで塗る必要はありません)
医師の指示がない限り、とびひにガーゼを使う必要はありません
とびひは広がるものから、「とびひ周辺や皮膚全体に塗る」という方もいますが、耐性菌(特定の抗生物質に抵抗力を持った細菌)の問題からとてもおすすめできません。
ゲンタシンの使い方と耐性菌問題はこちらでくわしく解説中!
『とびひを悪化させるな!ゲンタシン軟膏の効果的な使い方はこうだ!』
ゲンタシン軟膏とアクアチム軟膏は、とびひが出ている患部のみに限定して使うべきです。
もし、とびひが悪化して広がるようであれば、それはゲンタシン(アクアチム)が効いていない可能性があります。
医師との相談が必要です。
『とびひにステロイド軟膏はOK?リンデロンVG、テラコートリルの違い』
ゲンタシンに市販はない
抗生物質の塗り薬は市販されていますが、ゲンタシンは市販されていません。
くわしくはこちらで解説しています。
『ゲンタシンに市販はない とびひにはテラマイシンorドルマイシンで代用OK!』
ゲンタシンとアクアチム 薬価(薬の値段)の違い
最後にそれぞれの薬価(2018年)を確認してみましょう。
薬剤名 | 1本10gあたりの薬価 |
---|---|
ゲンタシン軟膏 | 113円 |
アクアチム軟膏 | 345円 |
アクアチムは塗り薬で世界初のニューキノロン系抗菌剤というだけあって、薬価がゲンタシンの3倍します。
ゲンタシンが多くの皮膚病に使われる理由のひとつかもしれませんね。
とびひ塗り薬比較第2弾
『とびひの塗り薬 抗生物質フシジンレオ軟膏 VS テラマイシン軟膏』
まとめ
リンクをクリックすると記事内の対応する解説に戻ります。
- 子供のとびひ(水疱性膿痂疹)の原因菌は黄色ブドウ球菌が多くを占める
- ゲンタシン軟膏/クリームの主成分はゲンタマイシン(アミノグリコシド系抗生物質)
とびひにはゲンタシン軟膏を使うのがほとんど - アクアチム軟膏/クリーム/ローションの主成分はナジフロキサシン(ニューキノロン系抗菌剤)
とびひにはアクアチム軟膏を使うのがほとんど - アクアチムクリーム/ローションはニキビに使うことが多い
- ゲンタシン軟膏とアクアチム軟膏の効果の優越は不明
- ゲンタシン軟膏とアクアチム軟膏は、かゆみ、刺激感、赤みなどの副作用が起こる可能性がある
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