2014年4月~2016年3月までは、お薬手帳を薬局に持っていくと20円(3割負担の方)料金が高くなりました。
さらに、お薬手帳を持参しなかったとき(忘れたとき)は、シールを発行してお薬手帳を再発行した場合でも料金は発生しました。
- シールはいりません
- お薬手帳はいりません
これが、薬局の料金を下げる方法としてメディアで紹介されました。
しかし、今回の2016年の調剤報酬改定により、お薬手帳の料金に関して180度考え方を変える必要性が出てきました。
2016年4月1日からは、お薬手帳を薬局に持っていくと、3割負担の方で原則40円料金が安くなります。
(他にも要件あり)
なぜ、お薬手帳は20円の負担から40円安くなることになったのでしょうか?
その理由、40円安くなる仕組み、義務化に向かうお薬手帳について解説します。
お薬手帳のメリット、記載内容、使い方
お薬手帳を持参するメリットは、こちらの記事をどうぞ
- お薬手帳とは
- 薬剤師が確認しているお薬手帳の内容
- お薬手帳は服用薬を正確に伝達するためのアイテム
- 正しいお薬手帳の使い方
お薬手帳の持参で料金が安くなる仕組み
お薬手帳と薬剤服用歴管理指導料の歴史
薬局の薬剤師が行う薬の説明などにかかる薬学管理料を「薬剤服用歴管理指導料」といいます。
2016年の調剤報酬改定後、
薬剤服用歴管理指導料の点数が、従来の41点と34点から38点と50点へ変更されました。
薬剤服用歴管理指導料の点数差 (料金の差額)
50点-38点=12点が、お薬手帳を持参する、お薬手帳を持参しない(忘れた)で分かれる薬剤服用歴管理指導料の点数です。
健康保険の1点=10円です。
12点(120円)にも健康保険が使えますので、実際窓口で自己負担する料金は次の通りです。
負担割合 | 料金 | 実際の料金 |
---|---|---|
1割 | 12円 | 10円~20円 |
2割 | 24円 | 20円~30円 |
3割 | 36円 | 30円~40円 |
薬剤服用歴管理指導料の算定要件
厚生労働省資料より引用、改編
お薬手帳を持参しても、料金が安くならない例外
いつでも、どこの薬局でも、お薬手帳を持参すると、料金が安くなるわけではありません。
2016年の調剤報酬改定では、お薬手帳を持参しても料金が安くならない例外規定があります。
- 初めて行く薬局(初回)
- 2回目以降でも、6カ月以上経過して再来局したとき
- 大型チェーン薬局で、特定の医療機関からの処方箋の受付が極端に多い薬局
- 処方箋受付枚数が多く、特定の医療機関からの処方箋の受付が特に多い薬局
なぜ、このような例外規定があるのか考えてみましょう
①初めて行く薬局
初めて来られた患者さまは、初回問診票を書いていただいたり、すべての併用薬情報等を伝えてもらう必要があります。
初回来局時は、2回目以降の来局よりも、薬を渡すまでに多くのプロセスがあります。
そのため、お薬手帳の持参の有無に関わらず、初めていく薬局は薬剤服用歴管理指導料が50点です。
②2回目以降でも、6カ月以上経過して再来局したとき
「①初めて行く薬局」と同様の理由です。
来局してから6カ月経過した場合、初回問診票はありませんが、初回と同じようなプロセスがあります。
そのため、薬剤服用歴管理指導料は50点です。
③大型チェーン薬局で、特定の医療機関からの処方箋の受付が極端に多い薬局
こちらの記事を先に読むと理解が深まります
小規模薬局は、調剤基本料1(41点)を算定できます。
しかし、次のような条件に当てはまる薬局は、調剤基本料が安く(20円)設定されています。
処方箋受付回数が月に4万枚を超えるグループに属する薬局で、特定の医療機関からの処方箋の受付枚数が、95%を超えている場合
処方箋受付回数が月に4万枚を超えるというのは、かなり大きな規模をもつ薬局チェーンです。
薬局が規模が大きくなるほど経営は安定しますが、薬局がつぶれてしまっては医療は成り立ちません。
そのための例外処置です。
薬をもらう患者さまの立場に立って、調剤基本料とお薬手帳の持参の有無で、自己負担する料金を計算してみると
- 調剤基本料1+お薬手帳持参あり
41点+38点=79点 - 調剤基本料3+お薬手帳持参なし
20点+50点=70点
大型チェーン薬局で、特定の医療機関からの処方箋の受付が極端に多い薬局に、お薬手帳を持参して併用薬・重複薬のチェックをしてもらう(70点)。
これがベストかもしれません。
④処方箋受付枚数が多く、特定の医療機関からの処方箋の受付が特に多い薬局
「③チェーン薬局で、特定の医療機関からの処方箋の受付が極端に多い薬局」と同様の理由です。
特定の医療機関の処方箋の受付回数が月4000回を超える薬局
25点+50点=75点
お薬手帳義務化への第一歩? お薬手帳で料金が安くなる理由
義務化への布石1 「かかりつけ薬局」と「かかりつけ薬剤師」を推進
厚生労働省は「かかりつけ薬局」と「かかりつけ薬剤師」を推進しています。
「かかりつけ薬局」とは、あらゆる医療機関の処方箋を管理する機能を持った薬局の中から、患者さまが選んだ薬局です。
そして、かかりつけ薬局に在籍し、あたゆる処方箋を読む能力を持った薬剤師で、患者さまから選ばれた薬剤師が「かかりつけ薬剤師」です。
「かかりつけ薬局」と「かかりつけ薬剤師」を推進するためには、すべての処方箋をひとつの薬局に持っていくように誘導する必要があります。
40円とはいえ、料金がが安くなるのであれば、義務的にお薬手帳を持参すると考えたのでしょう。
それが、お薬手帳の義務化への第一歩になると。
※かかりつけ薬剤師指導料を算定できる、かかりつけ薬剤師になる要件は、他にもあります。
義務化への布石2 残薬確認で医療費削減
自宅に残薬(飲み忘れ、飲み残し)が大量にたまっていませんか?
薬が処方されても、自己中断などが原因で年間500億円分の残薬が発生していると言われています。
お薬手帳を活用して薬剤師が残薬を確認し、無駄な処方を是正していこうという訳です。
ただ、年間の医療費は40兆円ほどあります。
残薬削減の効果は1.25%程度止まりです。
お薬手帳と、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師
厚生労働省資料より引用
かかりつけ薬局とかかりつけ薬剤師を国策として推進して効果を発揮するためには、患者さまをひとつの薬局に誘導する必要があります。
今まで
- 耳鼻科処方箋(28日処方)はA薬局
- 内科処方箋(28日処方)はB薬局
- 眼科処方箋(28日処方)はC薬局
A薬局の薬剤師は、28日に1回のみお薬手帳を介して内科と眼科の処方内容を確認できます。
それが、次のようになると
- 耳鼻科、内科、眼科処方箋→A薬局
A薬局に28日に3回患者さまが来局するため、A薬局の薬剤師は、耳鼻科、内科、眼科の処方状況(併用薬)を、処方箋とお薬手帳を介して事細かに確認できます。
(2016年4月27日加筆)
体感で、お薬手帳の持参率がかなりアップしていると思います。
おかげで、併用薬や重複薬の確認がしやすくなりました。
お薬手帳の義務化のメリット
あらゆる科の処方箋がひとつの薬局に集約されれば、処方箋から薬の情報は伝わるから、お薬手帳はいらない?という疑問もわきます。
阪神淡路大震災のときに、お薬手帳があった方は薬の情報を正しく伝えられた。というエピソードがあります。そのときからお薬手帳の機能が強化されてきました。
もちろん、東日本大震災、熊本地震のときも、お薬手帳は役に立ったと考えるべきでしょう。
- 処方箋がなかったら?
- だれも頼る人がいなかったら?
- 突然倒れたら?
どのようにして、薬の情報を正しく薬剤師に伝えますか?
お薬手帳の義務化で正確に薬の情報は伝わります。
お薬手帳を忘れたとき、シールでもOK?
どんな理由があれ、薬局にお薬手帳を持参しない場合は、制度上自己負担する料金は40円安くならないのです。
- お薬手帳を忘れた(今回に限り)
- お薬手帳を忘れた(いつも忘れる)
- お薬手帳を忘れた(シールのみ発行)
- お薬手帳を忘れた
(シールを発行してお薬手帳に貼付)
2016年調剤報酬改定のお薬手帳の説明責任
(問25)手帳を持参していない患者に対して、患者から求めがなければ手帳に関する説明をしなくても薬剤服用歴管理指導料50点を算定可能か。
(答)そのような患者については、手帳を保有することの意義、役割及び利用方法等について十分な説明を行い、患者が手帳を用いない場合はその旨を薬剤服用歴の記録に記載することとしているため、手帳に関する説明を全くしていない場合は薬剤服用歴管理指導料を算定してはならない。
2016年調剤報酬改定「厚生労働省疑義解釈(Q&A)」より
無難な答えのため、何とでも解釈できそうです。
薬剤服用歴管理指導料の点数は、38点と50点でしたね。
薬剤師が、患者さまにお薬手帳を持参するメリットなどを説明しても、患者さまがお薬手帳を持参しない(忘れた)場合は、薬剤服用歴の記録にその理由などを記載すれば、薬剤服用歴管理指導料50点を算定できる。
お薬手帳の役割や利用方法は、1度は説明しなさい。ということでしょう。
まとめ
- 2016年4月の調剤報酬改定後、薬局にお薬手帳を持参すると、自己負担料金20円の負担(旧)から、40円の得(新)に180度変更された
- お薬手帳を持参しても、自己負担する料金が40円安くならない例外規定がある
- お薬手帳の持参をすすめる理由は、かかりつけ薬局とかかりつけ薬剤師を推進するため。残薬を減らすため。
→お薬手帳義務化への第一歩? - お薬手帳を忘れた場合は、料金は安くならない
(シール発行、お薬手帳再発行×) - お薬手帳は、ご自身の服用している薬と服用歴を薬剤師などの医療関係者に伝えるツール。
ぜひ、お薬手帳をご活用ください。
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