下痢は誰もが経験する症状で、起こる原因もさまざまです。
- 牛乳(乳糖不耐症:にゅうとうふたいしょう)
- お腹の冷え
- 飲みすぎ食べすぎ
- ウイルスや細菌の感染
(感染性腸炎、食中毒) - 過敏性腸症候群
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 大腸ガン など
下痢は防御反応でもあるため、止めてはいけない下痢もあります。
そのような下痢にロペミン(ロペラミド)のような強力な下痢止め薬を使うと、下痢は止まるかもしれませんが、他の病気が悪化する原因になります。
まず、止めてはいけない下痢について解説します。
ロペミンは諸刃の剣
「ロペミン(ロペラミド)の作用機序」で詳しく解説しますが、ロペミンは腸の運動を半強制的に止めて下痢を抑えます。
下痢はロペミンで止まるかもしれませんが、下痢を起こす根本的な原因はロペミンでは取り除けません。
ロペミンで止めていい下痢
- 過敏性腸症候群(IBS)などストレス性の下痢
- 食べすぎ飲みすぎのよる下痢
ロペミンで止めてはいけない下痢
細菌・ウィルス感染性の下痢(食中毒も含む)
細菌orウィルス | 主な症状 |
---|---|
腸炎ビブリオ | 激しい下痢、腹痛 |
サルモネラ | 腹痛、下痢、発熱、嘔吐 |
O-157 (腸管出血性大腸菌) |
激しい下痢・腹痛 |
ノロウイルス | 激しい下痢・嘔吐、腹痛 |
ロタウイルス | 下痢、嘔吐 |
細菌やウイルスが腸に感染して起こった下痢は、腸を活発に動かすことで細菌やウイルスを体外に排泄しようとする防御反応です。
このような下痢に、ロペミンを使うとどのようなことが起こるかは想像がつくでしょう。
そう、細菌やウイルスが体内(腸)に残り、感染が長引くため症状が悪化します。
ロペミン
ロペミン(ロペラミド)の主成分はロペラミドです。
ロペミンはカプセルと細粒、そして小児用細粒の3種類ありますが、ロペミンカプセルの使用がほとんどです。
ロペミンのジェネリック「ロペラミド」と薬価
ロペミンにはジェネリックもあります。
しかし、ロペミンは常用する薬ではなく薬価(薬の値段)も安いためジェネリックを使うメリットはあまりありません。
薬の名前 | 薬価 | |
---|---|---|
先発 | ロペミンカプセル | 47.5 |
ジェネリック | ロペラミドカプセル「○○」 | 8.5 |
先発 | ロペミン小児用細粒 | 51.8 |
ジェネリック | ロペラミド小児用細粒「○○」 | 12.7 |
※「○○」にはサワイ、タイヨーなどのメーカー名が入ります
ロペミン(ロペラミド)の作用機序
ロペミン(ロペラミド)は、腸のオピオイド受容体を刺激してアセチルコリンの遊離を抑え、腸の運動を抑制します。
胃腸においては消化機能を高める神経伝達物質
オピオイドと聞くと麻薬を思い浮かべる方もいると思います。
麻薬はオピオイド受容体をターゲットにしているからです。
-
脳内オピオイド受容体を刺激
→鎮痛作用 -
腸内オピオイド受容体を刺激
→腸の運動抑制作用
麻薬は脳オピオイド受容体を刺激するため、強力な鎮痛作用が得られますが、腸オピオイドも刺激するため便秘という副作用も付いてきます。
(下痢していない人の腸オピオイド受容体を刺激すると便秘する)
一方、ロペミン(ロペラミド)は脳に作用しないため、鎮痛作用を起こすことなく腸の運動のみを抑制して下痢を鎮めます。
整腸剤は便秘・下痢の両方に効果あり
ロペミン(ロペラミド)の飲み方 (用法用量)
-
大人のロペミン(ロペラミド)の標準量は、1~2カプセル/日です。
-
子供のロペミン(ロペラミド)小児用細粒の標準量は、0.08g~0.16g/kg/日です。
大人子供に関わらず、下痢が治ったらロペミン(ロペラミド)は中止します。
さもないと、ロペミン(ロペラミド)が効きすぎて便秘してしまいます。
ロペミン(ロペラミド)の効果
ロペミン(ロペラミド)の腸に働きかける効果は、モルヒネやコデインといった麻薬より強力です。
大人/子供 | 下痢の種類 | 効果(改善率%) |
---|---|---|
大人 | 急性下痢症 | 89 |
慢性下痢症 | 68 | |
子供 | 急性下痢症 | 85 |
ロペミン(ロペラミド)の効果発現時間
ロペミン(ロペラミド)の効果発現時間(下痢が止まるとき)は不明です。
ロペミン(ロペラミド)は効果の表れ方に個人差があります。
ロペミン(ロペラミド)を1回分飲んでみて、下痢が止まったときがその方の効果発現時間です。
1回分を服用して下痢をしないのであれば、2回目の服用は見送って様子をみるべきです。
(続けると本当にひどい便秘になります)
ロペミン(ロペラミド)の副作用
ロペミン(ロペラミド)の副作用頻度は非常に低く(0.79%)胃腸系の副作用くらいです。
副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
腹部膨満感 | 0.32 |
腹部不快感 | 0.06 |
悪心 | 0.02 |
副作用としてはカウントされていませんが、ロペミン(ロペラミド)は続けるとほぼ確実に便秘します。
服用による便秘に注意が必要です。
ロペミン(ロペラミド)と過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、字のごとく腸が過敏に反応して下痢・便秘・腹痛などの症状を引き起こす病気です。
腸に原因がないにもかかわらず、慢性的に下痢を繰り返すタイプの過敏性腸症候群を下痢型過敏性腸症候群といいます。
ロペミン(ロペラミド)は下痢型過敏性腸症候群で起こる下痢にも使われます。
しかし、2008年にイリボーという下痢型過敏性腸症候群の専用薬が出てからは、使用頻度が減ってきてるように思います。
ロペミン(ロペラミド)の市販薬
ロペラミドを含む市販薬はいくつか発売されていますが、多くはロペラミド以外の成分も含む配合剤です。
- トメダインコーワ錠(市販薬)
- ピタリット(市販薬)
ロペラミド単独の成分を含む市販薬は、ロペラマックサットです。
ロペミンとの違いは
- 1錠中ロペラミドが半量(0.5mg)
- 1日2錠まで
- 錠剤である
まとめ
- 下痢には止めていい下痢と止めてはいけない下痢がある
- ロペミン(ロペラミド)は、腸のオピオイド受容体を刺激して腸の運動を止める
- その腸運動抑制効果は麻薬以上
- 下痢が治まったら、すみやかにロペミン(ロペラミド)は中止する
- さもないとひどい便秘に襲われる
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