妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠 高血糖値は妊婦と赤ちゃんに悪影響

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糖尿病であっても血糖値が良ければ、糖尿病で無い人と同じように妊娠して出産することができます。

しかし、血糖値が高い状態で妊娠することは、妊婦や赤ちゃんに悪い影響を与えます。

血糖値のコントロール不良時の赤ちゃんへの悪い影響のひとつが、奇形の確率の上昇です。

日本糖尿病・妊娠学会によると、妊娠初期のHbA1c(血糖値の指標のひとつ)が8.4%以上になると、20~30%の赤ちゃんが奇形を起こす可能性があるそうです。

血糖値の目標値は、学会によって微妙に異なります。
本記事では日本糖尿病・妊娠学会の血糖値の目標値で統一します。

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高血糖値は妊婦と赤ちゃんに悪影響

妊婦への影響 赤ちゃんへの影響
糖尿病性網膜症 先天奇形
糖尿病性腎症 巨大児
流産 死亡
早産 発育障害
妊娠高血圧症候群 心臓肥大
羊水過多 低血糖値症
巨大児による難産
肩甲難産

妊娠に関連する糖尿病の種類

妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠

糖尿病治療中の方が、妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」と言います。

妊娠によって発見された糖代謝異常のことを「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病 」と言います。

妊娠糖尿病」と「妊娠中の明らかな糖尿病 」は、診断基準が異なるため、別の病名が付けられています。

本サイトでは、簡略化のためこの2つの糖代謝異常をまとめて「妊娠糖尿病」と呼ぶことにします。

糖代謝異常
体内から放出されるホルモンと摂取糖分のバランスが崩れているため、血糖値値が基準値を超えてしまっている状態のこと

糖尿病合併妊娠(妊婦になる前から高血糖)

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赤ちゃんの奇形などの確率を減らすために、妊娠前から血糖値のコントロールをを心がけます。

重要なことは、妊婦になった後からではなく、赤ちゃんが欲しいと思ったとき、妊婦になる前から血糖値をコントロールすることです。

なぜならば、赤ちゃんの体の基本的な部分は、妊娠の初期(妊娠7週まで)に出来上がります。この時期に血糖値のコントロールが悪いと、奇形の頻度が高いことがわかっています。

しかし、妊娠したことに気付くのは早くても妊娠4~5週目以降です

妊娠に気付いてから血糖値を改善したのでは、遅いのです。

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妊娠前の血糖値の目標

HbA1cの目標値

妊娠前の血糖値の目標

  1. 食前(空腹時)血糖値値
    100mg/dL未満
  2. 食後2時間血糖値値
    120mg/dL未満
  3. HbA1c
    7.0%未満
  4. 糖尿病の合併症がない。もしくは、治療を受けて状態が安定している
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
血糖値コントロールの指標のひとつで、1~2ヶ月間の血糖値値変化の成績として利用されている。
HbA1cには、JDS値とNGSP値(国際基準値)があります。2012年4月1日以降は、NGSP値が用いられている。
6.5%以上が糖尿病型です。

妊婦になる前から取り組む計画妊娠

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糖尿病の3大合併症のうち、糖尿病性網膜症と糖尿病性腎症があると、妊娠することで、急速に合併症が進行することが分かっています。

妊娠前に糖尿病合併症の状態や血糖値のコントロールの状態をチェックして、問題なければ医師の許可をもらって妊娠すること「計画妊娠」と言います。

「妊娠に医師の許可?ほっといてよ」

という声が聞こえてきそうですが、それほど妊娠初期の血糖値は重要なことなのです。

また、血糖値がよくないまま妊娠し、急な血糖値の変動が原因で眼底出血が起きてしまうこともあります。

妊娠糖尿病の悪影響

共通して言えることは、血糖値が高い状態が続くと細かい血管がぼろぼろにされるということです。細かい血管は、主に目・腎臓・手足先に通っています。

糖尿病性網膜症(目)

糖尿病性網膜症は、糖尿病になってから10年以上経過すると発症することが多いです。
失明原因の第一位の病気です。

目には細い血管が張り巡らされています。

  1. 血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つき詰まりやすくなる
  2. 詰まってしまうと網膜(目で何かを見るために重要な役割を持つ膜)酸素が行き渡らなくなる
  3. 網膜が酸欠状態になる
  4. 目に新しい血管(新生血管)を増やして、酸素不足を補わなければならない
  5. 新生血管はもろいため、出血を起こしやすい
  6. 出血が原因で、網膜剥離を起こすことがある

糖尿病性腎症(腎臓)

糖尿病性腎症は、透析を受ける原因の第一位の病気です。
目と同様に腎臓にも細い血管が張り巡らされています。

  1. 血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つき詰まりやすくなる
  2. 腎臓の血管が傷つき詰まったりしてしまうと、老廃物をろ過することができなくなる

糖尿病性神経障害(手足指先)

手足の先に痛みやしびれといった症状が生じ、最終的には切断の原因となります。

糖尿病神経障害の原因

  • 仮説1:血糖値が高い状態が続くと、障害を起こす物質が神経細胞に蓄積するため障害が起こる
  • 仮説2:血糖値が高い状態が続くと、酸素や栄養が不足するため障害が起こる

妊娠糖尿病(妊婦になった後から高血糖)

妊娠糖尿病とは、妊娠が原因で起こった糖代謝異常のことでしたね。

妊娠とインスリンの働きを抑えるホルモンとインスリン抵抗性の関係図

妊娠すると胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモン(プロゲステロン、プロラクチン)の分泌量が増えます。そのため、妊娠中はインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性と言います)になり、血糖値値が上昇しやすくなります。

インスリン
インスリンは、すい臓で作られている血糖値効果作用をもつ唯一のホルモンです。

妊娠中の血糖値の目標

妊娠中の血糖値の目標

  1. 食前血糖値
    100mg/dL未満
  2. 食後2時間血糖値
    120mg/dL未満
  3. GA
    15.8%未満
  4. HbA1c
    正常範囲(6.2%未満)
GA(グリコアルブミン)
血糖値コントロールの指標のひとつで、1~2週間の血糖値値変化の成績として利用されている。通常の糖尿病はHbA1cを使うことが多いですが、妊娠糖尿病のように厳しく血糖値のコントロールを必要とする場合や、通常の糖尿病で治療薬を変更した後の状況をすばやく把握したいときなどは、GAが使われることが多い
妊娠糖尿病の治療と入院 インスリン注射は怖がらないでいいよ!
妊娠糖尿病で血糖値が下がらない場合はインスリン注射を使います。痛そう、怖そう、難しそう、低血糖が心配と聞きますが、最近の注射は、痛みも少なく、簡単で、低血糖も起こしにくいです。

まとめ

  1. 血糖値のコントロールが良くないと、妊婦と赤ちゃんの両者に悪い影響を及ぼす
  2. 糖尿病合併妊娠」糖尿病治療中の方が、妊娠した場合の名称
  3. 妊娠糖尿病」妊娠によって発見された糖代謝異常の名称
  4. 妊娠後に血糖値コントロールを気にしても遅い
  5. 妊娠前に糖尿病合併症の状態や血糖値のコントロールの状態をチェックし、医師の許可後、妊娠すること「計画妊娠」と言う
  6. 妊娠前と妊娠後の血糖値のコントロール目標値は若干異なる