一人薬剤師は辛い、耐えられない、辞めたい。という話はよく耳にします。
私も一人薬剤師を数年経験しました。
さらに薬局に事務職員もいない一人っきり薬剤師(一人ぼっち薬剤師?)も経験済です。
一人薬剤師は修行のような毎日ですが、私はクレームが殺到したり、耐えられない、辞めたいというレベルまで発展したことはありません。
一人薬剤師は辛い、辞めたいと思う例をあげて解決策を例示します。
※本記事の一人薬剤師とは、薬剤師が行う仕事(調剤、監査、投薬、薬歴管理など)を一人の薬剤師が担当している勤務形態を指します。
※本記事には医療従事者として不適切な表現があります。
一人薬剤師の気持ちの持ち方を解説しています。
一人薬剤師人口
総務省統計局の資料(2015年版)によると、調剤薬局は36802の事業所があります。
従業者の規模別に分けると次の通りです。
2人以下 | 4,673 |
3~4人 | 10,467 |
5~9人 | 16,049 |
10~19人 | 4,334 |
20~29人 | 405 |
30~49人 | 106 |
50~99人 | 40 |
100人以上 | 8 |
合計 | 36,082 |
従業者2名を、薬剤師1名、事務員1名と仮定すると、
一人薬剤師は約4600人で、全薬局の約13%は一人薬剤師と予測できます。
その中の数パーセントは辛い辞めたいと思っていて転職希望のようです。
一人薬剤師を辞めたい理由1 調剤ミス(調剤過誤)が怖い
一人薬剤師の何が辛いか。
薬局で起こるあらゆる出来事を薬剤師一人で抱え込まなくてはならないことです。
そして、薬剤師が一番やってはいけないことが調剤過誤です。
解決策
複数薬剤師がいれば、調剤と調剤監査が分担できるのでダブルチェックできます。
それを一人薬剤師でもできる環境を作ります。
- 調剤後、気持ちを切り替えるために場所を移して監査する
- 調剤後、監査の前に別の業務をはさんで気持ちを切り替える
- 患者2名分の処方をまとめて調剤して、気持ちを切り替えて2人まとめて監査する
同じ気持ちで監査をしても、自分のミスはなかなか発見できません。
気持ちを切り替えて調剤監査するのがたいせつです。
一人薬剤師を辞めたい理由2 クレームが怖い
薬剤師は生涯勉強を続けなくてはなりません。
薬剤師は黙々とコツコツ勉強する方が多いですが、対人関係に苦手意識を持つ方も多いです。
(そういう私も勉強好き薬剤師です!)
その典型例がクレーム対応です。
一人薬剤師で混雑しているときにクレームでも付けられようものならば、ああ悲惨。
一人薬剤師辞めたい~っ!この会社嫌っ。辞めたい!ってなるんですよね。
解決策
どれだけ気を付けたとしても、一定頻度でクレームは受けます。
例えこちらに否がなくてもです。
(何かにクレームをつけてやろうとする人はいます)
こちらに否のないクレームに関しては、毅然とした態度で臨むべきです。
否のないクレーム対応に時間を費やすと業務は止まり、待っている善良な方の時間を奪います。
早々に立ち去ってもらうべきです。
クレーマーを相手にしては体が持ちません。明日も一人薬剤師ですから。
では、こちらに否のあるクレームはどうしましょうか?
リスク管理系の本にはこのような記載があります。
「クレームは初期対応が重要」
ただし、これはリスク管理が整っている組織に限ったことです。
一人薬剤師体制で、迅速かつ正確な初期対応ができるとは思えません。
一人薬剤師は好きでしている方は少ないと思います。
(自営業の方は仕方ありません。開局はハイリスクです)
一人薬剤師を放置しているのは会社であり、あなたの上司です。
クレームは個人ではなく組織が対応するべきです。
そんなことしたら怒られるかも。
成績(評価)が下がるかも。
辞めさせられるかも。
私にはユーザーの声が聞こえてきます。
- 会社の人件費を下げるための一人薬剤師ではないでしょうか?
- 会社は二人薬剤師体制にできないほど、資金繰りが厳しいのではないでしょうか?
一人薬剤師であるあなたにそのしわ寄せがきているのです。
管理薬剤師(一人薬剤師)が辞めたら会社は困ります。
薬剤師紹介会社経由で管理薬剤師を雇う場合、数百万円の経費が必要だからです。
(あなたが転職してきたときも、会社は薬剤師紹介会社にそれくらい支払っています。年収の20%~30%が相場です)
急募ともなれば、薬剤師紹介会社に足元を見られてしまいます。
- 辞めたい!?(怒られる)
- 辞めても変わりは何人でもいるって?
- うちの薬局は見て見ぬふり?
なかなかのブラック薬局ですね。
ブラック薬局は退職して、一人薬剤師をさせないまともな会社に転職しましょう。
一人薬剤師を辞めたい理由3 休憩時間がない
「休憩時間がない」
その通りです。
薬局が開局している限り、一人薬剤師には心の休まる休憩時間はありません。
常に待機時間(手持時間)です。
関西では9:00~13:00、16:00~20:00などの時間帯で営業しているクリニックが多いです。
薬局ではその時間をコアタイム、それ以外の時間を中抜けと呼ぶとしましょう。
コアタイムに薬歴を書く時間がとれない場合、おのずと中抜けにたまった薬歴を記載しなくてはなりません。
一人薬剤師には、本来は休憩時間であるはずの時間帯が休憩ではありません。
解決策
薬歴は簡素にまとめましょう。
本来、薬歴は次に投薬する薬剤師が、患者の状態などを知るために記載するものです。丁寧に扱われるべきです。
でも、明日も一人薬剤師ですから見るのはあなただけです。
自分が分かればそれでいいと開き直ってしまいましょう。それで患者に迷惑がかかることはありません。
一人薬剤師を辞めたい理由4 仕事量が多い
一人薬剤師業務は常にマルチタスクです。効率よく業務をこなさなくてはなりません。
- 散剤の調剤
- 水剤の調剤
- 一包化の調剤
- 薬の多い処方箋の調剤
- 疑義照会 など
時間を必要とする業務は意外と多く、積み重なると患者の待ち時間は長くなります。
遅いというクレームも発生します。
マルチタスクがこなせないと「辞めたい!」となります。
解決策
一包化、薬の多い処方箋の調剤は予製しておきます。
毎回同じとわかっているならば、準備をしておくべきです。
待ち時間の短縮ため予製は基本ですが、やってない一人薬剤師さんは意外と多いです。
散剤で約束処方などがあるならば、予製剤で対応します。
しかし、精一杯の努力もむなしく「遅い」とクレームは来るでしょう。
そのときは、待てない方は他の薬局に行ってもらうことも視野に入れます。
一人で抱え込む必要はありません。
処方箋があれば、どこの薬局でも対応はしてくれます。有効期限は4日間もあります。
あなたの器がどれだけ大きくても、水を注ぎ続けたらいつかは漏れでます。
一人薬剤師のキャパは決まっていて、それを超えると薬局の品質は下げざるをえません。
それを会社が気付かないのか、気付かないふりをしているのか知りませんが、一人薬剤師に責任はありません。
一人薬剤師を辞めたい理由5 休みを取りづらい、取れない
一人薬剤師は辞めるより、休みを取る方がたいへんだったりします。
(よくわからない世界でしょ?それが一人薬剤師薬局です)
ヘルプ薬剤師が何人か在籍している会社は何とかなりますが、ヘルプ薬剤師が減ってくると薬剤師の派遣は厳しくなります。
もしくは、一人薬剤師体質のある会社は、他の薬局も一人薬剤師です。
一人薬剤師は体調を崩しても簡単に休めません。
私も一人薬剤師時代に感染性腸炎になったことがありましたが、普通に出勤していました。
(トイレへの出勤回数もハンパではなかったですが)
一人薬剤師を変わってくれる薬剤師がいなかったからです。
解決策
私は体調不良で休診した開業医を見たことがありません。
「医師は体が強いから風邪をひかない」という薬剤師の方もいますが、医師が強靭な肉体を持っているわけではありません。
医師は病気に対する知識が豊富で栄養状態も良く、日々の自己管理を徹底しているから休診するまで体調を崩しにくいのです。(たぶん)
薬剤師も、体調を崩さないように自己管理を徹底するしかありません。
まとめ
- 一人薬剤師人口は約4600人。全薬局の約13%は一人薬剤師
- 一人薬剤師は薬局で起こる出来事を抱え込まなくてはならなから辞めたい
- 一人薬剤師はクレームが辞めたい
- 一人薬剤師は心の休まる休憩時間がないのが辞めたい
- 一人薬剤師は休めないから辞めたい
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