ラキソベロンは大腸を直接刺激して大腸の運動を促す便秘薬(大腸刺激下剤)です。
ラキソベロンは即効性がありますが、1回の量が多いと大腸を刺激しすぎて腹痛・下痢などの副作用を起こす場合があります。
そのため、医師が処方した量を基本として自己調整します。
また、ラキソベロンの排便効果に頼りすぎると、
大腸がラキソベロンの刺激に慣れ効果が減弱することもあり、使い方には注意が必要です。
便秘の3大原因
便秘が起こる原因はさまざまですが、3つの大きな原因を解説します。
1.便の水分の低下
便に水分量が足りないときは、うさぎの便のようなコロコロ便になります。
小さいコロコロ便は少しずつ排便できますが、癒着(ゆちゃく)した大きなコロコロ便は便秘の原因です。
2.腸内環境の悪化
腸内は、ビフィズス菌を代表とする善玉菌、そして悪玉菌と日和見菌は、2:1:7で共存しています。
腸の善玉菌と悪玉菌のバランスがくずれると、便秘や下痢などのさまざまな症状を引き起こします。
腸内細菌のバランスはこちらの記事で解説しています。
3.大腸の運動機能の低下 (宿便の増加)
胃に食べ物が入ってくると、胃腸の運動が活発化します。
便が肛門付近にたまってくると、便意を催すように神経を通して大腸(肛門)に指令を出します。
しかし、ストレスなどで神経伝達がうまく伝わらないと、便がたまっているにもかかわらず、便が外へ排泄されなくなり便秘が起こります。
便秘で長くとどまった便を宿便といい、宿便は腹痛・残便感などの原因になります。
ラキソベロンは錠と内用液の2種類
ラキソベロンはピコスルファートナトリウム水和物(以下、ピコスルファート)を主成分とする大腸刺激タイプの便秘薬です。
ラキソベロンには錠剤と内用液の2種類です。
- ラキソベロン錠
- ラキソベロン内用液
ラキソベロン錠と液剤のラキソベロン内用液では、ラキソベロン内用液の使用が圧倒的に多いです。
なぜなら、ラキソベロン内用液は1滴単位で用量の調整ができる便利な便秘薬だからです。
ラキソベロン内用液と錠のピコスルファート量の違い
ピコスルファート量は「ラキソベロン錠1錠=ラキソベロン内用液1滴」ではありません。
ラキソベロン内用液は1mLあたり7.5mgのピコスルファートを含みます。
ラキソベロン内用液は1滴約0.067mLですので、
ラキソベロン内用液1滴あたりのピコスルファート量は0.5mgです。
ラキソベロン錠は1錠あたり2.5mgのピコスルファートを含みます。
つまり、ラキソベロン内用液5滴がラキソベロン1錠と同等の効果です。
ラキソベロンのジェネリック
ラキソベロンはジェネリックもあります。
ラキソベロンはジェネリックの中にはドライシロップや顆粒剤もありますが、ほとんど使われていないようです。
(私は見たことがない)
比較的使用の多いラキソベロンのジェネリックと薬価(1錠、1mLあたりの薬の値段)をまとめると次の通りです。
商品名 | 薬価 | |
---|---|---|
先発 | ラキソベロン内用液 | 24.2 |
ジェネリック | ラック内用液 ヨーピス内用液 ピコスルファートNa内用液 |
9.8 |
先発 | ラキソベロン錠 | 8.6 |
ジェネリック | シンラック錠 ヨーピス錠 ピコスルファートNa錠 |
5.8 |
ラキソベロンの作用機序
ラキソベロンの主成分ピコスルファートは、腸内細菌由来の酵素と反応して、活性型ジフェノール体に変化します。
活性型ジフェノール体は大腸を直接刺激して排便を促し、さらに大腸内の水分吸収を抑えて便が固くならないようにして便秘を改善します。
ラキソベロンの効果
成人のラキソベロンの便秘改善効果(改善率)は次の通りです。
- ラキソベロン内用液:83.4%
- ラキソベロン錠:82.4%
ラキソベロン内用液と錠は、同じピコスルファート量を服用すれば効果は同等です。
ラキソベロンの副作用 (下痢・腹痛)
ラキソベロンは大腸を直接刺激するため、ピコスルファート量が多くなればなるほど腹痛や下痢の副作用があらわれやすくなります。
ラキソベロン内用液6~15滴程度服用したときの副作用
(使用成績調査終了時)
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
腹痛 | 0.8% |
腹鳴 | 0.2% |
悪心・嘔吐 | 0.2% |
※下痢は排便できた(効果あり)という理由により副作用としてカウントされていません。
ラキソベロン内用液20滴程度服用したときの副作用
(再審査終了時)
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
腹痛 | 2.6% |
腹部膨満感 | 1.4% |
悪心 | 0.9% |
※下痢は排便できた(効果あり)という理由により副作用としてカウントされていません。
ラキソベロン内用液は同じ大腸刺激タイプのセンノシド(プルゼニド)と比べると副作用がマイルドです。
センノシド(プルゼニド)副作用頻度
副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
腹痛 | 11.9 |
下痢 | 1.1 |
腹鳴 | 0.8 |
悪心・嘔吐 | 0.8 |
(再評価結果)
そのため、妊婦の便秘にはよく使われます。。
ラキソベロンの飲み方 (1回何滴?何錠?)
ラキソベロンの飲み方(大人)
- ラキソベロン内用液
1日1回寝る前に10~15滴 - ラキソベロン錠
1日1回寝る前2~3錠
この量がラキソベロン量の目安です。
先述の通りラキソベロンは大腸を直接刺激するため、ピコスルファート量が多いと腹痛や下痢の副作用があらわれます。
(この副作用、おなかがキュルキュルッとして結構つらいそうです)
反対に、ピコスルファート量が少ないとラキソベロンは効きません。
多くの場合、副作用が起こらないようにラキソベロンは必要最低限の用量から開始して、効果が出るまで増量します。
増量(調整)の際、ラキソベロン錠であればピコスルファート2.5mg単位の調整ですが、
ラキソベロン内用液ならばピコスルファート0.5mg単位で調整できるため、ラキソベロン内用液が頻用されます。
ラキソベロンの飲み方(子供)
子供(小児)の場合、ラキソベロンの用量の目安は次のとおりです。
年齢 | ラキソベロン内用液 | ラキソベロン錠 |
---|---|---|
6カ月以下 | 2滴 | – |
7~12カ月 | 3滴 | |
1~3歳 | 6滴 | |
4~6歳 | 7滴 | |
7~15歳 | 10滴 | 2錠 |
効果不十分や下痢・腹痛の副作用が出るときは、大人と同様にして調整します。
ラキソベロンの効果時間
ラキソベロンの効果時間(トイレに行きたくなる時間)は、臨床試験で確認されていないため詳細は不明です。
日常の便秘であれば、ラキソベロンは寝る前に服用すれば朝にトイレに行きたくなります。
個人差はありますが、ラキソベロンは服用してから8時間から10時間の効果時間と推測できます。
便秘は痔の大敵です。
ラキソベロン内用液/錠の味
ラキソベロンのピコスルファート成分自体は味はありません。
そのため、乳糖、トウモロコシデンプンなどで固められたラキソベロン錠は味はありません。
一方、ラキソベロン内用液には甘いD-ソルビトールが添加されているため若干甘い味を感じます。
(ソルビトールは甘味があり、食品添加物などに使われている)
ただし、ラキソベロン内用液はコップ1杯の水に溶かし1/100程度にうすめます。ほとんど甘みは感じられません。
ラキソベロンの習慣性
大腸を直接刺激するタイプの便秘薬は習慣性があります。
- ラキソベロン
(ピコスルファートナトリウム) - アジャストA・アローゼン(センナ)
- プルゼニド・センノサイド(センノシド)
- テレミンソフト坐剤(ビサコジル)
大腸を刺激し続けると、大腸がラキソベロンの刺激に慣れてしまい、便秘薬の切れ味が悪くなってくるからです。
ラキソベロンの効果が減弱すると、さらにラキソベロンを増量せざるをえなくなり腹痛の副作用リスクが増えます。
そして、副作用リスクを抱えたままラキソベロンの量は増え続け、便秘薬スパイラルにはまります。
そうならないためには、
通常の便秘には整腸剤(ビオフェルミン、ラックビーなど)や便軟化作用のある酸化マグネシウムを主に使い、
頑固な便秘に限定してラキソベロンを使うが賢い便秘との付き合い方です。
まとめ
- 便秘の3大原因は、1.便の水分低下 2.腸内環境の悪化 3.大腸の運動機能低下
- ラキソベロンは大腸を直接刺激して排便を促す便秘薬
- ラキソベロンには錠剤と液剤があるが、圧倒的に液剤のラキソベロン内用液が使われている
- その理由は、ラキソベロン内用液は0.5mg単位でピコスルファート量が調整できるから
- ラキソベロンを飲んで下痢したときは減量する
- 反対に、効かないときは増量していく(下痢・腹痛に注意)
- ラキソベロンは服用してから8時間から10時間後が効果時間
(寝る前に飲むと朝にトイレに行きたくなる) - 酸化マグネシウム(マグミット)は、便を柔らかくして自然に排便したいときおすすめの便秘薬
- ラキソベロンには習慣性がある
(大腸を刺激し続けると、便秘薬の切れ味が悪くなる)
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