認知症薬メマリー(メマンチン)とアリセプトの違い【効果、副作用、併用】

認知症薬
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アルツハイマー型認知症の中核症状(記憶の低下など、認知症の中心的症状)は、メマリー、アリセプトなどの認知症薬で進行を遅らせることができます。

しかし、薬で治療をしていても、認知症の中核症状はゆっくりと進んでしまい、歯がゆい思いをすることも少なくはありません。

 

2017年現在、アルツハイマー型認知症薬は4種類あります。

  1. アリセプト(ドネペジル)
  2. レミニール(ガランタミン)
  3. イクセロン・リバスタッチ
    (リバスチグミン)
  4. メマリー(メマンチン)

 

1~3番の3種類の認知症薬は、脳内のアセチルコリンの濃度を高めて神経伝達の低下を抑える作用があり、認知症の進行を抑制する効果があります。

メマリーはアリセプトなどの他の認知症薬と違う作用機序があり、認知症の進行を抑制する効果があります。

 

メマリーの効果、副作用、作用機序の違いをアリセプトと比較しながら解説します。

メマリーとアリセプトの併用効果をデータで示します。

メマリーの作用機序

メマリー錠とメマリーOD錠

左:メマリー錠20mg
右:メマリーOD錠20mg

 

こちらの記事を先に読むと理解が深まります

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アルツハイマー型認知症では、グルタミン酸が神経を過剰に刺激するため、継続的にノイズが発生していると考えられています。

そのノイズが記憶の邪魔をし、記憶力が低下すると考えられています。

 

メマリーの主成分であるメマンチンは、グルタミン酸の過剰な刺激から守る作用があり、記憶力の低下を抑制する効果が期待できます。

メマリー(メマンチン)作用機序のイメージ

メマリーの作用と効果

グルタミン酸神経毒性
甘みなどの調味料で知られるアミノ酸のひとつであるグルタミン酸は、脳内では記憶・学習に関わる重要なアミノ酸です。
しかし、過剰なグルタミン酸は、神経を傷つけ興奮や異常行動を起こすことがあります

メマリー(メマンチン)の効果

メマリー(メマンチン)は、アリセプトなどの脳内のアセチルコリンの濃度を高めて、神経伝達の低下を抑える作用機序を持つ認知症薬と同様に、認知機能が低下するのを遅らせる効果が認められています。

 

さらに、

メマリー(メマンチン)は、攻撃(暴力)の進行を抑制する効果と、攻撃(暴力)の発現を抑制する効果が確認されています。

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メマリー(メマンチン)の保険適応と使用のタイミング

メマリー(メマンチン)の保険適応は
中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」です。

メマリー(メマンチン)は、最初から使われるのではなく、

アリセプトなどからの変更や、アリセプトとの併用で使用される場合が多いです。
(診断時に、アルツハイマー型認知症が中等度以上まで進行していた場合は除く)

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メマリー(メマンチン)の用法用量(使い方)

メマリー(メマンチン)は、アリセプトなどと同様に、少量からステップアップしていきます。

メマリーのステップアップの仕方

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メマリー(メマンチン)は、1日1回5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつステップアップし、1日1回20mgまで増量するのがアルツハイマー型認知症に対する標準的な治療法です。

その理由は、メマリー10mg(メマリー20mg)から飲み始めると、めまい、不眠、落ち着きがないなどの副作用の発現率が高くなるからです。

メマリー5mgは副作用のクッションの役割を果たします。

 

メマリー(メマンチン)は、食事の影響を受けないため、食事に関係なく都合のいい時間を決めて服用できます。

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厚生労働省は認知症薬の用量について医師の裁量権を認めると発表しました。
(2016年6月)

認知症薬(アリセプトなど)を増量すると、攻撃が悪化したり興奮が起こる場合、またはその他の副作用が起こる場合は、低用量での治療を続けられるようになりました。
→必ずしも認知症薬の増量は必要ない
→アリセプト3mgやメマリー10mgの用量で飲み続けている認知症患者さんは意外と多い

 

メマリー(メマンチン)の副作用

アリセプトなど3種類の認知症薬は、吐気、下痢などの消化器系の副作用が主でしたが、メマリー(メマンチン)は、めまいの副作用が起こりやすいです。

副作用は、メマリー(メマンチン)を服用開始してから、1カ月以内に起こることが多いです。

アリセプトなどの認知症薬と副作用の頻度を比較すると、やや副作用は起こりやすいようです。

メマリー(メマンチン)を中止すれば、めまいなどの副作用は消失していきます。

 

メマリー(メマンチン)の主な副作用

副作用 確率
めまい 4.7%
便秘 3.1%
体重減少 2.2%
頭痛 2.1%

(臨床試験より)

 

アリセプトの主な副作用

副作用 確率
食欲不振 1~3%未満
吐気
下痢

(添付文書より)

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メマリー(メマンチン)とアリセプトの併用

中等度以上のアルツハイマー型認知症では、アリセプトとメマリー(メマンチン)の併用が標準的な治療法になりつつあります。

アリセプトとメマリー(メマンチン)の併用により、アリセプト単独よりも有意に認知症の進行を抑制したという海外の報告があります。

アリセプト+メマリー(メマンチン) 追加併用効果

アリセプトにメマリー(メマンチン)を追加併用したときの効果の報告事例を1例紹介します。

アリセプトを6カ月以上服用している、中等度から高度のアルツハイマー型認知症の方を対象にした併用試験です。

メマリー5mgからスタートして1週間おきに5mgずつステップアップして、最終的にメマリー20mgを、21週間アリセプトと併用したときのスコアの平均値です。

 

アリセプト単独とメマリー併用の効果比較1
認知機能を評価(SIB)

認知機能を評価(メマリー単独とアリセプト併用の効果の差のグラフ)

 

アリセプト単独とメマリー併用の効果比較2
日常生活の動作を評価(ADCS-ADL19)

日常の生活で評価(メマリー単独とアリセプト併用の効果の差のグラフ)

 

アリセプト
メマリー併用
アリセプト
単独
認知機能を評価 0.9 -2.5
日常生活動作を評価 -2.0 -3.4

 

上の表とグラフは、メマリー(メマンチン)併用開始直前のスコアを0として、そこからの変化を比較した結果です。

 

アリセプト単独よりも、メマリー(メマンチン)を併用した方が、「認知機能を評価(SIB)」のスコアは高く、「日常生活動作を評価(ADCS-ADL19)」のスコアの減少が少ないです。

アリセプトを単独服用するよりは、メマリー(メマンチン)、アリセプトを併用した方が、認知症の症状の進行を抑制する効果が期待できます。

メマリー(メマンチン)と併用して効果があるのはアリセプトだけか?

メマリーとアリセプトの併用効果を試験したデータはありましたが、メマリー(メマンチン)と他の認知症薬との併用効果のデータは見当たりませんでした。

しかし、理論上は次のパターンの場合、作用機序が違うため併用により相乗効果が期待できると考えられます。

認知症薬 アリセプト レミニール イクセロン
リバスタッチ
メマリー
アリセプト × × × 併用効果あり
レミニール × × × 併用効果あり
イクセロン
リバスタッチ
× × × 併用効果あり
メマリー 併用効果あり 併用効果あり 併用効果あり ×

×:併用効果なし

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アリセプトとメマリーの違い(まとめ)

商品名 アリセプト メマリー
主成分 ドネペジル メマンチン
保険適応 AD 軽度~中等度AD
DLB
作用機序 AchE阻害作用 GA-Re阻害作用
用法 1日1回
副作用 吐き気、下痢 めまい、便秘
最小用量 3mg 5mg
最大容量 10mg 20mg
剤形 錠剤 錠剤
OD錠 OD錠
ドライシロップ
細粒
ゼリー
ジェネリック ×
併用効果 単独服用よりも併用した方が効果がある

AD:アルツハイマー型認知症
DLB:レビー小体型認知症
AchE:アセチルコリンエステラーゼ
GA-Re:グルタミン酸受容体阻害作用

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  1. メマリーは、グルタミン酸が神経を過剰に刺激するために起こるノイズを抑える、唯一の認知症薬
  2. メマリーはアリセプトなどからの変更や、併用で使用することが多い
  3. メマリーも、アリセプトと同様に少量からステップアップして治療域の用量まで増量するのが標準的な使い方
  4. 中等度以上のアルツハイマー型認知症では、アリセプトとメマリーの併用が標準的な治療法になりつつある

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