主な便秘薬は作用機序の違いで4種類に分けられています。
- 大腸刺激性便秘薬
センノシド、プルゼニド、アローゼン、ヨーデルS、ラキソベロンなど - 便の水分量を増やす便秘薬(大腸作用型)
酸化マグネシウム、マグミット - 便の水分量を増やす便秘薬(小腸作用型)
アミティーザ - その他の便秘薬(便秘型過敏性腸症候群)
リンゼス
アミティーザとリンゼスは、薬価(薬の価格)の高さと新作用機序のため、まだまだ一般的ではありません。
現在便秘によく使われているのは、下剤タイプ便秘薬(センノシド、他)と便の水分量を増やす便秘薬(酸化マグネシウム、他)です。
その2種類の中では、ドバーっと出して便秘が解消できる下剤タイプ便秘薬が使われる傾向がありますが、長期服用には向きません。
長期服用には酸化マグネシウムがおすすめです。
※下剤とは排便を促すために飲む薬。つまり便秘薬全般を指します。
本記事では、強力に排便を促す便秘薬を特に「下剤タイプ便秘薬」と記載します。
便秘の3大原因
便秘が起こる原因はさまざまですが、3つの原因を解説します。
1.便の水分の低下
便に水分量が足りないときは、うさぎの便のようなコロコロ便になります。
小さなコロコロ便は少しずつ排便できますが、癒着して大きなコロコロ便になると(宿便が増えると)、排便できず便秘になります。
ムリにがんばるとおしりから出血することもあります。
2.腸内環境の悪化
大腸内は、ビフィズス菌を代表とする善玉菌が多くを占めています。
腸内細菌はバランスを取っていて、最適なバランスは善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7といわれています。
腸内細菌のバランスが乱れたとき(善玉菌↓、悪玉菌↑)、便秘や下痢などのさまざまな症状を引き起こします。
腸内細菌のバランスと整腸剤はこちらの記事で解説しています。
3.大腸の運動機能の低下 (宿便の増加)
胃に食物が入ってくると、胃腸の運動が活発化します。
便が肛門付近にたまってくると、便意を催すように神経を通して大腸(肛門)に指令を出します。
しかし、ストレスなどで神経伝達がうまく伝わらないと、便がたまっているにもかかわらず、便が外へ排泄されなくなり便秘が起こります。
便秘で長くとどまった便を宿便といい、宿便は腹痛・残便感・吐き気などの原因です。
下剤タイプ便秘薬の作用機序
下剤タイプ便秘薬(大腸刺激性便秘薬)は、主に3種類の剤形があります。
- 錠剤:センノシド、プルゼニド、ヨーデルS、ラキソベロン錠
- 顆粒剤:アローゼン
- 液剤:ラキソベロン内用液
作用機序の共通は、大腸を直接刺激して排便を促すことです。
下剤タイプ便秘薬の作用機序1
センノシド、プルゼニド、ヨーデルS、アローゼンは、腸内細菌の作用を使って大腸を直接刺激して排便を促します。
さらに、大腸内の水分吸収を抑えて便が固くならないようにして便秘を改善する作用も併せ持ちます。
下剤タイプ便秘薬の作用機序2
ラキソベロンの主成分ピコスルファートは、腸内細菌由来の酵素と反応して、活性型ジフェノール体に変化します。
活性型ジフェノール体は大腸を直接刺激して排便を促し、さらに大腸内の水分吸収を抑えて便が固くならないようにして便秘を改善します。
下剤タイプ便秘薬の効果と強さ
下剤タイプの便秘薬の中でも、センノシド(プルゼニド)は強いです。
成人のセンノシド(プルゼニド)の便秘改善効果(有効率)83.6%です。
ただし、強く効く代わりに副作用も強く出る場合があります。
下剤タイプ便秘薬の副作用
センノシド(プルゼニド)は大腸を直接刺激するため、量が多いと腹痛や下痢の副作用があらわれます。
(この副作用、おなかがキュルキュルッとして結構つらいそうです)
主な副作用頻度は次のとおりです。
副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
腹痛 | 11.9 |
下痢 | 1.1 |
腹鳴 | 0.8 |
悪心・嘔吐 | 0.8 |
(再評価結果)
下剤タイプの便秘薬は副作用が起こらないように、必要最低限の用量から開始して効果が出るまで増量します。
下剤タイプ便秘薬の習慣性
大腸を刺激し続けると、大腸が刺激に慣れてしまい、便秘薬の切れ味が悪くなってきます。
大腸を直接刺激するタイプ、下剤タイプの便秘薬には習慣性があります。
便秘薬の効果が減弱すると、さらに便秘薬を増量せざるをえなくなり腹痛の副作用リスクが増えます。
そして、副作用リスクを抱えたまま便秘薬の量は増え続け、便秘薬スパイラルにはまります。
そうならないためには、
通常の便秘には整腸剤(ビオフェルミン、ラックビーなど)や便軟化作用のある酸化マグネシウムを主に使い、
頑固な便秘に限定して下剤タイプの便秘薬を使うが賢い便秘との付き合い方です。
酸化マグネシウムは種類が多い
左:酸化マグネシウム錠330mg「ヨシダ」
右:マグミット錠330mg
酸化マグネシウムを主成分とする便秘薬は、酸化マグネシウム「ヨシダ」(旧名マグラックス)、酸化マグネシウム「ケンエー」、マグミットなどがあります。
- 1錠のmg数も200mg~500mgまで、多くの種類があります。
- 飲みにくいですが、酸化マグネシウムは粉末薬もあります。
酸化マグネシウムの作用機序
酸化マグネシウムは、腸内の水分を集めて便をやわらかくします。
水分の集まった便は適度に膨らみ、腸を刺激してスムーズな排便を促します。
酸化マグネシウムは腸を直接刺激するのではなく、膨らんだ便が腸を刺激するため自然な排便ができる便秘薬です。
また、癖になりにくい便秘薬でもあります。
酸化マグネシウムの飲み方
酸化マグネシウムは、飲む量で効果が違います。
酸化マグネシウム量 | 効果 |
---|---|
少量 | 尿路結石予防 |
中用量 | 胃痛・むかつき |
高用量 | 便秘 |
酸化マグネシウムは、便をやわらかくして自然に排便したいときは1日2~3回に分けて飲み、ドバっとたまった宿便を排便したいときは寝る前1回まとめて飲みます。
酸化マグネシウムの便に水分を与える作用促進ため、多めの水での服用がおすすめです。
酸化マグネシウムの便秘に使う処方量は750mg~2000mg/日が多いですが、便秘への効果は飲んでみないことにはわかりません。
酸化マグネシウムが効きすぎた場合、下痢をします。
下痢したときは、酸化マグネシウムを減量して下痢も便秘もしないちょうどいい量を探らなくてはなりません。
酸化マグネシウムは自己調整が必要な便秘薬です。
酸化マグネシウムは市販薬もあります。
まとめ
- 下剤タイプ便秘薬(センノシド、プルゼニド、アローゼン、ヨーデルS、ラキソベロンなど)は、大腸を直接刺激して排便を促す(作用機序)
- 下剤タイプの便秘薬は作用が強いが、習慣性があるため長期使用には向かない
- 酸化マグネシウムは、腸内の水分を集めて便をやわらかくする(作用機序)
- 酸化マグネシウムは腸を直接刺激するのではなく、膨らんだ便が腸を刺激するため自然な排便ができる
- そのため、習慣性は低い
- 通常の便秘には整腸剤(ビオフェルミン、ラックビーなど)や便軟化作用のある酸化マグネシウムを主に使い、ひどい便秘のときにのみ下剤タイプの便秘薬を使うのが望ましい
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