- 安定を選ぶならば固定金利、リスクがとれるならば変動金利を選びましょう。
- 金利上昇時は固定金利を選び、金利下降時は変動金利を選びましょう。
など言われることもありますが、本当のところはどうなのでしょうか?
住宅ローンの固定金利と変動金利の大きな違いは、金利変動のリスクを誰が取るかです。
- 固定金利は、銀行が金利変動リスクを取ります。
- 変動金利は債務者(私たち)です。
変動金利と固定金利のどちらもかなり低い水準にあり、上昇のタイミングをうかがっています。
(と言いつつも、下がり続けていますが…)
金利の上昇を考慮して、変動金利と固定金利の住宅ローンの返済額の違いを計算して比較します。
そして、「変動金利と固定金利どちらが得か」に決着をつけたいと思います。
「低金利では固定金利を選択する」が得は本当か?
一般的に固定金利とはフラット35を指します。
融資率90%超え、融資期間35年の条件で、固定金利は1.7%程度です。(投稿当時)
変動金利の場合の最優遇金利が0.775%が一般的です。(投稿当時)
変動金利の最優遇金利:0.625%
フラット35の最低金利
:1.63%(90%超融資)
:1.19%(90%以内融資)
※2017年10月、フラット35は団体信用保険(以下、団信)が金利に含まれる形となり、民間の住宅ローンとの金利の比較がしやすくなりました。
金利1%の違いで35年の安心を得られるのであれば、フラット35の固定金利を選択したほうが得するような気がします。
私もそう思っていました。
住宅ローン比較「変動金利と固定金利どちらが得か」に決着を付けるため、変動と固定の返済額を計算して比較してみました。
- 金利上昇を考慮した変動金利
- 固定金利「フラット35」
変動金利の住宅ローンの限度額の考え方
2種類の変動と固定の返済額を計算して比較する前に、住宅ローンがどれくらい借りられるのか(限度額)を確認してみましょう。
住宅ローンシミュレーションの罠
銀行や不動産会社の住宅ローンシミュレーションは、変動金利の最優遇金利(出稿当時0.775%)で計算されているものが多いです。
それには理由があります。
住宅ローンの負担が少ないことを示して、購入者の背中を押すためです。
この数字を鵜呑みにして住宅ローンを組んではいけません。
変動金利で借りる場合でも、固定金利で借りたものとして再計算します。その固定金利の月々のローン返済額で組めるだけの住宅ローンを組みます。
変動金利と固定金利の金利の違いで生まれる差額は、先の教育費と金利上昇のリスクに備えます。
変動金利の住宅ローンの限度額1 年収負担率で考える
年収負担率と年収倍率についての説明
年収によっても返済負担率は違いますが、35%が上限であることが多いです。
年収が500万円、返済負担率35%の条件で、月々の住宅ローンの限度額を計算します。
月々の住宅ローンの返済額が145,000円、住宅ローンの期間を35年間、元利均等返済の条件で、変動と固定の住宅ローンの限度額を計算すると
- 変動金利(0.775%)=5332万円
- 固定金利(1.7%) =4587万円
この2つを比較するわけですが、安全性を求めるならば固定金利の(1.7%)を選択するのでしたね。
年収負担率で考える、住宅ローンを組める限度額は、4500万円です。
変動金利の住宅ローンの限度額2 年収倍率で考える
東京カンテイ「都道府県別 新築・中古マンションの年収倍率2014」によると、
全国平均新築マンションは、6.59倍。全国平均築10年の中古マンションは、4.58倍です。
年収倍率6.59倍で、住宅ローン限度額を計算してみます。
500万円×6.59=3300万円
年収倍率で考える、住宅ローンの限度額は3300万円です。
年収負担率と年収倍率の限度額を比較して、より少ない方を採用します。
4500万円>3300万円
さらに安全を取って、3000万円の変動と固定の住宅ローンを組みます。
金利上昇時の固定金利と変動金利の住宅ローン返済額
【スタート時】 固定金利と変動金利の住宅ローンの返済額を計算して比較
3,000万円を1.7%の固定金利と、0.775%の変動金利を35年返済で組んだ場合、毎月の住宅ローンの返済額を計算して比較します。
固定金利 | 変動金利 | 差 | |
---|---|---|---|
住宅ローン返済額 | ¥97,822 | ¥81,576 | ¥16,246 |
変動金利と固定金利の金利差で得られた16,246円は貯蓄します。
使ってはいけません。
【金利上昇時】 固定金利と変動金利の住宅ローンの返済額を計算して比較
【金利上昇時】
固定金利の住宅ローンの返済額を計算
金利が上昇しても、固定金利は住宅ローンの総返済額は影響を受けません。
総返済額 = 39,827,497円
金利負担 = 9,827,497円
【金利上昇時】
変動金利の住宅ローンの返済額を計算
0.775%変動金利住宅ローンの総返済額はいくらになるのでしょうか?
将来の金利がわからないため、今はわかりません。
もし、金利が下がったのであればラッキーです。どんどん返済が楽になります。
都合悪く、金利上昇があった場合はどうなるでしょうか?
それを計算するんでしたね。
5年ごとに0.5%金利が上昇したと仮定して、変動金利の毎月の住宅ローンの返済額を計算した結果が次の表です。
– | 変動金利 | 住宅ローン 返済額 |
住宅ローン 返済額の上昇額 |
---|---|---|---|
0年後 | 0.775% | ¥81,576 | – |
5年後 | 1.275% | ¥87,589 | ¥6,013 |
10年後 | 1.775% | ¥92,866 | ¥5,277 |
15年後 | 2.275% | ¥97,294 | ¥4,428 |
20年後 | 2.775% | ¥100,769 | ¥3,475 |
25年後 | 3.275% | ¥103,186 | ¥2,417 |
30年後 | 3.775% | ¥104,444 | ¥1,258 |
毎月の変動金利の住宅ローン返済額を固定金利と比較します。
1.7%固定金利の月々の返済額を超えるのは20年後です。
返済が進むと変動金利の住宅ローンの返済額の上昇率は下がっていきます。
総支払額 = ¥40,041,551
金利負担 = ¥10,041,551
固定金利と金利負担(9,827,497円)と比較すると、金利負担の違いは+214,054円です。
20年分の、固定金利と変動金利の金利の違いで生まれた差額を計算すると192万円です。
20年分の余剰金を考慮すれば、変動金利の方がお得です。
固定金利と変動金利の金利差額を繰り上げ返済したときの住宅ローン返済額を比較
金利が上がる5年ごとに変動と固定の金利差で生まれた差額を繰り上げ返済し、変動金利の上昇に備えた場合はどうなるでしょうか。
変動金利の住宅ローンの、毎月の返済額を計算した結果が次の表です。
– | 変動金利 | 住宅ローンの 返済額 |
住宅ローンの 返済額上昇額 |
---|---|---|---|
0年後 | 0.775% | ¥81,576 | – |
5年後 | 1.275% | ¥84,948 | ¥3,372 |
10年後 | 1.775% | ¥87,635 | ¥2,687 |
15年後 | 2.275% | ¥89,592 | ¥1,957 |
20年後 | 2.775% | ¥90,676 | ¥1,084 |
25年後 | 3.275% | ¥90,434 | ¥-242 |
30年後 | 3.775% | ¥86,731 | ¥-3,703 |
毎月の変動金利のローン返済額を固定金利と比較します。
変動金利の毎月の返済額は、固定金利の毎月の返済額を超えることなく、住宅ローンの返済が終えました。
さらに、25年後からは返済額が減少しています。
金利負担 = ¥6,404,977
変動金利の金利負担は、固定金利(9,827,497円)以下になり、さらにお得感が増えました。
変動金利と固定金利の比較のまとめ
変動と固定のどちらも、金利負担は最初の10年が最も多いです。
10年の間に金利の上昇が緩やかで、金利差額を貯蓄できたならば、変動と固定の勝負はそのときほぼ決まりです。
変動金利を選択しても、金利差分さえプールしておけば、金利の上昇にも耐えることができます。教育資金の上昇にも、ある程度は耐えることができるでしょう。
ただし、5年ごとに1%上昇して30年後に6.775%となるならば、固定金利がお得なのかもしれません。
過去35年間の都市銀行の住宅ローンの基準金利の推移(参考)
統計局データから作成
日本の都市銀行の住宅ローンの基準金利(優遇前の金利)の歴史をみてみると、バブルのときに基準金利が8.5%まで上昇しましたが、バブル崩壊以後は5%を超えることはありませんでした。
- 変動金利を選んだほうが、最終的にはリスクをコントロールしながら超低金利の恩恵を受けられお得
- 住宅ローンの最初の10年間の金利が、総返済額に最も影響を与える
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