「妊娠したら葉酸サプリを飲んだ方がいいらしいよ」
女性の会話で一度は話題にあがったことがあると思います。
妊娠前からの葉酸接種は赤ちゃんの障害・流産・奇形を予防し、妊娠中の貧血・つわりの予防効果が期待できます。
2002年からは、母子手帳でも葉酸の摂取が推奨されています。
妊娠中の葉酸摂取について
- 二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発生を減らすためには、妊娠前から妊娠初期の葉酸の摂取が重要であることが知られています。
- 葉酸の添加された食品やサプリもありますが、とりすぎには注意が必要です。
厚生労働省「母子健康手帳の様式」より抜粋
少し医療をかじるとフォリアミンという医療用葉酸があることに気が付きます。
- フォリアミン 妊娠初期
- フォリアミン 妊婦(妊娠中)
- フォリアミン 妊娠前
本記事はこれらのキーワードでたどり着いた方へのメッセージです。
医療用葉酸フォリアミンと葉酸サプリについて解説します。
医療用葉酸フォリアミン
医療用葉酸フォリアミンは、フォリアミン1錠中に葉酸5mgを含みます。
もともとは葉酸が欠乏状態となりやすい薬との併用に使用される場合が多い薬です。
しかし、フォリアミンを葉酸補充目的で服用している妊婦さんがいるのも事実です。
本来のフォリアミンの使い方
次に上げる薬は、長期服用で葉酸が欠乏状態となりやすい薬です。
薬の名前 | 成分名 | 薬の用途 |
---|---|---|
デパケン | バルプロ酸 | 抗けいれん薬 |
セレニカ | ||
テグレトール | カルバマゼピン | |
リウマトレックス | メトトレキサート | 抗リウマチ薬 |
メソトレキセート |
これらの薬は長期服用する場合が多いため、いつかは体内の葉酸が失われてしまいます。
そこで考えられたのが、フォリアミンとの併用です。
このようにフォリアミンは、「葉酸が欠乏状態となりやすい薬」と併用されるケースが多いです。
フォリアミンの妊婦への使い方
フォリアミンの妊娠関係の保険適応は2つあります。
- 妊娠性貧血
- 葉酸の需要が増大し食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦等)予防
妊娠性貧血
妊娠性貧血とは妊娠によって起こる貧血の総称で、鉄欠乏性貧血・葉酸欠乏性貧血がほとんどを占めます。
鉄・葉酸・ビタミンB12などは赤血球に含まれるヘモグロビンを作りだすのに必要な栄養素のひとつです。
ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ送っています。
鉄・葉酸・ビタミンB12などが不足するとヘモグロビンの合成ができなくなり貧血を起こし、早産・低体重児の出産リスクが高まります。
フォリアミン(葉酸) 1錠
フェロミア(鉄剤) 1錠
朝食後 28日分
特殊事情のある妊婦のフォリアミン接種
神経管閉鎖障害の赤ちゃん(後述「葉酸の効果」)を出産した事実がある妊婦の場合は、医師の管理下で4mgの葉酸の摂取が推奨されています。
1日0.4mgの葉酸の摂取は、神経管閉鎖障害の発症率を36%低下させ、
1日4mgの摂取では82%
5mgの摂取では85%の発症率の低下が予測される産婦人科診療ガイドラインより
通常妊婦へのフォリアミン使用
妊娠後期(30から34週)に1mgの葉酸を接種していた場合、子供が3.5歳の時点で喘息になるリスクが1.26倍高かったという報告があります。
そのため、葉酸摂取量の上限は1mgに設定されています。
フォリアミン1錠の葉酸量は5mgです。
1錠服用するだけで葉酸摂取量の上限を超えてしまいます。
フォリアミンは過剰摂取しても催奇性はありませんが、医師の指導の元に服用すべき医薬品であって、葉酸サプリの代わりにはなりません。
葉酸の効果
神経管閉鎖障害の予防効果
妊娠前からの葉酸適量接種は、赤ちゃんの「神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)」を起こす確率を下げる効果があります。
1998年とデータが古いですが、0.06%の確率で神経管閉鎖障害が起こることがわかっています。
神経管は、神経の卵のようなもので、最終的に脳や脊髄などになります。
神経管が閉鎖する段階で異常が起こると奇形を起こしたり、死にいたることがあります
流産の予防効果
流産にはさまざまな原因がありますが、流産の原因のひとつが先天性奇形です。
ダウン症、無脳症など生まれつき普通とは異なった姿がある症状のことです。
高齢の出産になればなるほど先天性奇形を起こす確率が高くなります
流産への葉酸効果の根拠ははっきりとしていませんが、葉酸は先天性奇形による流産に対して予防効果があるという報告があります。
食事からの葉酸摂取
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食事からの葉酸摂取推奨量は1日240μgです。
さらに妊婦・授乳中は葉酸の需要量が増えるため、さらなる摂取を推奨しています。
- 妊婦=480μg
成人量(240μg)+240μg - 授乳中=340μg
成人量(240μg)+100μg
葉酸サプリはいつから飲む?
妊娠1カ月以上前から葉酸サプリを飲むことが推奨されています。
ただ、
「妊婦は葉酸サプリはいつから飲む?」
という問いかけに対しては、妊婦になる前の妊活を始めたときからというのが理想です。
なぜなら、妊娠に気がつくのは妊娠4週以降だからです。
神経管の閉鎖は妊娠6週くらいで起こりますので、妊娠に気付いてからでは遅いのです。
葉酸サプリはいつまで飲む?
いつから?はわかりましたね。いつまで?に答えると
妊娠1カ月前から妊娠3カ月までは、食事からの葉酸摂取にプラスして葉酸サプリなどから1日400μg(0.4mg)の葉酸摂取が推奨されています。
「いつまで?」の推奨は妊娠3カ月までですが、葉酸サプリはまだ続けるべきです。
なぜなら、まだまだ葉酸需要は減らないからです。
- 妊娠3カ月から出産まで
⇒食事からの葉酸摂取で480μg - 授乳期
⇒食事からの葉酸摂取で340μg
これだけの葉酸量を、食事から摂取するにはたいへんです。
そこで葉酸サプリを利用するわけです。
2012年の国民健康・栄養調査では、女性15歳から39歳の食事からの葉酸摂取は220μgから230μgくらいです。
葉酸サプリに使われている葉酸は、食事の葉酸と比べると体内の利用効率が高い(後述「食事葉酸と葉酸サプリの質の違い」)ですので、
葉酸サプリからの葉酸摂取の目安は、次のように計算できます。
- 妊娠3カ月から出産まで
⇒葉酸サプリで130μg - 授乳中
⇒葉酸サプリで60μg
妊娠3カ月からは、妊娠1カ月前から妊娠3カ月までの葉酸サプリからの葉酸摂取推奨量の15%~30%程度を摂取すればいいことになります。
食事葉酸と葉酸サプリの質の違い
葉酸サプリに使われている葉酸はモノグルタミン酸型葉酸です。
野菜等に含まれるポリグルタミン酸型葉酸(食事性葉酸)と比較すると、体内での利用効率(効果)が約2倍高いと言われています。
つまり、葉酸サプリを利用ですれば効率良く葉酸を摂ることができます。
18歳から49歳までの女性、妊婦、授乳中の方の葉酸推奨摂取量(μg)
出典:国民生活センター発表資料
まとめ
- 医療用葉酸フォリアミンは葉酸サプリの代わりにはならない
- 葉酸に期待できる主な効果
- 神経管閉塞障害の予防効果
- 流産の予防効果
- 貧血の予防効果
- つわりの予防効果
- 食事からとる葉酸と葉酸サプリから取る葉酸は、吸収の質が違う
- Q:葉酸サプリは、いつからいつまで飲むのが望ましいか?
- A:葉酸サプリは、妊娠の1カ月前から授乳中まで継続服用が望ましい
- 葉酸サプリや食事からの葉酸の摂取推奨量は、妊娠の時期によって違う
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