投資信託は金融機関(銀行、証券会社)のドル箱商品です。
なぜなら、投資信託は販売手数料で儲け、運用時の信託報酬(運用手数料)で儲けられる2度おいしい商品だからです。
そして、日本の投資信託の手数料は、アメリカと比較すると異常に高いです。
- 安かろう悪かろう
- 高いものには価値がある
といいますが、投資信託に限っては「手数料が高い=儲かる」とも限りません。
反対に、投資信託(ファンド)の儲けが同じであるならば、手数料が安いほうが投資家は儲かります。
- 投資信託の2つ(3つ?)の手数料
- 投資信託の手数料の日米比較
- 投資家の儲けに投資信託の手数料がどう影響するのか
この3点を数値を使って解説します。
投資信託とは
投資信託とは、
投資家から集めた資金を株、債券、REIT(証券化された不動産)などに投資して、運用益を投資家へ返す商品のことです。ファンドともいいます。
投資信託は
- 小額資金でプロの運用成績を買える
- 世界に分散投資できる
というメリットがあります。
ただし、投資信託はプロのファンドマネージャーが運用するためタダというわけにはいきません。
当然、手数料が発生します。
投資信託の手数料 日米比較1 販売手数料
金融機関が投資信託を売ったとき(投資家が投資信託を購入したとき)に発生する手数料が販売手数料です。
基準価格に販売手数料(年率)を掛けた金額を金融機関に支払います。
投資信託の値段のこと。
ほとんどの投資信託の基準価額は1万円(10000口)からスタートします。
基準価格が高い→良い投資信託
基準価格が安い→悪い投資信託ではありません。
金融庁の調べによると、投資信託販売手数料の平均は3.2%(純資産額上位5商品)です。
金融庁の資料を参考に作成
アメリカの投資信託の販売手数料と比較すると、日本の投資信託の販売手数料は高いというレベルではなく高すぎます。
(5倍以上)
これでは儲かるはずがありません。
なぜなら、販売手数料分だけ購入できる投資信託の口数が減るからです。
例えば、販売手数料3.2%の投資信託であるならば、100万円で買える投資信託は96.8万円です。
これは3.2万円の損失からスタートさせられているようなものです。
手数料は儲けに確実に影響を与えます。
最近ではネット証券を中心に、販売手数料無料(ノーロード)の投資信託が増えてきています。
販売手数料無料の投資信託を比較検討して購入するのが望ましいです。
投資信託の手数料 日米比較2 信託報酬
信託報酬とは運用手数料のことです。
投資信託を持ち続ける限り、永久に発生し続けます。
金融庁の資料を参考に作成
信託報酬(手数料)もアメリカと比較すると、死ぬほど高いです。
(5倍以上)
また、信託報酬の報酬とは名ばかりで、投資信託の運用がマイナスであっても信託報酬は支払わなくてはなりません。
例えば、運用益率(儲け)が-5%であっても1.53%(日米比較の表より)の信託報酬が発生するため、トータル6.53%の損失です。
つまり、投資信託の運営が良くても悪くても(儲かっても儲からなくても)きっちり、手数料だけは徴収されます。
さらに、信託報酬は見えない形で徴収されています。
基準価格を調整するという形です。
例えば、1年間で2%の運用益が出たとします。
年始の基準価格10000円であれば、年末は2%の儲けを乗せて10200円になるはずです。
しかし、実際の基準価格は1.53%の手数料を差し引いて、10047円前後に収まってしまうのです。
(実際は、毎日基準価格が更新される度に1.53%/365日だけ基準価格が下がります)
信託報酬(手数料)を安くするなら、アクティブファンド(アクティブ型投資信託)ではなくインデックスファンド(インデックス型投資信託)を選ぶべきです。
市場の平均値(インデックス)より高い儲けを求める投資信託のこと。
儲けを追求する分、手数料がインデックスファンドより高い。
しかし、アクティフファンドとインデックスファンドの儲けを比較すると、必ずしも「アクティブファンド>インデックスファンド」ではない。
積立NISAにラインナップされている投資信託は、「手数料なし」「信託報酬が一定水準以下」です。
信託財産留保額という謎のペナルティ
信託財産留保額とは、投資信託を売るときにかかる手数料的なものです。
手数料的とあえていうのは、信託財産留保額は金融機関の儲けにはならないからです。
投資信託を売却するとファンドの資金は減少します。ファンドの資金が減少するとファンドの運営に影響を与えます。
(ファンドは時価総額が○○億円を下回ると繰り上げ償還(解散)するというルールがある)
影響をやわらげるため(売却を食い止めるため?)、いくらかファンドに資金を置いて売却させられます。
信託財産留保額は売却ペナルティのようなものです。
投資信託は手数料で儲からない
投資信託の手数料でどのように負けてしまうのか(儲からないのか)を数字を使って解説します。
投資信託の手数料は純資産額上位5商品の平均を採用します。
販売手数料:3.2%
信託報酬:1.5%
日本で販売されている国内株式アクティブ運用益率の平均は1~2%です。
運用益率(儲け)は2%を想定します。
まず、100万円分(手数料込み)の投資信託を購入して、10年間運用したときの計算結果は次の通りです。
縦軸:基準価格
横軸:年数
(以下のグラフも同じ)
投資信託を購入して7年目までは儲けなしで、7年目でようやくトントンです。
地味に貯金していた方がまだマシです。
投資信託の真髄は積立です。
毎年100万円分を10年間購入し続けたときの計算結果は次の通りです。
10年間積立を続けても993万円(99.3%)にしかなりません。10年間ずっと儲けなしです。
手数料が安い投資信託が儲かる確率が高い
- 投資信託に限っては「手数料が高い=儲かる」とも限りません。
- アクティブファンドがインデックスファンドより儲かるとも限りません。
手数料の安いインデックスファンドを購入したとき、儲けはどのようになるのか計算してみましょう。
- 販売手数料:なし(ノーロード)
- 信託報酬:0.5%
- 運用益率(儲け):2%
100万円分(手数料込み)の投資信託を購入して、10年間運用したときの計算結果は次の通りです。
販売手数料がかからないため初年度(1年目)からプラスで、堅実に儲けられます。
10年後、100万円は116万円になり、16万円の儲けがでます。
毎年100万円分を10年間購入し続けたときの計算結果は次の通りです。
10年間コツコツ積み立てた総額1000万円は1086万円になり、86万円の儲けです。
投資信託の手数料で儲けを比較
先述の手数料の高いアクティブファンドと、手数料の安いインデックスファンドの儲けを計算してグラフで比較してみましょう。
(毎年100万円積立)
グラフの縦スケールが狭くわかりにくいですが、時間(投資年数)の経過とともに差は広がるばかりです。
信託報酬(手数料)と儲けの現実
投資信託の手数料は、投資家の儲けに直結することがわかりました。
さらに、信託報酬(手数料)が高ければ、儲けにバラツキが大きいというデータがあります。
金融庁の資料を参考に作成
信託報酬(手数料)0.75%くらいの投資信託の儲けは0.25%~4%ですが、信託報酬(手数料)1.5%くらいの投資信託の儲けは-4%~11%です。
信託報酬(手数料) | 平均の儲け |
---|---|
0.5%超え1%以下 | 2.03% |
1%超え1.5%以下 | 1.26% |
1.5%超え2%以下 | 1.27% |
これらのデータから言えることは、次の2点です。
- 信託報酬(手数料)が高ければ、大きく儲かるかもしれないが、負ける可能性も高い(ハイリスク)
- 信託報酬(手数料)が高くなれば、平均すると儲からない
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まとめ
- 金融機関が投資信託を売ったとき、販売手数料が発生する
- アメリカの投資信託の販売手数料と比較すると、日本の投資信託の販売手数料は5倍高い
- 最近ではネット証券を中心に、販売手数料無料(ノーロード)の投資信託が増えてきている
- 信託報酬とは運用手数料のことで、手数料は基準価格に反映させる形で差し引きされている
- 信託報酬(手数料)もアメリカと比較すると、5倍の違いがある
- 信託報酬(手数料)の低いインデックスファンドが、手数料の高いアクティブファンドの成績を上回る場合もある
- 信託報酬(手数料)が高ければ、儲けにバラツキが大きいというデータがありる
- 運用成績が同じであれば、「販売手数料なし」「信託報酬が安い」投資信託が一番儲かる
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