妊婦の便秘薬 ビオフェルミン、酸化マグネシウム、ラキソベロンの違い

妊婦
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便秘がちな女性は多いですが、妊娠するとさらに便秘はひどくなる場合が多いです。

妊娠すると運動量が減り、あるホルモンの分泌量が増え、赤ちゃんが大きくなるにつれ子宮も大きくなるからです。

 

妊婦の便秘治療は、食事療法運動療法が第一優先です。

食事を改善して水分を多めに摂ります。(食事療法)

  • ヨーグルト
  • 食物繊維
  • オリゴ糖など

 

腸の運動を活発にさせるために軽い運動をします。(運動療法)

  • ウォーキング
  • 妊婦体操など

 

それでも便秘が解消しないときは、便秘薬を使います。

 

妊婦の便秘に使われる便秘薬は、ビオフェルミンなどの整腸剤や酸化マグネシウムなどの便軟化作用を持つ便秘薬が第一優先です。

それでも効果がない場合は、大腸刺激性便秘薬を使います。

  • ラキソベロン
    (ピコスルファートナトリウム)
  • アジャストA・アローゼン(センナ)
  • プルゼニド・センノサイド(センノシド)
  • テレミンソフト坐剤(ビサコジル)

 

アジャストA、アローゼン、プルゼニド、センノサイドは、添付文書(薬の説明書)上、妊婦には原則禁忌(原則使わない)です。
(実際は慎重に使用されることがある)

そのため、妊婦の便秘薬はビオフェルミン、酸化マグネシウム、ラキソベロン、テレミンソフト坐剤の使用が多いです。

妊婦の便秘の原因

便秘の原因1:ホルモンの分泌量の変化

女性ホルモンは2種類あります。

  1. エストロゲン(卵胞ホルモン)
  2. プロゲステロン(黄体ホルモン)

 

エストロゲンは女性らしさを作るホルモンです。

プロゲステロンは、妊娠前は妊娠しやすい子宮内膜環境を整え、妊娠後は子宮収縮を抑えて妊娠を継続させる働きをするホルモンです。

 

妊娠すると、プロゲステロンとエストロゲンの分泌量が増えてきます。

特に妊娠初期(4週から7週)は、プロゲステロン分泌量がエストロゲンより優位となり、腸の運動を抑制します。(便秘しやすくなる)

急なホルモン環境の変化で多くの妊婦さんが便秘に悩まされます。

 

妊娠中期に入ると、プロゲステロンとエストロゲンがバランスして便秘も落ち着いてきますが、妊娠後期になると、また便秘がぶり返す場合が多いです。

便秘の原因2:子宮の肥大化

妊娠して赤ちゃんが大きくなるにつれ、子宮も大きくなります。

肥大化した子宮は腸の血流を圧迫し、腸の運動を妨げたり痔をつくりやすくします。

妊娠後期になると、また便秘がぶり返してしまうのです。

便秘の原因3:腸内環境の悪化

腸内は、ビフィズス菌を代表とする腸の善玉菌が多くを占めています。

腸の善玉菌と悪玉菌のバランスがくずれると、便秘や下痢などのさまざまな症状を引き起こします。

ミヤBMは抗生物質と併用OK!下痢・便秘改善効果 ビオフェルミンとの違いは?
ビオフェルミンやラックビーは抗生物質と一緒に飲むと、抗生物質に負けて効果がなくなりますが、ミヤBMは抗生物質に耐久性があるため、併用も可能です。

 

便秘の原因4:水分の低下

便に水分量が足りないときは、うさぎの便のようなコロコロ便になります。

小さいコロコロ便は少しずつ排便できますが、癒着して大きなコロコロ便になると、排便できず便秘になります。

妊婦の便秘薬1 ビオフェルミン

ビオフェルミンを便秘薬として紹介しましたが、厳密にはビオフェルミンは整腸剤です。

便秘と下痢の両方に効果があります。

ビオフェルミンの整腸作用

ビオフェルミン錠剤は、ビフィズス菌を主成分とする整腸剤です。

 

ビフィズス菌は2つの効果で便秘・下痢などの腸症状を改善します。

  1. 腸内で増殖して悪玉菌の増殖を抑制する
  2. 善玉菌を増やす
  3. その結果、腸内環境が改善する
    (便秘・下痢に効果)

 

ただ、ビオフェルミンは妊婦の便秘への効果がやや不十分なため、便秘薬(酸化マグネシウムやラキソベロンなど)との併用が多い印象です。

ビオフェルミンの飲み方

ビオフェルミンは1回1錠(1包)~2錠(2包)を1日3回飲むのが標準的です。

妊婦も同用量で問題ありません。

便秘が改善しても、ビオフェルミンは一定期間の継続服用をおすすめします。

なぜなら、服用している間は腸内環境が乱れにくく、便秘予防になるからです。

ビオフェルミン錠とビオフェルミン配合散の違い

ビオフェルミン錠、ビオフェルミン配合酸

ビオフェルミンとビオフェルミン配合散は同じ名前がついていますが、主成分が違う整腸剤です。

  • ビオフェルミン錠:ビフィズス菌
  • ビオフェルミン配合散:乳酸菌+糖化菌

 

ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌はどれも腸内環境を整える成分であることには変わりないため、ビオフェルミン錠とビオフェルミン配合散は同じように便秘や下痢などに使われています。

特に使い分ける必要はありません。

 

※ビオフェルミンRは別の目的で使用する整腸剤です。

ビオフェルミン錠/散/Rの違い、下痢・便秘改善効果と副作用【赤ちゃん、幼児対応】
ビオフェルミンは、腸内フローラのバランスを整え、自然治癒に近い形で下痢・便秘に効果を発揮します。赤ちゃんから大人まで幅広く使用されています。

妊婦の便秘薬2 酸化マグネシウム

ビオフェルミンとともに妊婦の便秘薬に使われる便秘薬が酸化マグネシウムです。

酸化マグネシウムは種類が多い

酸化マグネシウム錠330mg「ヨシダ」、マグミット錠330mg」

左:酸化マグネシウム錠330mg「ヨシダ」
右:マグミット錠330mg

 

酸化マグネシウムを主成分とする便秘薬は、酸化マグネシウム「ヨシダ」(旧名マグラックス)、酸化マグネシウム「ケンエー」マグミットなどがあります。

  • 1錠のmg数も200mg~500mgまで、多くの種類があります。
  • 飲みにくいですが、酸化マグネシウムは粉薬もあります。
  • 市販薬もあります。

妊婦・非妊婦に関わらず、酸化マグネシウムを便秘薬と使う場合、3つのメリットがあります。

  1. 効果がマイルドな便秘薬
  2. 副作用が少ない便秘薬
  3. 癖になりにくい便秘薬
    (便秘薬の癖・習慣性については後述)

 

妊婦の便秘には酸化マグネシウムが使われることが多く、ビオフェルミンを併用する場合もあります。

酸化マグネシウムでも排便できない頑固な便秘持ちの妊婦さんは、後述する便秘薬ラキソベロン便秘坐剤レシカルボン坐剤を使用します。

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レシカルボンは炭酸ガス(二酸化炭素)によって排便を促すため、自然な形で便を排出できます。イメージすると酸化マグネシウム(マグミット)の座薬版でしょうか。

 

酸化マグネシウムの便秘改善作用

酸化マグネシウムは、腸内の水分を集めて便をやわらかくします。

水分の集まった便は適度に膨らみ、腸を刺激してスムーズな排便を促します。

酸化マグネシウムは腸を直接刺激するのではなく、膨らんだ便が腸を刺激するため自然な排便ができる便秘薬です。

酸化マグネシウムの飲み方

酸化マグネシウムは小用量で胃の制酸剤
高用量で便秘薬として効果を発揮します。

そのため、酸化マグネシウムはある程度の量を飲まないと、なかなか便秘改善効果があらわれません。

 

酸化マグネシウムは、便を柔らかくして自然に排便したいときは1日2~3回に分けて飲み、ドバっと排便したいときは寝る前1回まとめて飲みます。

酸化マグネシウムを妊婦の便秘薬として使う場合、酸化マグネシウム1日量は0.5g~2gが適量です。

ただし、酸化マグネシウムは量が多いと下痢する場合があります。
そのときは、酸化マグネシウムの量を調整して飲みます。

酸化マグネシウムの併用注意

酸化マグネシウムはマグネシウム(Mg)を含みます。

次にあげる薬はマグネシウムを含む薬と併用すると効果が減弱します。

併用する場合は、少なくとも2時間あけて服用します。

テトラサイクリン系抗生物質

  • ミノマイシン(ミノサイクリン)
  • ビブラマイシン(ドキシサイクリン)など

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ニューキノロン系抗菌剤

  • クラビット(レボフロキサシン)
  • オゼックス(トスフロキサシン)
  • ジェニナック(ガレノキサシン)など

原因は不明ですが、セフェム系抗生物質セフゾン(セフジニル)も効果が減弱します。

 

ビスホスホネート系骨粗しょう症薬

  • ボナロン・フォサマック(アレンドロン酸)
  • ボノテオ・リカルボン(ミノドロン酸)など
酸化マグネシウムで宿便を撃退!何錠までなら飲んでもOK?
酸化マグネシウムは大腸を刺激するタイプの便秘薬ではないため、お腹が痛くなりにくくクセになりにくい自然な排便を促す薬です。

妊婦の便秘薬3 ラキソベロン内用液

ラキソベロンはピコスルファートナトリウム水和物を主成分とする便秘薬です。

ラキソベロンには錠剤と液剤がありますが、妊婦の便秘薬は液剤のラキソベロン内用液がほとんどです。

ラキソベロン内用液

なぜなら、ラキソベロン内用液は1滴単位で用量の調整ができる便利な便秘薬だからです。

(ラキソベロン内用液5滴≒ラキソベロン1錠)

ラキソベロンの便秘改善作用

成人のラキソベロンの便秘改善率は83.4%です。
(妊婦の便秘改善率は不明)

酸化マグネシウムは腸を間接的に刺激しましたが、ラキソベロンは腸を直接刺激して便秘を改善します。

 

ラキソベロンの主成分ピコスルファートナトリウム水和物は、腸内細菌由来の酵素と反応してれ、活性型ジフェノール体に変化します。

活性型ジフェノール体は腸を直接刺激して排便を促し、さらに腸内の水分の吸収を抑えて便が固まらないようにして便秘を改善します。

ラキソベロンの飲み方

成人の適応量は1日1回寝る前に10~15滴です。

先述の通り、ラキソベロンは腸を直接刺激するため、用量が多いと腹痛や下痢の副作用があらわれます。
(この副作用、おなかがキュルキュルッとして結構つらいそうです)

 

副作用が起こらないために、ラキソベロンは必要最低限の用量から開始します。

妊婦の場合は、1日1回寝る前に5滴~10滴からのスタートが多いです。

便秘改善効果がないようであれば、効果が出るまで1滴ずつ増量します。

ラキソベロンは癖になる

腸を直接刺激するタイプの便秘薬は習慣性があります。

  • ラキソベロン
    (ピコスルファートナトリウム)
  • アジャストA・アローゼン(センナ)
  • プルゼニド・センノサイド(センノシド)
  • テレミンソフト坐剤(ビサコジル)
センノシド(プルゼニド)の作用・効果・時間と副作用 市販は?
大腸刺激下剤タイプの便秘薬の中ではセンノシド(プルゼニド)は強い便秘薬です。ただし、使い続けると効果が減弱して、増量を重ねる便秘薬スパイラルにおちいる場合があります。

 

腸を刺激している間に、腸が刺激に慣れてしまって便秘薬の効果が落ちてきます。
(癖になる)

効果が落ちてくると便秘薬を増量せざるえなくなります。

そして、どんどん便秘薬の量は増えてスパイラルにおちいることがあります。

 

そうならないためには、

通常の妊婦の便秘にはビオフェルミンと酸化マグネシウムを主に使い、頑固な便秘に限定してラキソベロンを使うが賢い便秘薬との付き合い方です。

ラキソベロン錠/内用液(ピコスルファート)の効果時間と副作用(下痢・腹痛)
ラキソベロン内用液は同じ大腸刺激タイプのセンノシド(プルゼニド)と比べると副作用がマイルドです。そのため、妊婦の便秘にはよく使用されます。

まとめ

  1. 妊婦の便秘頻度は高い
  2. その理由は、妊娠すると運動量が減り、あるホルモンの分泌量が増え、赤ちゃんが大きくなるにつれ子宮も大きくなるから
  3. 妊婦の便秘治療は食事療法と運動療法が第一優先で、それでも便秘が改善しないときは便秘薬を使う
  4. 妊婦の便秘薬の優先順位は、
    1.ビオフェルミンなどの整腸剤や酸化マグネシウムなどの便軟化作用を持つ便秘薬
    2.ラキソベロンなどの大腸刺激性の便秘薬
  5. ビオフェルミンは整腸作用で便秘・下痢を改善する
  6. 酸化マグネシウムは便の軟化作用で自然に便秘を改善する便秘薬
  7. ラキソベロンは直接腸を刺激して便秘を改善する便秘薬

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