風邪で痰がからんだり粘っこい鼻水が続くときは、去痰薬(きょたんやく)を使います。
去痰薬はもともと種類は少なく、使われる薬は限られています。
- ムコダイン
- ムコソルバン
- ムコサール
- ビソルボン
- クリアナール
この中ではムコダインが有名ですが、次のような意見も多いです。
- 効かない(効いた気がしない)
- 余計に鼻水や痰が出る
- 眠い
この意見の真相に迫っていきましょう。
風邪で痰・鼻水・咳が出る理由
風邪をひくと、粘っこい痰・鼻水・咳が出るのはなぜでしょうか?
痰・咳が出る理由
通常の痰はうすく、何も感じることなく飲み込んでいます。(痰は絶えず流れています)
しかし、風邪の原因であるウイルスや細菌が喉や肺に入ってくると、炎症が起こり、白血球などが炎症部位に集められ、ウイルス・細菌VS白血球のバトルが始まります。
戦いの末、死んだ菌や白血球などが痰に混じり、あの粘っこい痰になるのです。
戦いが壮絶であればあるほど痰は粘りを増し、咳を起こさせて外へ排泄されます。
鼻水が出る理由
痰と同様の理由で、白血球や死んだ菌などが粘りのある鼻水になります。
ウイルスや細菌が体内に入ると免疫応答(異物に反応すること)や反射が起こり、ウイルスや細菌を体外に追い出そうとします。
体に害のないはずの花粉に免疫応答が起こるのが花粉症(アレルギー)です。
咳・くしゃみ・鼻水の症状は、ヒスタミンが放出されることで起こります。
また、咳や痰の強い風邪にクラリス(クラリシッド)がよく使われるため、風邪薬と思っている方が多いですが、クラリス(クラリシッド)は直接風邪を治す薬ではありません。
『クラリスロマイシン(クラリス/クラリシッド)は風邪には効かない!処方する理由は?』
ムコダインの種類
ムコダインの主成分はカルボシステインです。
錠剤、ドライシロップ(DS)、シロップの3種類があります。
ムコダイン500mg錠が主に大人に使われ、ムコダイン250mg錠・DS・シロップが主に子供に使われています。
ムコダインの作用機序
ムコダインは気道粘膜の構成成分を調整して痰・鼻水の粘りを取ります。
気道とは喉(鼻)から肺にかけての空気の通り道のことです。通り道の内側には粘膜と呼ばれる組織があります。
気道粘液の構成成分(シアル酸、フコース)はバランスを取っています。
何も感じないサラサラの痰は、理想的なシアル酸-フコース構成比に近く、なめらかに流れます。
しかし、痰のシアル酸-フコース構成比のバランスが悪くなると、粘りが増します。つまり、からみやすい痰・鼻水になるのです。
ムコダインは痰・鼻水のシアル酸-フコース構成比を正常に戻して痰・鼻水をサラサラする作用があるのです。
ムコダインの効果
ムコダインは痰の切れをよくして、さまざまなタイプの咳に効果を発揮します。
対象:大人
咳全般への効果(軽度改善以上)と、痰の切れへの効果(改善率)
(1日3回ムコダイン錠500mgを服用後2週間後)
対象:子供
咳全般への効果(軽度改善以上)
(1日3~4回ムコダインシロップを服用1週間後)
ムコダインの飲み方
ムコダインは1回500mgを1日3回毎食後に飲むのが標準的です(大人)。
子供は体重で量を調整して、1日3回毎食後に飲みます。
- ムコダインDSの1回量
→ 0.02g/体重1kg - ムコダインシロップの1回量
→ 0.6mL/体重1kg
ムコダイン1回あたりの量の目安
種類 | 体重(kg) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
5 | 10 | 15 | 20 | 30 | 大人 | |
ムコダインDS(g) | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.6 | – |
ムコダインシロップ(mL) | 3 | 6 | 9 | – | – | – |
ムコダイン錠250mg | × | 1 | 2 | |||
ムコダイン錠500mg | × | 0.5 | 1 |
ムコダインは効かない?
「痰のからんだ咳、ズルズルした鼻水・鼻づまりを何とかして欲しい」
そんな思いで病院を受診される方が多いと思います。
しかしながら、ムコダインは即効性がなく、効果が実感できるには時間がかかります。
(通常の風邪であれば、7日以内の処方が多いと思いますが)薬を飲み終えるころにようやく効いてきます。
臨床試験では、効果判定を1~2週間で行っています。そのくらいでやっと効果が実感できるのです。
ですので、効かないからといってやめてはいけません。
貼る咳止め「ホクナリンテープ」も効果はジワリです。
『ホクナリンテープは風邪の咳止めシールではない!元々は喘息の貼り薬だ』
ムコダインで痰と鼻水が増える?
「ムコダインが効かない」の次に聞くクレーム?が「余計に痰鼻が出る」「眠い」です。
確かに、ムコダインを飲むと痰や鼻水が増えることがあります。
なぜなら、ムコダインは痰や鼻水の粘りを押さえて外へ出しやすくする去痰薬であるため、痰や鼻水の粘りがサラッとして、量が増えることがあるからです。
これは副作用ではなく、ムコダインが効いてきた証拠というべきです。
ムコダインのジェネリック
ムコダインには多くのジェネリックが発売されています。
ジェネリックとは、先発(ここではムコダイン)と同じ主成分で作られた、同等の効果を持つ安価な薬のことです。
カルボシステイン「○○」(○○にはメーカー名が入る)と記載された薬は、すべてムコダインのジェネリックです。
先発/ジェネリック | 薬価 |
---|---|
ムコダイン錠500mg | 13.6 |
カルボシステイン500mg錠「トーワ」 | 6.8 |
ムコダイン錠250mg | 8.3 |
カルボシステイン250mg錠「サワイ」 | 5.6 |
ムコダインDS50% | 26 |
カルボシステインDS50%「タカタ」 | 10.4 |
ムコダインシロップ5% | 6 |
カルボシステインシロップ5%「JG」 | 2.6 |
『メジコンとムコダインは咳・痰・風邪のゴールデンコンビだ!』
まとめ
- 咳、痰、鼻水は体内からウイルス・細菌を追い出すための防御反応
- ムコダインは痰・鼻水の構成比を正常に戻してサラサラにする作用がある
- ムコダインはの3つの効果
1.粘りのある痰を抑えて咳を抑える
2.粘っこい鼻水をうすめる効果
3.(粘りのある鼻水が原因の)鼻づまりを抑える - ムコダインは即効性がなく、効果を実感できるには時間がかる
(効かないわけではない)
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