労働者が仕事中に起こった怪我や病気は、健康保険ではなく労災保険を使います。
仕事中に起こった怪我や病気で業務を休むことになった場合、
休業した日の第4日目から1日につき平均賃金の80%【休業給付+休業特別給付金】が給付されます。
しかし、病気が長期化した場合やひどい障害を負ってしまった時は、私たち労働者はどのような補償を受けることができるのでしょうか。
仕事が原因の怪我や病気の場合は、「傷病年金」「障害給付(障害年金)」と呼ばています。
通勤が原因の怪我や病気の場合は「傷病補償年金」「障害補償給付」と呼ばれ、「補償」という言葉が間に入ります。
本記事では、「傷病年金」「障害給付(障害年金)」で統一します。
労災保険の休業給付と傷病年金の違い
健康保険の傷病手当金では、
療養開始から1年6カ月が経過すると、たとえ病気や怪我の治療継続中で仕事を休業していても例外なく補償が終了します。
労災保険の休業給付では、給付の終了についての記述はありません。
仕事上の怪我や病気が原因で、治療継続中で休業給付の給付条件を満たしている限り、休業補償給付を継続受給できる可能性があります。
ただし、療養開始から1年6カ月経過後に傷病等級第1級~第3級に該当する場合は、傷病年金に切り替わります。
労災保険の傷病年金
労働者が仕事中に起こった怪我や病気を療養開始後、1年6カ月を経過したときに
- 怪我や病気が治癒していない
- 怪我や病気が傷病等級(第1級~第3級)に該当する
この2つの条件がそろっている場合は休業給付が給付されなくなり、傷病年金・傷病特別年金・傷病特別給付金が労災保険から支払われます。
傷病年金は偶数月の通常15日(年6回)に給付されます。
傷病特別給付金は一時金ですので、1回のみです。
「怪我や病気の症状が安定し、労災保険の治療の範囲(ほぼ、健康保険と同様の範囲)で治療を継続しても、怪我や病気の症状の回復や改善が期待できなくなったとき」をいいます。
「治癒」は「症状固定」ともいいます。
傷病年金の傷病等級と補償金額
傷病年金の傷病等級
傷病等級 | 傷病年金 | 傷病特別年金 | 障害特別給付金 |
---|---|---|---|
第1級 | 給付基礎日額 ×313日分 |
算定基礎日額 ×313日分 |
114万円 |
第2級 | 給付基礎日額 ×277日分 |
算定基礎日額 ×277日分 |
107万円 |
第3級 | 給付基礎日額 ×245日分 |
算定基礎日額 ×245日分 |
100万円 |
算定基礎日額とは
算定基礎年額を365で割った額です。
給付基礎日額と名前が似ていますが全く違います。
算定基礎年額とは
- 労働者が仕事中に起こった怪我や病気が発生した日。
または、病気が確定した日の以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与(主に賞与)の総額 - ※給付基礎日額×365日×20%
- 150万
この3つのうち、最も低い額が算定基礎年額です。
給付基礎日額が13,187円の方の(該当日の以前1年間に賞与120万円給付あり)の算定基礎日額は?
- 算定基礎年額 = 120万円
- 算定基礎年額
=※13,187円 ×365日 ×20%
=962,651円 - 算定基礎年額 = 150万円
条件2が最も低い額ですので
算定基礎年額 = 962,651円です。
= 962,651円 / 365日
≒ 2,638円(1円未満切り上げ)
※給付基礎日額の計算について
傷病年金の等級別補償金額の計算結果
- 給付基礎日額は13,187円
- 算定基礎日額は2,638円
この条件の傷病等級の傷病年金・傷病特別年金・傷病特別給付金を計算してみましょう。
傷病等級 | 傷病年金 | 傷病補償特別年金 | 障害補償特別給付金 |
---|---|---|---|
第1級 | ¥4,127,531 | ¥825,694 | 114万円 |
第2級 | ¥3,652,799 | ¥730,726 | 107万円 |
第3級 | ¥3,230,815 | ¥646,310 | 100万円 |
仕事中の怪我や病気はありがたくないですが、なんとか暮らしていけそうな年金を労災保険から受給できます。
労災保険の障害給付(障害年金)と傷病年金の違い
療養開始から1年6カ月経過後に傷病等級第1級~第3級に該当する場合は、休業給付から傷病年金に切り替わりました。
仕事中に起こった怪我や病気が治癒したにも関わらず、「障害等級表」にある138種類の障害が残った場合に給付されるのが障害給付(障害年金)です。
障害の程度(障害等級)に応じて、受給できる年金と一時金の支払い額が違います。
障害給付(障害年金)も偶数月の通常15日(年6回)に給付されます。
障害等級第1級~障害等級第7級の障害給付(障害年金)
障害等級第1級~障害等級第7級は、
障害年金・障害特別年金の2種類の年金と、障害特別支給金(一時金)が受け取れます。
障害等級 | 障害年金 | 障害特別年金 | 障害特別支給金 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
計算方法 | 金額 | 計算方法 | 金額 | 金額 | |||
1級 | 給付 基礎 日額 の |
313日分 | ¥4,127,531 | 算定 基礎 日額 の |
313日分 | ¥825,694 | 342万円 |
2級 | 277日分 | ¥3,652,799 | 277日分 | ¥730,726 | 320万円 | ||
3級 | 245日分 | ¥3,230,815 | 245日分 | ¥646,310 | 300万円 | ||
4級 | 213日分 | ¥2,808,831 | 213日分 | ¥561,894 | 264万円 | ||
5級 | 184日分 | ¥2,426,408 | 184日分 | ¥485,392 | 225万円 | ||
6級 | 156日分 | ¥2,057,172 | 156日分 | ¥411,528 | 192万円 | ||
7級 | 131日分 | ¥1,727,497 | 131日分 | ¥345,578 | 159万円 |
※障害等級は「第1級」→「1級」と省略表示
※金額は次の条件で計算
給付基礎日額=13,187円
算定基礎日額= 2,638円
障害等級第8級~障害等級第14級の障害給付
障害等級 | 障害一時金 | 障害特別一時金 | 障害特別支給金 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
— | 計算方法 | 金額 | 計算方法 | 金額 | 金額 | ||
8級 | 給付 基礎 日額 の |
503日分 | ¥6,633,061 | 算定 基礎 日額 の |
503日分 | ¥1,326,914 | 65万円 |
9級 | 391日分 | ¥5,156,117 | 391日分 | ¥1,031,458 | 50万円 | ||
10級 | 302日分 | ¥3,982,474 | 302日分 | ¥796,676 | 39万円 | ||
11級 | 223日分 | ¥2,940,701 | 223日分 | ¥588,274 | 29万円 | ||
12級 | 156日分 | ¥2,057,172 | 156日分 | ¥411,528 | 20万円 | ||
13級 | 101日分 | ¥1,331,887 | 101日分 | ¥266,438 | 14万円 | ||
14級 | 56日分 | ¥738,472 | 56日分 | ¥147,728 | 8万円 |
※障害等級は「第1級」→「1級」と省略表示
※金額は次の条件で計算
給付基礎日額=13,187円
算定基礎日額= 2,638円
障害等級第8級~障害等級第14級は障害年金はありません。すべて一時金です。
基礎年金と厚生年金の遺族年金はこちらの記事です。
まとめ
- 傷病手当金では、
療養開始から1年6カ月が経過後治療継続中で休業していても例外なく給付が終了する - 休業補償給付では、
治療継続中で給付条件を満たしている限り継続受給できる可能性がある - ただし、療養開始から1年6カ月経過後に傷病等級に該当する場合は、傷病年金に切り替わる
- 怪我や病気が治癒したにも関わらず、
障害等級第1級~14級に該当する障害が残った場合は障害年金が給付される
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