ムコダインの作用機序(薬が効果を表すメカニズム)から考えると、ムコダインで眠くなる確率はほぼゼロです。
しかしながら、薬剤師として内科を担当していると、「ムコダインは眠い」と訴える方に出あることがあります。
話を聞いてみると、ムコダインではなく一緒に飲んでいる薬が眠気を起こしていて、勘違いをしているパターンが圧倒的に多いです。
眠気を起こす犯人は、どの薬なのでしょうか?
ムコダインとは
ムコダインの主成分はカルボシステインです。
錠剤、ドライシロップ(DS)、シロップの3種類があります。
ムコダイン500mg錠が主に大人に使われ、ムコダイン250mg錠・DS・シロップが主に子供に使われています。
また、ムコダインには多くのジェネリックが発売されています。
ジェネリックとは、先発(ここではムコダイン)と同じ主成分で作られた、同等の効果を持つ安価な薬のことです。
カルボシステイン「○○」(○○にはメーカー名が入る)と記載された薬は、すべてムコダインのジェネリックです。
ムコダインの副作用
ムコダインは副作用の少ない薬で、副作用頻度はわずか0.91%です。
ムコダインの主な副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
食欲不振 | 0.24 |
下痢 | 0.17 |
腹痛 | 0.14 |
データの出典:ムコダイン添付文書
統計上では、ムコダインは眠気の副作用はありません。
しかし、ムコダインを飲むと眠い!とうったえる方がいるのも事実です。
『ムコダインは咳、鼻水、痰にすぐに効かない!ジワリと効くのを待とう』
ムコダインはなぜ眠い?
結論からいうと、ムコダインで眠気が起こっているのではなく、その併用薬に問題があります。
なぜなら、ムコダインは鼻水、咳、痰などの風邪症状を訴える方に処方され、その症状を和らげるための風邪薬の中に眠気を起こす真犯人がいるからです。
『メジコンとムコダインは咳・痰・風邪のゴールデンコンビだ!』
ムコダインとよくある飲み合わせ
風邪症状で使われる薬の例はこの通りです。
キプレス、シングレア、オノン
ロキソニン、カロナール、ボルタレン
※リンクをクリックすると薬の解説記事にジャンプします。
眠気の出やすい飲み合わせ
先ほどの薬の例で、眠気の出やすい飲み合わせは、鼻水・鼻づまり症状を抑えるために処方される「抗ヒスタミン薬」「PL顆粒」「ピーエイ」です。
メジコンは頻度は少ないですが、少し眠くなる可能性があります。
これらの薬は、ヒスタミンをブロックすることで効果を表します。
抗ヒスタミン薬は鼻で作用すると鼻水・鼻づまりを抑えますが、一部は脳にも作用するため、眠気、ふらつき、だるさ、集中力の低下などの副作用が起こる場合があります。
作用部位 | 効果 | 副作用 |
---|---|---|
目、鼻 | 花粉症 | – |
皮膚 | かゆみ | – |
脳 | – | 眠気・集中力の低下 |
ヒスタミンは集中力、活動、記憶などに関係している物質です。こちらの記事でくわしく解説しています。
『花粉症薬で眠くなるのは嫌!眠くならない抗アレルギー薬はこれだ!』
ムコダインと抗生物質の飲み合わせ
ムコダインは鼻水・痰がらみの咳によく使われますが、副鼻腔炎、滲出性中耳炎にも効果があります。
副鼻腔炎(ふくびくうえん)とは
蓄膿症のこと。
細菌などが副鼻腔に感染して炎症を起こし、鼻水、鼻づまり、後鼻漏(喉に鼻水が流れること)、頭痛、嗅覚障害などの症状を引き起こす
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)とは
鼓膜の奥の空洞に滲出液がたまり、耳のつまり、難聴(聴力の低下)を引き起こす子供に多い病気
副鼻腔炎は細菌感染を何とかしなくてはならないため、抗生物質を使う場合が多いです。
そのため、副鼻腔炎の治療では抗生物質-ムコダインの併用は多いです。
副鼻腔炎でよく使う抗生物質
- ワイドシリン・パセトシン(アモキシシリン)
- フロモックス(セフカペンピボキシル)
- メイアクト(セフジトレンピボキシル)
- クラリス(クラリスロマイシン)
細菌感染の疑いのある風邪に抗生物質が使われる場合がありますが、通常のウイルス感染で起こる風邪には抗生物質は効きません。
『クラリスロマイシン(クラリス/クラリシッド)は風邪には効かない!処方する理由は?』
まとめ
- ムコダインは副作用の少ない薬で、副作用頻度はわずか0.91%
- ムコダインの作用機序から考えると、ムコダインで眠くなる確率はほぼゼロ
- ムコダインで眠気が起こっているのではなく、その併用薬に問題がある
- 眠気を起こす薬は、「抗ヒスタミン薬」「PL顆粒」「ピーエイ」
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